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2008年08月26日

[大恐慌(世界恐慌)と景気循環]

大恐慌(世界恐慌)と景気循環

企業活動に順調に資金が供給され、商品・サービスの売れ行きが好調で労働者の消費意欲が高い経済状況を『好景気(好況)』という。反対に、商品・サービスの売れ行きが悪くなり企業活動への資金供給が滞って、事業活動のための設備投資も減る経済状況を『不景気(好況)』という。経済活動が活発になる好景気と経済活動が減速する不景気とは交互に繰り返すとされており、景気の上昇と下降の繰り返しの変動のことを『景気循環』と呼ぶ。景気の上がり下がりの変動は『景気拡大局面・景気後退局面(リセッション)』の二つの位相によって理解され、景気は『回復・好況・後退・不況』のリズムで大まかに変化していく傾向がある。

資本主義経済に見られる好況−不況の景気循環には、歴史的に確認された以下の4つの波(サイクル)があると考えられている。

キチンの波……アメリカの経済学者ジョセフ・A・キチンが1923年に提唱した、企業の在庫変動・在庫調整に関連する数年単位の短期的な景気循環(短期波動)である。“消費減少→在庫増大→在庫整理のための生産調整・安売り→在庫減少による生産体制の正常化”というサイクルを見せるが、新商品や技術革新によって在庫増大と生産減少による不況を乗り越えられないこともある。

ジュグラーの波……フランスの経済学者J・クレメンス・ジュグラーが1860年代に提唱した、企業の設備投資の拡大と縮小に関連する10年単位の中期的な景気循環(中期波動)である。技術革新やデザインの変化、消費者の好むモード(流行現象)などによって、企業の設備投資が利益増大に貢献するか否か在庫増大を回避できるかどうかが規定され、中期的なサイクルをもった景気循環が形成されることになる。

クズネッツの波……アメリカの経済学者サイモン・クズネッツが1930年に提唱した、建物需要・インフラ需要・施設への設備投資などに関連する20年単位の中期的な景気循環(中期波動)である。年齢別人口階層の変化とクズネッツの波が相関しているという仮説的な演繹をする学者もいるが、基本的には耐久消費財として減価償却される建物・施設の需要の増減と関係している波動である。

コンドラチェフの波……ロシアの経済学者ニコライ・ドミートリエヴィチ・コンドラチェフが1925年に提唱し、ヨセフ・シュンペーターが命名した長期波動である。大規模で決定的な技術革新に関連する50年単位の長期的な景気循環(長期波動)とされ、第1波の1780〜1840年代は紡績機・蒸気機関などの発明による産業革命、第2波の1840〜1890年代は鉄道建設・公共交通手段の整備、1890年代以降の第3波は電気・化学・自動車の発達によって大きな景気転換が起こったとしている。1990年代後半からはIT(情報技術)・コンピュータ・インターネットによる情報革命が起こっており、この技術革新がコンドラチェフの波を作るのか否かには諸説がある。

不況段階で信用経済の収縮を伴う深刻な景気後退局面のことを『恐慌(crisis, panic)』と呼び、恐慌が発生すると金融市場の機能麻痺や銀行の信用破綻といった金融危機に襲われることになる。恐慌はただ景気が悪くなって賃金が下がったり失業者が増えたりするだけではなく、消費が大幅に減少して企業倒産が増えることで銀行が融資したお金を回収することができなくなる。不良債権を抱え込んだ金融機関(銀行)が倒産したり、これから更に多くの銀行が倒産するという風説によって恐慌特有の金融危機が深刻化するのである。

資本主義経済で恐慌が発生する原因については色々な説があるが、基本的には『企業の人的コストの削減(リストラ・賃金引き下げ)→労働者の可処分所得の減少と失業者の増大→市場における消費の減少→過剰在庫の発生→生産調整と企業利益の圧迫→企業の倒産と銀行の融資の回収不能→失業・破産・金融危機(信用経済の崩壊)』という流れによって恐慌が形成されることになる。恐慌とは異なるが信用経済の大幅な縮小という意味では、2007年に発生したアメリカのサブプライムローンの破綻(不良債権化)も不況発生と類似した構造的問題を持っており、銀行の金融機能が麻痺したり経営状況が悪化したときに景気が大きく後退することになる。

資本主義経済の歴史の中で最大規模の恐慌(深刻な不況)とされているのが、1929〜33年にアメリカのウォール街の株式市場の大暴落によって始まった『世界恐慌(大恐慌)』である。世界恐慌は世界中の市場経済活動に波及していき、世界各地で『失業率の大幅増加・倒産件数の大幅増加・株式市場の大暴落・金融機能の麻痺・信用経済の崩壊』といった景気の急速な悪化が見られた。大恐慌のきっかけになったのは、1929年10月24日(木曜日)のニューヨーク・ウォール街の株式市場の大暴落であり、この日のことを『暗黒の木曜日(ブラック・サースデイ)』と呼んでいる。

大恐慌の原因も、農作物や工業製品を大量に作りすぎて過剰在庫を抱え設備投資が滞るという『過剰生産』だったが、市場の需要(市場の大きさ)と消費者の購買力を大幅に超える生産が行われた背景には『バブル景気(株式・先物市場への過剰投機)』があったことも忘れてはならないだろう。経済の実態や実際の需要を無視した過剰投資やバブル景気が起こるときに、次の不況・恐慌の波が訪れやすくなるのである。世界恐慌(大恐慌)は、イギリスとフランスのブロック経済化を推し進め、ハイパーインフレで経済が崩壊したドイツでヒトラー率いるナチスの台頭を招くなど、第二次世界大戦の遠因にもなった。



posted by ESDV Words Labo at 11:53 | TrackBack(0) | た:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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