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2009年11月20日

[ゲシュタルト療法の『連続的な気づき(continuous awareness)』]

ゲシュタルト療法の『連続的な気づき(continuous awareness)』

フリッツ・パールズ(F.S.Perls)ローラ・パールズの夫妻が考案した『ゲシュタルト療法(gestalt therapy)』では、現実の人間関係を再現する“ロールプレイング”や感情と結びついた“身体感覚”を用いて『今・ここにおける気づき』を促進していく。ゲシュタルト療法は『現在の時点における体験型の技法』であり、S.フロイトの精神分析療法などとは違って、『過去の記憶・感情(わだかまり)・葛藤』などを話題にしたり分析したりすることはまず無い。

ゲシュタルト療法の基本理念として『自分自身であることを忘れずに、自分自身の人生を生きよ』というゲシュタルトの祈りがあるが、この技法ではありのままの自分の存在や感情を受け容れながら、身体と精神の調和が取れたバランスの良い自己を作り上げていくことが目標になる。ゲシュタルト療法はロールプレイング(役割演技)や感情表現を中心とした体験療法としての色彩を濃く持っている。『今・ここ』にいる自分の身体感覚や認知傾向に対する気づきを得ることで、環境適応性を高めていきながら苦痛な心理状態を回復させていくのである。

今までに気づくことができなかった感覚や認知、現実状況に気づくこと、これがゲシュタルト療法の治療機序(治療メカニズム)になっており、この『効果的な気づき(effective awareness)』が連続的に起こってくることを『連続的な気づき(continuous awareness)』と呼んでいる。クライアントの心理状態が本格的に回復してくる時や、問題状況(対人関係)が急速に改善してくる時には、ゲシュタルト療法でいう連続的な気づきが起こっていることが多い。

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[ニーチェの哲学思想の読解3:“ディオニュソス的なもの”と“アポロン的なもの”の対比]

ニーチェの哲学思想の読解3:“ディオニュソス的なもの”と“アポロン的なもの”の対比

1869年に24歳の若さでバーゼル大学の教授になったニーチェは、ドイツのロマン主義的な音楽家ヴィルヘルム・リヒャルト・ワーグナー(Wilhelm Richard Wagner, 1813−1883)にはじめ傾倒しており、古典音楽や古代ギリシアの哲学・文化・価値観の研究考察を経由して『悲劇の誕生(1872年)』が書かれることになった。

ナチス党やアドルフ・ヒトラーは、ニーチェの『ニーベルンゲンの指環』『ローエングリン』といったワーグナー作品へのかつての傾倒を、ドイツ民族主義やゲルマン至上主義の賞賛として解釈した。だが、『悲劇の誕生』で重視されているのは、ワーグナー作品に読み取れるロマンティックで陶酔的な精神を奮い立たせる世界観であって、民族主義的な優生思想や異民族の侵略ではない。

ワーグナーのオペラ作品では英雄や国王、民族のロマンティックで情念的な物語が再現されており、ニーチェはこういった理性的判断ではない情念的感動・興奮の総体を『ディオニュソス的なもの』として賞賛しているのである。ニーチェの思想は元来、『政治・経済の野心』よりも『芸術・美学の追求』に焦点が合わせられており、『悲劇の誕生』に始まる古代ギリシアの思想・文化・価値観の研究を通して『アポロン的』『ディオニュソス的』という対照的な類型が提示されているのである。

ニーチェは対比的な『アポロン的なもの』『ディオニュソス的なもの』について以下のように考えていたが、アポロンはギリシア神話における太陽神・予告の神であり、ディオニュソスはブドウ酒・酩酊・豊穣・芸術を象徴する神である。

アポロン的……近代を象徴する“理性・合理性・客観性・計画性・科学技術”を志向するもの。

ディオニュソス的……非近代を象徴する“陶酔・熱狂性・感情性・刹那性・芸術性”を志向するもの。

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[ニーチェの哲学思想の読解2:“ナチスの政治利用”と“超人思想の誤解”]

ニーチェの哲学思想の読解2:“ナチスの政治利用”と“超人思想の誤解”

ニーチェの思想は、世界から絶対的価値(神)が消失するニヒリズムの到来と超克を志向する『超人思想』として整理することができる。ルサンチマンとニヒリズムを克服した『超人』とは、仮構された観念や道徳に依拠せずに、『力への意志』に基づいて自己存在を全的に肯定できる次世代の理想的な人間である。

ニーチェは『永劫回帰(永遠回帰)』という概念を提示して、永遠に生まれ変わり続けても、『自分が今生きている人生』を肯定できる人間が超人であると仮定した。自分の人生や存在を全肯定できる超人は、『永劫回帰』の仮定を前提にしても、自分の人生を悲観したり後悔したりすることがないのである。『超人』は来るべき未来の世界において、ニヒリズムの暗闇を高貴な精神と輝かしい栄光によって打ち砕く『理想の人間像』として提示されている。

弱者肯定のルサンチマンや禁欲道徳を否定するニーチェの思想は、『弱肉強食・優勝劣敗(自然淘汰)の思想』として解釈されやすいこともあり、ナチス・ドイツのゲルマン民族至上主義(アーリア人至上主義)に、『権力への意志』を前提とするニーチェの著作や思想が悪用された歴史もある。

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[ニーチェの哲学思想の読解1:“ルサンチマン”と“力への意志”]

ニーチェの哲学思想の読解1:“ルサンチマン”と“力への意志”

フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ(Friedrich Wilhelm Nietzsche, 1844-1900)の著作・思想は、弱者の強者に対する怨恨である『ルサンチマン』を克服しようとする『生の哲学(超人思想)』として理解することができる。

ニーチェにとって形而上学的な真理やキリスト教的な道徳(善悪)は、“人間の生命力・高貴さ”を衰退させる悪しきものであり、弱者を肯定して強者を否定する“価値判断の転倒(自然な認識の欺瞞)”であった。

大衆的なルサンチマンとは簡潔に言えば、自分よりも優れているように見える『美しい者・強い者・裕福な者・知性のある者』をその地位から引きずり落とそうとする嫉妬や怨恨の衝動であり、最大多数の社会的弱者を肯定するために社会道徳が捏造されることになる。

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2009年11月07日

[ツベルクリン反応・ツベルクリン皮膚検査(tuberculin skin test)とBCG]

ツベルクリン反応・ツベルクリン皮膚検査(tuberculin skin test)とBCG

ツベルクリン反応(tuberculin skin test)とは、結核感染のスクリーニング検査に用いられる免疫反応(免疫応答)のことである。1890年にドイツの科学者・医師であるロベルト・コッホ(Heinrich Hermann Robert Koch、1843-1910)によって、結核菌からグリセリン抽出されたツベルクリン液(結核菌を薄めた抗原)が作成され、クレメンス・フォン・ピルケのアレルギー反応の発見によってツベルクリン皮膚検査が実用化されることになった。

ツベルクリン液とは、『薄めて無毒化した結核菌』から分離精製された複数のタンパク質であり、ツベルクリン液には結核発症の作用はなく安全性が確認されている。ツベルクリン皮膚検査では前腕に皮内注射を行って、48時間後の皮膚反応(発赤の大きさ)を測定することになるが、その判断基準は以下のようになっている。

陰性:注射部位の発赤の長径が10mm未満=結核に感染していないと推測されるが、結核に対する抵抗力(免疫)がないのでBCG(牛型結核無毒化ワクチン)を接種する。

疑陽性:注射部位の発赤の長径が10mm以上であるが硬結・2重発赤がない=結核に感染しているリスクは低い。

中等度陽性:注射部位の発赤の長径が10mm以上で硬結がある=発赤の長径が30mm以上になると、結核感染のリスクを排除できない。

強陽性:発赤の長径が10mm以上で硬結以外にも2重発赤,水疱,壊死などが発症している=結核感染のリスクが高いと推測される。

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[t検定(t-test)とt分布:統計学的な仮説検定]

t検定(t-test)とt分布:統計学的な仮説検定

F検定(F-test)とは、2つの“正規母集団のばらつき(母分散)”に差があるかどうかを検定する統計学的な検定法であるが、2つの“正規母集団の平均値(母平均)”に差があるかどうかを検定する方法として『t検定(t-test)』がある。t検定では『2つの集団の平均値に差がない』という帰無仮説を検証することになるが、計算したt値が既定の自由度における『t分布表の値』よりも大きければ、この帰無仮説が棄却されて『2集団間の平均値に有意差がある』という対立仮説が肯定されることになる。

統計学的な有意性は、実験群と対照群(統制群)を用いた比較試験などで検証されるが、二つの群の間に見られる差に意味があるのか偶然であるのかは『有意水準(危険率)』を指標にして判断される。

有意水準(危険率)とは、帰無仮説を支持する標本(サンプル)が母集団から抽出される確率であり、通常、有意水準α=0.05(5%)、α=0.01(1%)が設定される。通常は、t検定を実施する前に、『2つの母集団の分散に有意差があるか』を検証するF検定を実施しておき、2つの母集団の分散が等しい場合には、『分散が等しいときのt検定の公式』で平均値に有意差があるか否かを判断していく。

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[通信分析・日記分析(correspondence therapy)とメールカウンセリング]

通信分析・日記分析(correspondence therapy)とメールカウンセリング

カウンセリングの心理面接では、言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーションを手段として用いることで、クライアントの心理的な問題(各種の心身症状)を改善していこうとする。しかし、クライアントの中には心理臨床家と直接的に向き合って話をすることが苦手な人もいて、言語的コミュニケーションだけでは、クライアントの心理状態や生活状況について十分な情報・理解を得られないこともある。

心理臨床家(カウンセラー)と対面して言語的コミュニケーションをすることが得意ではないクライアント、『転居・体調悪化・入院』など諸事情によって対面のカウンセリングを受けることが難しいクライアントに対しては『通信分析(correspondence therapy)・日記分析(diary analysis)』と呼ばれる補助技法が実施されることがある。

通常の対面カウンセリングは、カウンセラーとクライアントが『言葉(音声言語)』を用いてコミュニケーションすることで心理的問題(精神症状)の改善を模索していくが、通信分析(日記分析)ではクライアントの書いた『日記・手紙・エッセイ・詩文』などをカウンセラーが受け取って、その内容を分析しながらクライアントへの返信を書いていくのである。

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[カウンセリングの終結(termination)と論理療法の治療的冒険]

カウンセリングの終結(termination)と論理療法の治療的冒険

治療的カウンセリングの基本は共感的な理解と無条件の肯定的受容であり、クライアントの人格や信念を尊重しようとする誠実な態度を保持することで、治療的に有効な『ラポール(相互的な信頼関係・親愛感)』を確立していくのである。カウンセリングの実施に当たっては『カウンセリングの終結(termination)』が問題になることがあるが、カウンセリングの終結は以下のような各種の基準や心理・行動の変化によって判断されることになる。

1.自我の強化や自己肯定感の向上……自分で自分の存在や言動を肯定的に認識できるようになり、『自己評価の高まり』と共に現実的な生活行動が改善されたときにカウンセリングを終わらせる。

2.他者との対人関係やコミュニケーションの改善……他者と安定した人間関係を築くためのコミュニケーションスキルを習得したり、自分の言いたいこと(伝えなければならないこと)を過度に抑圧せずに自己主張できるようになったときにカウンセリングを終わらせる。

3.社会生活・職業活動の適応性の改善……うつ病などの精神症状によって学校・会社に定期的に通うことができないという問題がある場合には、『毎日の通学・通勤』が無理なくできるようになったときにカウンセリングを終わらせる。会社・学校に行けなくなる原因には、うつ病以外にも『いじめ・学業不振・パワーハラスメント・モラルハラスメント・アパシー(意欲減退症候群)・対人恐怖症(社会不安障害)』などがあるので、それぞれの問題状況や精神症状に合わせた治療的カウンセリングを実施していくことになる。

4.ストレス耐性や状況対応力の向上……現実の社会生活や対人関係で経験することになる『精神的ストレス』に耐える能力や肯定的認知を獲得したときにカウンセリングを終わらせる。現実の生活状況やコミュニケーションには『さまざまな状況・予測困難な事態』が存在するので、そういった各種の状況に苦痛や不安を感じずに対応できる能力(=臨機応変な状況対応力)を培うことも、カウンセリングの目標の一つになっている。

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2009年10月31日

[治療的カウンセリングと助言的カウンセリング]

治療的カウンセリングと助言的カウンセリング

カウンセリングには大きく分けて、『調査的カウンセリング・助言的カウンセリング・治療的カウンセリング』という3つの目的を達成しようとするカウンセリングがある。“調査的カウンセリング”とは、クライアントの心理状態や生活状態、人間関係、成育歴などの情報を収集することを目的としたカウンセリングであり、『質問紙法・投影法・インタビュー』といった心理アセスメントをメインにしてカウンセリングを行っていく。調査的カウンセリングは、精神医学の分野では患者の診断名を判断するための『診断的面接』と呼ばれることもある。

“助言的カウンセリング”とは、内面的な問題や過去の心的外傷をできるだけ取り扱わずに、『クライアントが求める知識・情報・対処法』のみを的確なアドバイスとして伝えるためのカウンセリングである。助言的カウンセリングは、『不安感・抑うつ感・焦燥感・強迫観念・対人緊張・トラウマ』などの精神症状(病的な心理状態)を改善するためには余り役に立たないことが多いが、『進路相談・学業の指導・生活指導・人生相談・仕事のやり方の教育』などではクライアントが必要とする知識・情報を与えることによって問題の解決が促進することも多い。

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[通過儀礼(initiation, rite of passage)・子どもから大人への移行(変化)を証明する儀礼]

通過儀礼(initiation, rite of passage)・子どもから大人への移行(変化)を証明する儀礼

文化人類学や民俗学で研究される『通過儀礼(イニシエーション)』とは、社会共同体に所属する個人の“社会的属性(社会的地位)の移行”を証明するための儀式のことである。通過儀礼は1908年にフランスの民俗学者アルノルト・ファン・ヘネップ(A.L. Van Gennep)が提案した概念であり、『出生・成人・結婚・地位の昇進・死』など人生の節目で共同体(帰属集団)によって施行されることが多い。

アルノルト・ファン・ヘネップ自身は『通過儀礼』について、『共同体に所属する個人がある状態から他の状態へと移行する時に、キリスト教の洗礼と同様に通過のために執り行う特別な儀礼』というように説明している。

伝統・風習が衰退した文明的な現代社会でも、成人式や入社式(入学式・卒業式)、葬式などの形で通過儀礼の形跡が残っている。通過儀礼は通常、自分が生まれ落ちた村落共同体の中で執り行われていたが、『異文化・異民族の知らない土地』に旅する時にも『その土地の食べ物を口にする・民族の祭祀や宴会に参加する・長老に挨拶して洗礼を受ける』などの通過儀礼(敵ではないことを証明する儀礼)が行われることが多かった。

移送手段や職業活動(全国的なビジネス)が発展した現代社会では、『生まれた土地・町村で一生涯を過ごす人口』が減っており、人口の流動性が高まっているので前近代的な厳格なイニシエーションとしての通過儀礼は減ってきている。文明化されていない原始的な共同体では、『割礼・刺青・闘争・バンジージャンプ・猛獣の狩り』といった身体的な苦痛や危険を伴う通過儀礼が行われていたが、それは『成人(大人)としての能力・覚悟を持っていることの証明』という通過儀礼の目的が強く含意されていたからである。

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