儀礼とイデオロギー:自発的な権威・権力・伝統の尊重と服従
ドイツ語を語源とするイデオロギー(ideology)とは、非物質的な思想・観念の体系であり、社会集団において人々の価値観・行動・生活様式を根底的に規定しているものである。思想・観念・信条の体系としてのイデオロギーは、人々のマクロな世界観にまつわる思想としての『コスモロジー論(宇宙論)・象徴論』を生み出す母胎でもあるが、社会共同体におけるイデオロギーは儀礼的実践過程を通して段階的に形成される。
クロード・レヴィ=ストロースの文化人類学と主観主義(学者の解釈図式)の克服:2
社会構造の変動や歴史的な価値の変革に合わせるようにして、イデオロギーは儀礼と共に機能・役割を変化させていくという意味では相対的なものである。イデオロギーの動因にもなる儀礼研究は『時代・文化・価値と共に変化する』という意味において、相対的であると同時に動態的(ダイナミック)なものでもある。
構造主義・機能主義という概念に示される人類学は、歴史的な時間に左右されないという点において『静態的(スタティック)』な特徴を持っていて、歴史を軽視したり解消したりする作用も持つ。それに対して、『儀礼研究』は社会共同体の歴史を重視するという点において『動態的(ダイナミック)』であり、静態的な人類学を批判するようなポジションに立っているのである。
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