アスペルガー障害における社会性の障害と他者の意図・感情を推測する『心の理論』:サリーとアン課題
アスペルガー障害の『社会性の障害』として典型的なものに、他者の感情・意図を適切に推測する能力とされる『心の理論』が障害されるということがある。イギリスの発達心理学者サイモン・バロン・コーエン(Simon Baron-Cohen,1971〜)は、自閉症スペクトラムの根本障害の原因をこの『心の理論の発達不全』に求めているが、人間の赤ちゃんは生後5〜9か月の時期から『注意の共有』によって他者の心(意図・感情)を推測するための心の理論を発達させ始めるのである。
他者の気持ちや意図を推測する『心の理論』が上手く発達していかないアスペルガー障害の幼児の特徴としては、ままごとやお医者さんごっこなどに代表される、ぬいぐるみ・おもちゃを役割のある人間(家族)になぞらえてなりきる『ごっこ遊び(想像力を駆使した遊び)』がほとんど見られないということもある。ごっこ遊びよりも、テレビやアニメの登場人物の決まった台詞やポーズをそのまま何度も繰り返す『オウム返し』が見られやすい。
アスペルガー障害における『社会性の障害』と身だしなみ・親密な人間関係:3
アスペルガー障害の幼児の子供は、情緒的な想像力を働かせてコミュニケーション(あれこれ会話)しながら遊ぶごっこ遊びなどよりも、むしろ論理的なルールがしっかりしているトランプや将棋、テレビゲーム(スマホゲーム)を好む傾向がある。他者の立場に立って物事を見るという心の理論も発達しづらいので、4歳児くらいから解くことのできる『サリーとアン課題』にも正答することが難しくなる。
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