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2012年05月12日

摂食障害(eating disorder)の症状・原因・治療:4

摂食障害(eating disorder)の症状・原因・治療:4

この記事は、[前回の項目]の続きになります。 摂食障害には現代のマスメディアやモデル・芸能業界、ファッション業界が発信している『痩せている女性ほど美しいというメッセージ』が影響している事も確かであり、客観的なBMI(Body Mass Index)で見て明らかに太ってはいない若い女性でも、『まだ痩せなければならない・今の自分はちょっと太りすぎている』と感じていることが多いのである。

摂食障害は恋愛・結婚における別離(離婚)のショック、仕事・職業における挫折(失業)の傷つき、社会生活になかなか適応できない絶望感(自信喪失)など『特定のライフイベントでの挫折・失敗・傷つき』が引き金となって発症することがあるが、この場合には『拒食による自己制御(自己管理)』『過食によるストレス解消(食の快楽)』によって不安定な情緒を支えようとしているのである。

摂食障害における『拒食(食事制限)』とは、禁欲的な自己制御によって自己評価を高め、社会や他人に認められたい(愛されたい)とする行動であり、それに対して『過食(気晴らし食い)』とは自分にとって耐えがたい強いストレスや不安感、孤独感を紛らわして慰めるための行動である。

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摂食障害(eating disorder)の症状・原因・治療:3

摂食障害(eating disorder)の症状・原因・治療:3

この記事は、[前回の項目]の続きになります。 クラスターBの人格障害である境界性パーソナリティ障害(BPD)は、『慢性的な気分・感情・行動の不安定さ』を前提としながら、自己評価(自尊感情)が低下して人間関係がスムーズに行かなくなり、その孤独感や空虚感に耐えられずに自傷行為・依存症といった不適応行動に走ってしまう障害であるが、問題が発生する基本的な心理メカニズム(自己評価・自信の低下とその補償としての症状)が摂食障害と類似している。

摂食障害も境界性パーソナリティ障害と同様に、『他者からもっと認められたいし愛されたいという満たされない孤独でつらい心理』があり、他者から承認されるためにどうすれば良いか分からないというパニックや衝動が生じて、健康を崩すような極端な拒食・過食をしてしまいやすくなるのである。

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摂食障害(eating disorder)の症状・原因・治療:2

摂食障害(eating disorder)の症状・原因・治療:2

この記事は、[前回の項目]の続きになります。 摂食障害は『嚥下障害』の機能的な摂食困難・不能との区別をつけるために、現在では『中枢性摂食異常症』と呼ばれることもあるが、過度に体重が減少する重症例になると生命の危険が生じることもあり、厚生労働省が『特定疾患(難病)』に指定している。

摂食障害は経済が発達した先進国に済む10代半ば〜20代前半の思春期の女性に好発する精神疾患であるが、近年は30代以降の中年層にも発症する事例が増えており、男性患者も全体の5〜10%を占めるようになっている。日本での有病率は約2〜3%と推測されているが、摂食障害の症状があっても心療内科・精神科を受診する人は少なく、実際には更に多くの患者がいるものと考えられている。

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摂食障害(eating disorder)の症状・原因・治療:1

摂食障害(eating disorder)の症状・原因・治療:1

摂食障害(eating disorder)とは食行動の異常に関係する精神疾患であり、極端に食事量を減らしたり食べなくなったりする『神経性無食欲症(拒食症)』と食欲を制御できなくなって大量に食物を食べ過ぎてしまう『神経性大食症(過食症)』の病相に分けられる。神経性無食欲症(拒食症)は『アノレクシア・ネルヴォーザ(anorexia nervosa:AN)』と呼ばれることがあり、神経性大食症(過食症)は『ブリミア・ネルヴォーザ(Bulimia nervosa:BN)』と呼ばれることがある。

拒食症と過食症は、見た目には正反対の食行動の異常であるものの、両者の症状形成メカニズムやその心理状態には共通する部分が多く、拒食症(アノレクシア・ネルヴォーザ)と過食症(ブリミア・ネルヴォーザ)のエピソードは定期的に交互に繰り返されることが多い。拒食症から過食症に移行する症例は約60〜70%に上り、どちらか一方だけのエピソード(病相)が見られることは少ないことから、両者は『痩せ願望・肥満恐怖・自己統御欲求』が共通した同一疾患の異なる現れ方であると見られている。

普段は食事を拒否したりほとんど食べていないのに、ある日突然、それまで我慢していた食欲を抑制できなくなって大量の食べ物を詰め込むようにして食べてしまうことがある。精神的ストレスや衝動性亢進による過食行動をしてしまうと、罪悪感や自己嫌悪を感じて浄化行動(パージング)としての『嘔吐・下剤乱用・利尿剤乱用・薬物摂取』を自分を傷つけるような形でしてしまう。

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2012年05月05日

輻輳説(theory of convergence)と発達心理学

輻輳説(theory of convergence)と発達心理学

『輻輳(ふくそう,convergence)』とは、物が1ヶ所に集中して混雑する状態のことを意味する概念であり、一般的には電話回線やインターネット回線(TCP/IP網)などで、通信要求過多により通信が成立しにくくなっている現象のことを指す通信分野の用語として使われることが多い。輻輳の発生を回避する技術や輻輳状態からスピーディーに回復させる通信技術のことを『輻輳制御(congestion control)』といい、輻輳状態が悪化して通信効率が非常に悪くなったり通信不能に陥るような状態のことを『輻輳崩壊』と呼んでいる。

この項目では、心理学特に発達心理学の分野で用いられる専門用語(テクニカルターム)としての『輻輳説(theory of convergence)』について簡単に説明するが、輻輳説は人間の性格や才能、能力(知能)が何によって決定されるのかという発達要因の議論から生まれたものである。人間の性格や能力が遺伝要因だけによって決定されるという仮説を『遺伝説(遺伝子決定論)』、人間の性格や能力が環境要因・学習要因だけによって決定されるという仮説を『環境説(環境決定論)』というが、『輻輳説』はそれらの中間的な折衷案としての特徴を持つ。

遺伝説は『生得的要因・遺伝的要素』だけを過大に評価しており、環境説は『後天的要因・経験的要素』だけを過大に評価しているという問題があり、どちらもかなり偏った仮説であり意見であるとして、現在では『単純な遺伝説・環境説』のみを主張している発達心理学・性格心理学の研究者はほとんどいない。

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仏教思想と仏教カウンセリング(Buddhist counseling)5:西洋的自我と東洋的無我の統合の理想

仏教思想と仏教カウンセリング(Buddhist counseling)5:西洋的自我と東洋的無我の統合の理想

この記事は、[前回の仏教カウンセリングの項目]の続きになります。 仏教カウンセリングにしても牧会カウンセリングにしても、『宗教的カウンセリング』であって『宗教そのもの』ではないという認識がそこにはある。そのため、宗教的な世界観や宗教の理想をクライアントにただ押し付けるようなものであってはならず、クライアントが直面している現実的な問題や苦悩を解決していくためにはどうすれば良いのかという『プラグマティック(実用的)』な視点をまず第一に持ってくることになる。

仏教は悟り・解脱に象徴される『自己超越』を目指す宗教であり、大いなる観念との合一体験を目指す“トランスパーソナル心理学”との親和性を持っていたりもするが、仏教カウンセリングでは自己超越だけにこだわらずに現実的な問題解決のほうが優先されることになる。

仏教カウンセリングでクライアントの悩みを理解して、その悩みの解決を共に考えていく場合には、仏教の人間の苦悩についての基本教義としてある『四苦八苦』の理解とその解決法を探す態度がクライアント援助のヒントになることも多い。四苦八苦は『生・老・病・死』『愛別離苦・怨憎会苦・求不得苦・五蘊盛苦』から構成される人間の世俗的な苦しみの象徴である。

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仏教思想と仏教カウンセリング(Buddhist counseling)4:カウンセリングの起源としての宗教セラピー

仏教思想と仏教カウンセリング(Buddhist counseling)4:カウンセリングの起源としての宗教セラピー

この記事は、[前回の仏教カウンセリングの項目]の続きになります。 カウンセリングや心理療法の歴史的起源は、『宗教療法・宗教的なセラピー(宗教教義を応用した暗示療法・催眠療法など含む)』であると考えられているが、仏教の世界観や実践法、概念には宗教的カウンセリングを可能にするものが多くあり、仏教教義・対機説法を活用したカウンセリングのことを『仏教カウンセリング(Buddhist counseling)』と呼んでいる。

仏教の教えや修行、信仰は、衆生が生活している俗世で起こる苦しみや悲しみ、迷いをどのようにして乗り越えていくべきかに応えるものであり、『人と人との関係性』を前提にしていることもあってカウンセリングとの相性は良い。仏教では曹洞宗や臨済宗の禅宗をはじめとして『正師(学師)と弟子との関係』を重視する宗派も多く、それぞれの宗派の奥義や秘術、真理は『師資相承(ししそうしょう)』の形で引き継がれているので、その師弟関係を応用して仏教カウンセリングの『カウンセラーとクライアントの信頼関係(=ラポール)』を構築することができる。

宗教的カウンセリングの系譜としては、キリスト教カトリック(ローマカトリック)で信者が教会の神父(聖職者)に罪の許しを得るために、過去のあやまちや悪事について語る『懺悔・告白(告解)』が知られているが、キリスト教のプロテスタント(牧師)でも近代的なカウンセリングの技法や発想を取り入れた『牧会カウンセリング』が行われていることがある。仏教カウンセリングでは、人間の苦しみや悲しみの原因と結果の『因果論(相依相即の関係性)』について考えてきた仏教の思想・実践が応用されており、特に俗世と人生における『四苦八苦』の解消や緩和を支援するようなカウンセリングの研究・実践が重視されている。

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仏教思想と仏教カウンセリング(Buddhist counseling)3:悟りに至るための『四諦八正道』の実践

仏教思想と仏教カウンセリング(Buddhist counseling)3:悟りに至るための『四諦八正道』の実践

この記事は、[前回の仏教カウンセリングの項目]の続きになります。 仏教の開祖である釈迦(仏陀)は『死後の世界や来世・霊魂の存在・輪廻の実際・人間の存在意義・宇宙の始まりと終わり』などの形而上学的な真理についての問いに対しては、敢えて意味ありげな答えを返さない『無記』の態度を貫いたとされている。釈迦が取った『無記』の態度については、毒矢に当たった人を救うことを優先すべきで毒矢そのものについて質疑応答などしている暇はないという『毒矢の喩え』で示されることが多い。

四諦(苦集滅道)

苦諦(くたい)……苦の発生と現実にまつわる真理

集諦(じったい)……苦の原因にまつわる真理

滅諦(めったい)……苦を消滅させることにまつわる真理

道諦(どうたい)……苦の消滅を成し遂げる道にまつわる真理

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仏教思想と仏教カウンセリング(Buddhist counseling)2:真理を把握するための『四法印』の教義

仏教思想と仏教カウンセリング(Buddhist counseling)2:真理を把握するための『四法印』の教義

この記事は、[前回の仏教カウンセリングの項目]の続きになります。 仏教は古代インドの伝統的なヒンドゥー教の世界観である『輪廻転生の概念』を刷新した思想でもある。ヒンドゥー教が想定する輪廻の主体である『永遠不滅の魂(アートマン)』の実在を、『諸法無我・般若心経などに見る空の思想』によって否定しており、この世に永遠不滅の実在などは存在しないという『色即是空・空即是色』を提唱した。

すべての存在は、人間の認識と相互の関係性によって成り立っているとするのが仏教の世界観であり、輪廻そのものも生命が死んだ後に起こるのではなく生命が生きているその最中にも展開されているとした。

仏教は、仏陀の教えや説話に従って精神的な安らぎや苦悩の癒しを求めようとする宗教であるが、真理の正しい理解や世界の実相である諸行無常の洞察によって、『生きることの苦しみ・迷い』を離脱しようとする認知療法的な側面を持つ方法論の集積でもある。キリスト教やイスラム教といった一神教では『帰依・祈りを通した神による救済』を求めているが、仏教では阿弥陀如来を信じて念仏(題目)を唱える浄土信仰のような一神教の救済に似たものもあるが、基本的には『悟り(解脱)を目指す自己実践による救済』を目指す型の宗教になっている。

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仏教思想と仏教カウンセリング(Buddhist counseling)1:悟りと抜苦与楽を目指す釈迦の思想

仏教思想と仏教カウンセリング(Buddhist counseling)1:悟りと抜苦与楽を目指す釈迦の思想

仏教(Buddhism)は、紀元前6〜5世紀に四門出遊(出家)したゴータマ・シッダールタ(一説には紀元前463年頃-紀元前383年頃)によって創始された宗教である。ゴータマ・シッダールタは、釈迦(釈迦牟尼世尊)や仏陀(ブッダ)とも呼ばれる。仏教はキリスト教・イスラム教と並ぶ『世界三大宗教』の一つに数えられているが、一神教であるキリスト教やイスラム教とは違って“唯一神による救済(唯一神との契約)”といった概念はなく、“煩悩消尽・真理覚醒による解脱”を目指す宗教である。

仏教は煩悩の苦しみと迷いを完全に解脱した“仏陀(覚者・成就者)”の教えであると同時に、自分自身が『修行・学問・瞑想・祈り(念仏・題目)』を通して悟りを開き、“仏陀(解脱者)・菩薩(救済者)の境地”に辿り付こうとする解脱型の宗教である。

仏教の始まりはゴータマ・シッダールタ(釈迦)がこの世に満ち溢れている『生・老・病・死』の苦しみを知って、その苦しみや迷いをどうすれば克服できるのか、どのようにすれば無くせるのかを考えたことにある。そのため、仏教の宗教的な目的は『神との契約・契約に基づく救済』などではなく、人間ひとりひとりの人生に根ざした『抜苦与楽(ばっくよらく)』なのである。

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