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2016年09月19日

[精神医学におけるクライエント(患者)の多面的理解と治療方針の見立て:2]

精神医学におけるクライエント(患者)の多面的理解と治療方針の見立て:2

精神科医(カウンセラー)が患者(クライエント)に対して抱く強い感情である『逆転移』の中には、患者(クライエント)との治療的対話の相互作用と投影同一視によって生じた精神科医(カウンセラー)自身の強烈な感情・記憶・反応パターンが含まれている。

そして、精神科医(カウンセラー)が自分の逆転移を引き起こしたクライエントの言動を深く掘り下げて分析していくことによって、クライエントの内的な葛藤や過去のトラウマの影響、対象関係のパターンをより実際的なものとして共感的に理解することができるようになるのである。

精神医学におけるクライエント(患者)の多面的理解と治療方針の見立て:1

心理療法やカウンセリングにとって最も重要なのは『カウンセラー(心理臨床家)とクライエントの相性』であり、精神分析家・精神科医のM.ストーン(M.Stone)は心理療法の効果に最も大きな影響があるのは『カウンセラー・治療者が患者のことを気にいるかどうかである』と語っている。

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[精神医学におけるクライエント(患者)の多面的理解と治療方針の見立て:1]

精神医学におけるクライエント(患者)の多面的理解と治療方針の見立て:1

クライエントの自己理解を『乳幼児期から現時点までの生活歴・感情と記憶』を踏まえて、『連続的かつ内省的な経験の流れ』に位置づけていき、その流れ中のどこまでが健康(正常)であり、どの時点の辺りから精神病理が出てきたのかを評価していく。

正常な精神機能や心理状態が病態化してきた時期と原因を探っていくのだが、クライエントによっては老年期になるまでは自己評価と社会適応が非常に良かったのに、老年期になって自分をサポートしてくれた配偶者を亡くして対象喪失の悲哀感・孤独感から深刻なうつ病(気分障害)を発症してしまうような人も少なくない。

精神医学の診断的面接はどのように行われるか2:クライエントの知的能力とライフサイクル

次に、クライエント(患者)がどのような理由や経緯で、精神科を受診して心理面接を受けるようになったのか、精神科の面接・治療・カウンセリングにどのようなニーズや期待を持っているのかについてもそれとなく聴いていくようにすると、『治療の段階的な目標設定』がしやすくなる。

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[精神医学の診断的面接はどのように行われるか2:クライエントの知的能力とライフサイクル]

精神医学の診断的面接はどのように行われるか2:クライエントの知的能力とライフサイクル

力動的精神医学の精神療法では、『自分の記憶・感情・体験』を振り返って再構築したり言語化したり解釈したりしていくだけの抽象的な思考力や言語的な運用力、比喩(メタファー)の理解力などが必要だからである。治療的に効果のある内面的・内省的な自己探求を心理面接(精神分析的な面接)で行っていくには、一定以上の言語的・知的な能力や情緒の豊かさ・意思の強さのようなものが求められてくるということでもある。

精神医学の診断的面接はどのように行われるか1:クライエントの心理的資質

精神疾患で最も言語的コミュニケーションに問題が発生しやすい統合失調症の診断的面接においてさえも、心理的資質(psychological mind)という概念に象徴される『患者(クライエント)の資質・能力・態度・意欲』は治療の見通しにとってかなり大きな影響力を持っている。

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[精神医学の診断的面接はどのように行われるか1:クライエントの心理的資質]

精神医学の診断的面接はどのように行われるか1:クライエントの心理的資質

精神医学の診断は『記述的診断』『精神力動的診断』を組み合わせることによって、クライエント(患者)の心理社会的な状態像を理解して、今後の治療方針の選択を含む『見立て』をすることができる。

現代の精神医学の診断と治療ではクライエントを網羅的かつ統合的に理解するために、その原因を多角的に考える『生物−心理−社会モデル(bio-psycho-social model)』が採用されている。

初回面接(インテイク面接)では、クライエント(患者)が精神科医と治療同盟(作業同盟)を構築していくだけの『精神機能の正常性・治療的対話の応答性』がどれくらいあるかのチェックも行われる。精神科医やカウンセラーの考える治療方針に協力的・参加的であるかどうかと合わせて、心理アセスメントにおける診断的面接と心理検査(心理テスト)に協力的かどうかということも重要になる。

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2016年09月07日

[DSM-W-TRの多軸診断2:第W軸の心理社会的ストレッサー+第X軸のGAFによる機能の全体的評価]

DSM-W-TRの多軸診断2:第W軸の心理社会的ストレッサー+第X軸のGAFによる機能の全体的評価

DSM-W-TRの“第W軸”と“第X軸”については詳細に触れられることが少ないのだが、クライエント(患者)の心理社会的な状態を正しく認識するために必要な診断軸になっている。第W軸は『心理社会的問題および環境的問題』であり、第T軸(精神疾患・精神障害)と第U軸(パーソナリティー障害・人格障害)の治療・経過・予後・診断に影響する可能性があるものを記載していくという形になっている。

DSM-W-TRの多軸診断1:機能的障害と器質的障害の除外診断(鑑別診断)

第W軸では、対人関係のストレスや仕事のストレス、離婚・死別など人生の不幸な出来事、環境的な困難といった『心理社会的ストレッサーの強さのレベル』を診断していくのである。第W軸ではストレッサーの種類について、クライエントを支持する一次的支持グループである家族、そして教育・社会環境・職業・住居・経済問題・保険機関(福祉機関)利用上の問題、その他の心理社会的問題といったカテゴリーが分類されている。

第W軸はクライエント(患者)のストレス因子とそのストレスの強度をできるだけ幅広く正確に理解しようとするための診断軸である。そのためには『クライエントの生活歴・成育歴・人生経験・人間関係』を詳しくインタビューしなければならず、実際には精神科医・臨床心理士(カウンセラー)の限られた面接時間・診察時間の中だけでは十分な情報を得ることが難しいという課題がある。

第W軸の診断システムを機能させるためには、クライエントの生活環境・人間関係・成育歴について詳しい情報を常に知ることのできる立場にある献身的なソーシャルワーカーが機能している必要があるとも言われる。

第X軸は、クライエントの心理状態・適応状態を全体的かつ統合的に評価していく『機能の全体的評価(機能の全体的評定)』の診断軸になっている。一人の社会的存在としてのクライエントが、心理社会的状況にどのように適応しているか、どれくらいの適応水準・病的状態にあるかということがこの第X軸『機能の全体的評価』で評価されることになる。

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[DSM-W-TRの多軸診断1:機能的障害と器質的障害の除外診断(鑑別診断)]

DSM-W-TRの多軸診断1:機能的障害と器質的障害の除外診断(鑑別診断)

精神疾患と身体疾患の診断には、身体疾患が基礎疾患になっているという『因果関係』が成り立つ場合もあれば成り立たない場合もある。DSMの診断基準では、精神疾患と身体疾患の両者に因果関係が成り立たない場合でも、第V軸の身体疾患として独立的に診断名が記載されることになる。

パニック発作(恐慌発作)と自律神経症状を伴うパニック障害の診断が第T軸で下された時には、第三軸においてパニック発作や自律神経系の異常を引き起こしている『身体疾患(心臓疾患・中枢神経系の神経変性疾患など)』がないかの内科的な検査・診察を追加で行うことになる。これを『純粋な精神疾患』から『身体疾患を基礎に持つ副次的な精神症状』を除外するという意味で『除外診断(negative diagnosis)』と呼んでいる。

DSM-5の『ディメンション診断(多元診断)』とDSM-W-TR以前の『多軸診断』

DSM(マニュアル診断)を前提とする精神医学における『除外診断』では、精神疾患から精神症状を引き起こす身体疾患を除外していくわけだが、例えばパニック障害によって心因性のパニック発作が起きても、それは心臓の異常を伴うような『器質的障害(organic disorder)』ではなく、心因性の自律神経系の異常という『機能的障害(functional disorder)』になるわけである。

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[DSM-5の『ディメンション診断(多元診断)』とDSM-W-TR以前の『多軸診断』]

DSM-5の『ディメンション診断(多元診断)』とDSM-W-TR以前の『多軸診断』

2013年出版の『DSM-5』では精神疾患(精神症状)やパーソナリティー障害(人格障害)の重症度をパーセンタイル(%)で段階的に表示する『ディメンション診断(多元診断)』が導入された。

DSM-W以前は、精神障害・人格障害・身体疾患の一覧表を呈示する『カテゴリー診断学』を前提とした網羅的かつ診断的な『多軸診断』が採用されていた。だが、DSM-5の多元診断(ディメンション診断)では、自閉症スペクトラム・双極性スペクトラムに代表される各疾患単位や各パーソナリティ障害で健常・軽症・重症の細かな段階がある『スペクトラム(連続体)』が想定されているのである。

各種の精神疾患・パーソナリティ障害・発達障害の重症度(レベル)を『パーセンタイル表示(%表示)』で表現することによって、個別の症状の特性や重症度に対する精神科医(専門家)の共通理解を促進することができるメリットがある。認知行動療法や論理療法では昔から、思考・認知の記録表における『自己評価方法(気分が最高の時を100%、最悪の時を0%にして評価するなど)』でパーセンタイル表示が採用されてきた経緯もあり、専門家にとっては応用の効きやすさのある方式でもある。

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