ウェブとブログの検索

カスタム検索





2008年06月24日

[カウンセリングにおける質問とゲシュタルト療法の『質問の禁止』]

カウンセリングにおける質問とゲシュタルト療法の『質問の禁止』

カウンセリング(counseling)とは、言語的・非言語的なコミュニケーションを活用して『問題の解決・状態の改善・心理的な成長』を目指す対人援助技術である。それと同時にカウンセリングは、カウンセラーとクライエントの相互信頼(相互尊重)を前提とした『支持的な人間関係』のことでもあり、日常の人間関係では得られない『共感的な理解・積極的な受容』を経験することができる。カウンセリングでクライエントの問題解決に向けた『言語的なコミュニケーション』を行う場合には、『クライエントの悩み・意見・認知・感情・生活履歴(成育歴)』などを正確に知るために質問を行うことがある。心理療法の技法によっては精神分析のように『カウンセラー(心理臨床家)からの質問』を余り行わないこともあるが、一般的には各技法や理論の『質問技法(questioning)』を参考にした質問が共感的な雰囲気の中で行われる。

カウンセラーがクライエントに質問する理由としては、『クライエントについての情報収集・話題の幅の拡張・コミュニケーションの円滑化(作業同盟の強化)・心理的問題や感情状態の明確化』などを考えることができる。カウンセリングの質問技法では、『クライエントの答えやすい質問』から段階的に『本質的な問題領域(重要だが話しにくい話題)』に迫っていくことが大切であり、カウンセラーは『オープン・クエスチョン(開かれた質問)』『クローズド・クエスチョン(閉じた質問)』を状況(心情)と必要に応じて適切に使い分けていくことになる。

オープン・クエスチョン(open question)というのは、『お母さんの態度についてどう思っていますか?中学生時代に印象に残っている出来事は何ですか?』というような質問であり、『クライエント自身の言葉・表現』で具体的な内容を答えさせようとする質問である。クローズド・クエスチョン(closed question)というのは、『気分が落ち込むことがありますか?積極的に他人に話しかけるほうですか?』というような質問であり、『はい・いいえ』で簡単に当てはまるか当てはまらないかを答えさせようとする質問である。

年齢が低くて自分の考えを上手く言葉で表現できない幼児であったり、言語能力が余り発達していないクライエントであったりする場合には、クローズド・クエスチョン(閉じた質問)のほうが的確な回答を得やすいが、クローズド・クエスチョンは統計的な処理や診断的な判断に向いた質問としての特徴を持つ。治療的な面接やカウンセリング的な対応では、『開かれた質問(オープン・クエスチョン)』をクライエントの心理的負担にならないように適度に取り入れていくことが必要である。

実際的な感情体験によって“自己への気づき”を得ようとするゲシュタルト療法では、質問技法をクライエントに極力使わないという原則がある。ゲシュタルト療法の創始者であるフリッツ・パールズは、『自分の意見・考え』を表明せずに『他者への質問』を行う行為は、自己の研究や知的欲求のためにクライエントを利用する行為であるだけでなく、『自己の正当化の手段』であると批判した。

フリッツ・パールズは『他者への質問』をする時には、人は既に『質問の答え』を知っているか『相手への反論』を考えているものなので細々とした質問をするカウンセリング的な意義は乏しいとした。『心理学研究・心理テストのための質問』に対しても、クライエントの利益につながるかどうか明らかではないという懐疑的な態度を取ったが、パールズは『クライエントからの質問』に対しても『質問文ではなく肯定文で話してください』と語ってクライエントの肯定的な思考(自分に対する自信の強化)を促した。

自分の行動や発言に責任を持つ『成熟した人間』を理想とするゲシュタルト療法には『質問の禁止の原則』があり、『今・ここにある自分』が何をしたいのか、何を感じているのかを言語化していくのである。パールズにとっての質問とは『自己正当化の道具・他者を分析する道具』であり、パールズは『非対称的な質問』よりも『対称的な意見の交換』のほうが、実際的な気づきの体験や人生の自律性の強化に役立つと考えた。

posted by ESDV Words Labo at 15:59 | TrackBack(0) | し:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。