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2008年07月17日

[ゲシュタルト心理学の『図と地(figure and ground)』]

ゲシュタルト心理学の『図と地(figure and ground)』

ゲシュタルト心理学では『部分的要素』に還元できない『全体性(形態)』を重視するが、私たちが情景・状況の全体を知覚する時には『図と地(figure and ground)』の分離が生まれる。全体的な情景・場面の中には、知覚(認識)の焦点が合わされる『図(figure)』と知覚の焦点から外れて背景になる『地(ground)』とがあり、通常は『図の違い・図と地の境界線』によって事物や状況の差異を知覚しているのである。そこにどんな『図(事物)』があるのかを明確に知覚するためには、『図』と『背景(地)』の境界線を無意識的に知覚する必要があり、現実的な状況では『地(境界線)』のない『図』というのは存在しない。

『図と地』の境界線が極端に曖昧になると、『多義図形(図地反転図形)の知覚』『錯視(さくし)』などの現象が現れてくることになるが、『図と地』の概念を多義図形(図地反転図形)を用いて最も典型的に表現したのが『ルビンの壷』である。ルビンの壷は、どこに焦点づけするのかによって『壷』の図にも見えるし、『向かい合っている二人の横顔』のようにも見えるという図地反転図形である。中学校や高校の美術の教科書にも『図地反転図形』は多く紹介されているが、『ルビンの壷』以外にも『少女と老婆』『ウサギとカモ』などが有名な図地反転図形として掲載されることが多い。いずれにしても、図と地の見方が二つ以上存在すれば、多義的な図地反転図形を描いて知覚機能を欺くことができる。図と地の境界線が曖昧だったり配色や形態を工夫したりすると『錯視(視覚の誤認)』が起こってくることもある。

フリッツ・パールズローラ・パールズの夫妻が創始したゲシュタルト療法(Gestalt therapy)にも『図と地』の概念が応用されている。クライエントが注意・焦点を向けている部分を『図』とし、注意・焦点を向けていない背景的な要素を『地』としているが、普段注意を殆ど向けていない『地』の部分にクライエントの潜在的な可能性(長所)や回復能力が潜在していることがある。ゲシュタルト療法では『人格の全体性の回復』を志向し、『図』と『地』を柔軟に選択して転換することで、適応的な認知や行動を取り戻していくことになる。抑圧して目を遠ざけている『地(背景)』の中から、今・ここで生きる現在の自分を健康的に動機づけしてくれる『気づき・洞察』を得ようとするのがゲシュタルト療法の基本的な方法論である。

不快なことや苦痛なことばかりを『図』にしていれば、人間の精神は病理的な状態に陥りやすくなるのだが、不快な事象を中心にした『図』を楽しいことや希望的な予測を中心にした『図』に置き換えていけば次第に精神状態が良い方向に変化してくる。他者を観察する時にも『図』と『地』のバランスに注意して、他者の欠点や短所など悪い面ばかりを『図』にしないことが大切であり、苦手な他者であってもその中から少しでも良いと思える『図』を見つけ出していくことで対人関係のストレスが低下するのである。

夫婦関係の中で妻が『夫は仕事ばかりに集中して家庭のことを気にしてくれない』という不満を漏らしてイライラした気分になることがあるが、その時には『家庭に夫が帰ってこないこと』が図になっていて、『家族のために懸命に働いていること』が地になっている。図と地を反転させてバランスの取れた見方ができるようになれば、『夫も自分や子どものことを無視して仕事を楽しんでいる』わけではなく、『本当は早く帰りたいと思いつつ、家族の生活を守るために仕事を頑張ってくれている』という風に肯定的に夫の仕事ぶりを評価できるようになる。物事の図と地を反転させることで『考え方・価値判断』を変化させるゲシュタルト療法の技法は、悲観的認知を楽観的認知に変容させていく認知療法・論理療法にも類似した部分がある。

posted by ESDV Words Labo at 17:40 | TrackBack(0) | す:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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