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2017年07月31日

[精神分析的面接で『自己(self)』をどう評価するか?:自己愛・自己アイデンティティー]

精神分析的面接で『自己(self)』をどう評価するか?:自己愛・自己アイデンティティー

ジークムント・フロイトの精神分析でいう『自己(self)』は、意識的あるいは無意識的な自分自身とほぼ同義である。フロイトの同志で途中で訣別したカール・グスタフ・ユングは、普遍的無意識(集合無意識)の内容である元型(archetype)の一つとして『自己(self)』を定義している。

ユングの分析心理学でいう『自己(self)』には『意識と無意識を合わせた全領域の中心』といった意味がある。更に精神療法としての分析心理学(ユング心理学)では、意識と無意識のバランスが取れた自己に近づく『個性化(自己実現)のプロセス』が、精神病理の状態からの回復につながると考えられている。

精神分析で評価される外的な対人関係と内的な対象関係2:過去の対象関係・トラウマの影響の意識化

精神分析的面接でクライエントの『自己』を評価していく場合には、はじめに『自己愛』『自己アイデンティティー』に着目することが多い。自己愛の発達ラインには『誇大自己(野心に向かうベクトル)』『理想的な親イマーゴ(理想に向かうベクトル)』の軸があるが、主に自分の野心を実現しようとする誇大自己と実際の自分との違いが評価の対象になってくる。

どのような内容や大きさの誇大自己を持っているかを観察して、『誇大自己の大きさ』『現実の自分の能力・魅力』を比べて、現実生活や人間関係の中でその野心に向かう誇大自己をどのくらい満たせているかを評価していく。

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[精神分析で評価される“外的な対人関係”と“内的な対象関係”2:過去の対象関係・トラウマの影響の意識化]

精神分析で評価される“外的な対人関係”と“内的な対象関係”2:過去の対象関係・トラウマの影響の意識化

精神分析的面接を受けることの意味は、『現在の対人関係(親子・夫婦・恋人・友達との実際の対人関係)』に間接的な影響を与え続けている『(過去の重要な対人関係が原型となった)内的な対象関係のパターン』を理解して肯定的に変えることである。

精神分析で評価される外的な対人関係と内的な対象関係1:転移感情

繰り返される好ましくない『内的な対象関係のパターン』がどんなものであるかを的確に把握して、その原型となっている『トラウマティックな家族関係・親子関係』を言語化(意識化)して受容していく心の仕事も含まれている。

『外的な実際の対人関係』『内的な表象(イメージ)の対象関係』の質・水準を評価して、外的な対人関係において繰り返される内的な対象関係とその根本にある『過去の原型的な親子関係(あるいは過去の重要な人間関係の絡むトラウマ記憶)』を明らかにしていくのである。

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[精神分析で評価される“外的な対人関係”と“内的な対象関係”1:転移感情]

精神分析で評価される“外的な対人関係”と“内的な対象関係”1:転移感情

フロイト以後の精神分析では、幼児期の移行対象を取り上げたドナルド・ウィニコットや英国独立学派を立ち上げたメラニー・クラインをはじめとして、対象関係(object relation)を重視した人物が多い。

精神分析でいう『対象関係(object relation)』とは、内面心理にある他者の表象(イメージ)との関係であり、自分の外部に実際にいる他者と自己との関係でもある。その意味で、対象関係には『内的な表象(イメージ)との関係性』『外的な実際の他者との関係性』という二つの関係性が含意されていることになる。

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2017年07月17日

[精神分析の『自我防衛機制(ego-defence mechanisms)』と各種の神経症との相関関係:神経症と精神病の水準]

精神分析の『自我防衛機制(ego-defence mechanisms)』と各種の神経症との相関関係:神経症と精神病の水準

精神分析の『自我防衛機制(ego-defence mechanisms)』というのは、自分の自我を脅かす内的な不安・罪悪感から自分を守る心的機能であり、『抑圧・転換・投影・否認・否定・反動形成・合理化・知性化・隔離・分裂・投影同一視』などさまざまな種類がある。精神分析の心理面接では、自我防衛機制の評価について以下のようなポイントに注目する。

精神分析と自我・超自我による欲動のコントロール機能の評価:境界性パーソナリティー障害(BPD)の投影同一視

○自我防衛機制が『内的な安定・安心』を保つためにどのくらい役立っているか?

○自我防衛機制が適応的に機能しているのか、不適応状態を引き起こしているのか?不適応を引き起こしている場合には、抑圧によって神経症症状が出たり、否認によって現実適応が悪くなったり、反動形成によって人間関係のストレスが強くなりすぎたり、投影によって相手に理不尽な責任転嫁をしてこじれたりすることが多くなる。

○自我防衛機制を相手や状況に合わせて柔軟に使えているか、自我防衛機制の無意識的な発動に対してどれくらい意識化(言語化)することができるか?

○自我防衛機制が、自分にとって自然に感じられる『自我親和的』なものなのか、自分にとって違和感のある『自我違和的』なものなのか?

精神分析を基盤とする力動精神医学では、神経症の症状学的な類型化が行われており、それぞれの症状に対応する特有の自我防衛機制の種類が整理されているので、自我防衛機制についての心理面接を進めることで『自我関連の病理の程度・重さ』を知ることができる。

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[精神分析と自我・超自我による欲動のコントロール機能の評価:境界性パーソナリティー障害(BPD)の投影同一視]

精神分析と自我・超自我による欲動のコントロール機能の評価:境界性パーソナリティー障害(BPD)の投影同一視

境界性パーソナリティー障害(BPD)の人は自分の激しい感情・衝動に対する自我のセルフコントロール能力が著しく低く、そのために『他者との不適切な人間関係(他者に自分の怒り・不安・欲求を投影するような人間関係)』の中でしか自分の感情を表現できず衝動を処理できない。

精神分析における性的欲動の『症状・夢・空想(白昼夢)』への転換:境界性パーソナリティー障害(BPD)の自己制御の障害

自分の持っている『怒り・不満・攻撃性・不安・強い欲求』などを、他者に投影することによって相手を責める。他者とのゴタゴタやトラブルを引き起こして、その中で自分の感情や衝動を処理しようとするので、境界性パーソナリティー障害(BPD)の人に付き合わされる恋人・家族の多くは心理的に振り回されて疲弊してしまうのである。

親しい他者に自分の感情・衝動を処理してもらいケアしてもらおうとするのが、境界性パーソナリティー障害(BPD)の人の大きな特徴であり、こういった自分の中にある感情や欲求を相手に押し付けて、それを相手が持っているものとして同一化してしまう原初的な自我防衛機制のことを『投影同一化(投影同一視)』と呼んでいる。

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[精神分析における性的欲動の『症状・夢・空想(白昼夢)』への転換:境界性パーソナリティー障害(BPD)の自己制御の障害]

精神分析における性的欲動の『症状・夢・空想(白昼夢)』への転換:境界性パーソナリティー障害(BPD)の自己制御の障害

超自我(内的な善悪の判断基準)によって欲動・感情が過剰に抑圧されてしまうと、その内容が変形されて『症状・夢・空想(白昼夢)』などに投影的に転換されることになるというのが、S.フロイトが創始した精神分析における精神病理学的な考え方である。

自我の持つ欲動のコントロール機能と思春期・青年期における精神疾患の発症

神経症のクライエント(患者)は、本来の生理的な欲動(特に性的欲動)をそのまま空想することはなく、空想の内容を道徳的・社会的に批判されない無難な内容・対象に置き換えてしまうことが多く、複数の表象へと移り変わることによって『象徴化』されていく。そういった置き換え(置換)や象徴化は無意識のプロセスによって行われている。

精神分析の治療的アプローチでは、『症状・夢・空想』の背後にある『無意識の心理内容とその意味』を読み取って分析するが、それはクライエント(患者)の持つ『本来の性的欲動・願望・葛藤』を明らかにして言語化・意識化させていく心的作業である。自我の欲動のコントロール機能が大幅に障害されてしまうものとして、感情・気分・対人関係が不安定になり自傷行為が増える『境界性パーソナリティー障害(BPD)』がある。

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[自我の持つ欲動のコントロール機能と思春期・青年期における精神疾患の発症]

自我の持つ欲動のコントロール機能と思春期・青年期における精神疾患の発症

自我の重要な機能の一つに『欲動のコントロール機能』があり、自分の欲動を適応的にコントロールできないことが、思春期・青年期の精神疾患やパーソナリティー障害の原因になってしまうことがある。

特に思春期の女性が自分の欲動のコントロールができなくなってしまった時には、食欲に異常がでる『摂食障害(神経性無食欲症・神経性大食症)』や見捨てられ不安を伴う自己否定・情緒不安定が目立つ『境界性パーソナリティー障害(BPD)』を発症しやすくなるとされる。

生理的な欲動が強くなりすぎて衝動をコントロールできなくなる人もいれば、精神分析でいう超自我(スーパーエゴ)が強くなりすぎて欲動を過剰に抑制してヒステリー症状(神経症の身体化症状)が出てしまうような人もいる。幼少期の親子関係によって形成されるエディプス・コンプレックスを克服できなかったり(母親にリビドーを向けて固着する依存的な心理が長く残ったり)、父権的な超自我による過剰な抑圧があったりすると、精神発達が未熟な段階に留まって、自発的に何かをしようとする欲動そのものが未発達になってしまうこともある。

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2017年07月10日

[内的作業モデルと愛着理論から考える人間関係2:『安定・回避・アンビバレント』に分類する内的作業モデル尺度]

内的作業モデルと愛着理論から考える人間関係2:『安定・回避・アンビバレント』に分類する内的作業モデル尺度

愛着理論(attachnment theory)では、愛着対象(他者)との間で愛着の成立・喪失に関係したさまざまな出来事を経験することによって、個人の内面に『人間関係の定型的パターン』が表象化されていくことになる。その結果、『愛着対象の有効性・信頼性についての確信(相手がどれくらい信じられるか)』『自己についての確信(自分がどれくらい信じられるか)』が形成されることになる。

内的作業モデルと愛着理論から考える人間関係1:幼少期の好ましい愛着形成が安全感をつくる

更に掘り下げて言えば、『愛着対象の有効性・信頼性についての確信』とは、結びついている愛着対象が自分の要求に対してどのくらい前向きに応答してくれる存在であるかということの確信である。『自己についての確信』は他者についての確信を補完するものであり、自分自身が愛着対象(親しいと思っている他者)からの援助や支持に値するだけの価値ある存在であるかということの確信である。

この『他者・自己についての確信(内面にある心的表象)』は、その後の対人関係における愛着関係の出来事に影響を受けながら、一般的な対人関係での行動パターンを間接的に規定していくことになるが、これを『内的作業モデル』と定義しているのである。愛着関係の中で示される個人に特有の対人関係の行動パターンを『愛着スタイル』というが、この愛着スタイルにも内的作業モデルが影響を及ぼしている。

戸田弘二は愛着理論(乳幼児期の愛着パターン)を参考にして内的作業モデルを『安定・回避・アンビバレント(両価的)』の三次元に分類してから、その内的作業モデルの特徴の個人差を測定する心理測定尺度『内的作業モデル尺度(1988)』を作成している。『内的作業モデル尺度』で測定された個人差は、ストレスや自己統制、パーソナリティー特性、死の恐怖感などとも相関する可能性が指摘されている。

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[内的作業モデルと愛着理論から考える人間関係1:幼少期の好ましい愛着形成が安全感をつくる]

内的作業モデルと愛着理論から考える人間関係1:幼少期の好ましい愛着形成が安全感をつくる

アブラハム・マズローの欲求階層説では、『生理的欲求(食欲・睡眠欲)』の次の段階として『安全・安心の欲求』が置かれている。安全感を得たいという欲求は人間の最も基本的な欲求の一つであり、よく知らない未知の対象(他者)との間で相互作用を行うためには、『一定の安全感の保証』がなければならないが、この安全感は遺伝要因や幼少期の愛着形成の経験による『個人差』が大きい。

よく知らない他者とコミュニケーションしても、この『安全感』が低下せずに比較的安定している人もいれば、すぐに安全感が障害されて不安・混乱・逃避を来たしてしまうような人もいる。この安心感・安全感にまつわる個人差は、その人が自分と他者との関係性をどのような意味や影響を持つものとして捉えているかによって規定されてくるところがある。

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[対人態度と一般的信頼感2:自分と他人への信頼と不信は両立する可能性がある]

対人態度と一般的信頼感2:自分と他人への信頼と不信は両立する可能性がある

天貝由美子は発達心理学研究で他者に対する一般的信頼感を、『自分への信頼・他人への信頼・不信』で多元的(三次元的)に捉えた上で、『信頼感尺度(1997)』を作成しています。

[対人態度と一般的信頼感1:人一般をどれくらい信じるかを測定する『信頼感尺度』]

この心理測定尺度(心理テスト)では、他者を信じやすい人ほど騙されやすいという世間一般にある思い込みの先入観が否定されており、『自分や他者を信じること』『人一般を疑う適度な不信感(注意深く用心深く判断する必要を感じること)』は両立し得ることが示されました。自分や他者への一般的信頼感が強いから、騙されやすい単純な性格行動パターンを持っているというわけではないのです。

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[対人態度と一般的信頼感1:人一般をどれくらい信じるかを測定する『信頼感尺度』]

対人態度と一般的信頼感1:人一般をどれくらい信じるかを測定する『信頼感尺度』

心理学における『態度(attitude)』とは、社会的対象に対する特定の個人の行動を規定する『持続的な考え方・感じ方・反応様式・行動の準備状態』のことです。他者に対する個人の行動を規定する態度のことを『対人態度』といいますが、良好な人間関係形成に寄与する典型的な対人態度として『信頼感・共感性』があります。

信頼感には、具体的な特定の相手の人間性や言動をどれくらい信じるかという『特定的信頼感』だけではなく、一般的な他者の人間性や言動をどれくらい信じるかという『一般的信頼感』があります。他者一般に対する『基本的信頼感(一般的信頼感)』は、エリク・エリクソンの社会的精神発達理論では、乳児期の発達課題(=親から愛情や保護を与えてもらえるかによって基本的信頼感の獲得の成否が変わってくる)としてよく知られています。

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[独自性欲求(ユニークネス欲求)と日本語版の独自性欲求尺度]

独自性欲求(ユニークネス欲求)と日本語版の独自性欲求尺度

自分を他者とは異なる独自の存在としてアピールしたい欲求のことを『独自性欲求・ユニークネス欲求』という。独自性欲求が強い人ほど、自分自身を特別な特徴や能力があるユニークな存在であるべきと考えており、『自分が他人と同じであること』『他者と比べて目立つところのない普通・標準であること』を嫌う傾向がある。

日本人は欧米人と比較すると『同調圧力・みんな(普通)から外れる不安』の影響を受けやすく、『他者と同じであること・他者に合わせること』を重視するので、独自性欲求(ユニークネス欲求)は低くなりやすいと言われている。欧米社会でも『帰属集団の標準(普通)からの逸脱』に対するネガティブ(否定的)な評価はあるが、心理学者のC.R.スナイダー(C.R.Snyder)H.L.フロムキン(H.L.Fromkin)はこの標準からの逸脱にポジティブな意味合いを与えた。

C.R.スナイダーとH.L.フロムキンは、ポジティブ(肯定的)な独自性と関係する5つの因子として『独立心・反同調性・改革性・達成・自尊心』を上げて、1980年に独自性欲求の心理測定尺度を作成している。スナイダーとフロムキンの『独自性欲求尺度』は岡本浩一によって1985年に日本語版が作成されている。

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