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2008年06月10日

[失行症(apraxia)・失語症(aphasia)]

失行症(apraxia)・失語症(aphasia)

失行症(apraxia)とは、高次脳機能障害(頭頂葉損傷)を原因とする『運動・行為・動作の障害』であり、手足の麻痺や失調、不随意障害が認められないのに『特定の行為・指示された動作(複数の動作が組み合わさったパターン行動)』を遂行することができなくなる。『失行・失行症(apraxia)』という病理概念はH.シュタインタール(H.Steinthal, 1871年)によって提起され、H.リープマン(H.Liepmann, 1900)によって失行症の分類整理がなされ神経心理学的な動作障害として確立した。

失行(失行症)には『手足の麻痺・器質的な失調・不随意運動・意識障害・知的障害』などが見られないという特徴があり、本人は『自分がとるべき行動・動作の内容(意味)』が分かっているのにその行動・動作を遂行することができなくなるという神経学的な障害である。失行とは『指示された動作・目的とする行為』が知的には理解できているのに、実際の行動レベルではその動作・行為を正しく遂行することができないという障害であり、根本原因は高次脳機能障害や神経学的な障害にあると推定されている。失行(失行症)が起こる行為・動作は、生得的な運動能力に基づくものではなく、『後天的(経験的)な学習・教育を通して獲得した行為(動作)』であり、運動記憶(パターン記憶)・表象機能・行動計画機能・動作調整機能などに関係する高次脳機能が何らかの形で障害されていると考えられている。

H.リープマンは失行を『四肢運動失行・観念失行・観念運動失行』に分類したが、四肢運動失行とは『失行』と『麻痺』の移行型の低次の失行であり、手指・顔面・体幹などの動作障害運動が拙劣になる。観念失行とは、『複数の動作から成り立つ一連の動作』を正しい順序で行うことが難しくなるという症状であり、インスタントコーヒーを入れようとしてコーヒーの粉を入れる前にお湯を入れてしまうような症状のことを指す。観念運動失行とは、『指示された動作』を正しい順序で遂行することができなかったり、『他者の行為の模倣』を正しく行えないようになる症状のことである。

K.クライスト(K.Kleist)は、1934年に図形描写や積木の構築など空間操作能力・空間認識能力が障害される『構成失行』を定義し、R.ブレイン(R.Brain)は、1941年に洋服を正しく着ることができない『着衣失行』の存在を確認した。失行の障害分類には、『四肢運動失行・観念失行・観念運動失行・構成失行・着衣失行・歩行失行・眼球運動失行』などがあり、失行以外の特殊な機能障害として『失書・失算・失認・失語・健忘』などがある。

失語症(aphasia)は、脳の言語領域の損傷によって『話し言葉・書き言葉』を表現したり理解したりする言語機能が部分的・全的に失われる症状のことである。左側頭葉の一部であるウェルニッケ野や前頭葉の一部であるブローカー野が障害されることによって失語症が発症する。聴覚性言語中枢であるウェルニッケ野が障害されると、他人が話している言葉の内容や話の意味を理解することが困難になる『ウェルニッケ失語症』を発症する。

運動性言語中枢であるブローカー野が障害されると、自分の考えていることや感じていることを適切に言語化することが出来なくなる『ブローカー失語症』を発症するが、ブローカー失語症では他人の話している言葉の意味を理解する能力は残っている。失語症の特徴や診断、治療(専門資格)については[言語聴覚士・言語療法士(ST)の言語聴覚療法(speech therapy or language therapy)][言語聴覚士(Speech-Language-Hearing Therapist)・言語療法士(Speech Therapist:ST)]の項目も参照してみてください。

posted by ESDV Words Labo at 00:09 | TrackBack(0) | し:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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