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2008年06月17日

[実存主義(existentialism)]

実存主義(existentialism)

哲学史における実存主義(existentialism)とは、自我意識(主体性)を持ち自己の存在意義を問いかける人間固有の存在形式である『実存(現実存在)』を考察する思想的立場のことである。自我意識と自己言及性を備えた人間の存在形式である『実存』とは、他者と社会環境から独立した個人の在り方であり、宗教的・普遍的・理論的な『所与の生きる意味』を与えられていない無意味な世界に『投企』された存在である。実存の存在形式は、私は私以外の何ものにもなれないという『自己の固有性・交換不可能性』に根ざしており、先験的・普遍的な生きる意味を与えられていないが、『今・ここ』の地点から自分の生きる意味を志向するという本性を持つ。

今、現実に生きている『私の存在(自我意識)』を中心にして、客観的には無意味であるこの世界に『私の生きる意味・価値(主体的で主観的な存在根拠)』をどのようにして刻印できるのかというのが実存主義の投げかける切実な問いである。実存主義の中心的命題は『実存は本質に先立つ・現実存在は本質存在に優越する』ということであり、理論的な本質や論理的な因果関係に拘束されない『自由意志を持つ人間(個人)』が前提されている。

その意味で、実存主義とは原則的に個別的・偶然的な個人を基点とする個人主義との親和性が良い思想であるが、ジャン・ポール・サルトルが社会主義運動にアンガージュマン(他の実存と連帯・協調する社会参加)したように個人主義であろうと集団主義であろうと、自分固有の人生を自分で自己決定(自己選択)するという点に重点がある。実存主義は、科学的理論や一般常識、統計学的根拠などの『理論的構成物・抽象的な概念』による自己規定を認めず、『今・ここにある自分』がどのように生きたいのか、何を選択するのかの自己決定(自己責任)を重要視するのである。

近代哲学における実存主義は、セーレン・キルケゴール(1813-1855)から始まるとされるが、キルケゴールは『私の個別的・具体的な人生(存在)』という実存を自己の哲学の主要テーマとして、『あれか、これか』『死に至る病』などの宗教信仰の色彩の濃い実存主義的な論文を上梓した。

キルケゴールが『死に至る病』と呼ぶのは生きる意味や希望を完全に喪失した『絶望』のことであり、人間が必然的・運命的に『死』に向かって進む実在である以上、宗教的な神の救済無くしては『死の絶望(可能性の終焉)』を逃れることは出来ないとした。キルケゴールは、G.W.F.ヘーゲルの個別的・具体的な個人の人生(意識)を切り捨てた『絶対精神』の哲学を批判して、有限的存在である個人(個物)の具体的な人生の過程・決断こそが重要であると主張し、一般理論や絶対精神には決して還元できない『特殊的・個別的な個人の生・自我』の実在(実存)を提起したのである。

実存主義はその後、『神の死』によるニヒリズム(虚無主義)の到来を宣告したフリードリヒ・ニーチェ(1844-1900)へと継承されていき、無意味で理不尽な世界に投企された人間個人が『自分の有限・無力な人生』に絶望せずに力強く生きていくためにはどうすれば良いかが問われることになった。神の実在や道徳規範(弱者の論理)による自己救済を否定したニーチェは、『背後世界(仮想的な価値体系)』に依存しない実存的な生の意味の創出を賞賛して、一回性の人生を後悔なく生き抜き自己存在を全肯定するような生き方を『運命愛』と呼んだ。『永劫回帰(無限回にわたり「今と同じ人生」が繰り返される世界)』を前提としても、自分の人生や存在を全肯定できる『運命愛』に到達するためには、人間は旧来的な存在形式や価値認識を超越した『超人』にならなければならないというのがニーチェの超人思想である。

『今・ここにいる私』を中心とする実存主義の基本コンセプトは、マルティン・ハイデガーやカール・ヤスパース、ジャン・ポール・サルトル、モーリス・メルロ=ポンティなどへと引き継がれていき、ハイデガーは現象学的な手法を用いて人間の存在形式(実存)を考察したが、最後にはナチズムへと傾斜する主体的可能性を軽視する宿命論的な本来性(死に向かう究極的可能性)の地平へと辿りついてしまった。いずれにしても、実存主義とは『今、現実に生きている“私”』がどのように生きていくべきか、どういった生の意味づけを創造できるのかをリアリスティックに問いかける思想潮流であると言えるだろう。



posted by ESDV Words Labo at 23:53 | TrackBack(0) | し:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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