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2008年08月26日

[知識人階級(インテリゲンチャ)と大衆社会]

知識人階級(インテリゲンチャ)と大衆社会

知識人(ちしきじん)とは、大学機関等で高等教育を受けて高度な思考能力と専門知の体系を有する個人のことであり、知識人が特定の社会階層・職業機構に集まることによって知識人階級を構成する。集団としての知識人は知識人階級を構成するが、知識人階級はインテリゲンチャ(インテリ)と呼ばれることもある。これはロシア語を語源にしている。

ドイツ(ワイマール共和国)の医学体系・学校制度・知識活動を模範としていた明治〜大正期からインテリゲンチャが形成され始めたが、日本で知識人階級という言葉が一般的に知られ始めたのは昭和初期とされる。昭和初期にロシア語のインテリゲンチャという言葉が使われた背景には、ロシアの知識人階級が一定の啓蒙的役割を果たした『ロシア革命の影響』があるとされる。ロシア革命に賛同した知識人の多くは、ソ連の官僚主義政治においてテクノクラート(官僚支配階級)として活躍したが、このことが上昇志向・実力主義指向の強い日本の知識人(まだ少なかった国立大学・帝国大学の卒業者)に与えた影響は相当に大きかった。

『知識人』の対義語は『大衆(民衆)』であり、知識人は日常生活や経済活動(生計)の範囲に収まらない社会・人間に対する学術的な問題意識を持ち、論理的・分析的に物事を考えて諸問題の解決策を提出しようとする傾向がある。基本的に、知識人は肉体運動よりも精神活動を重視しており、精神的な知的営為(言語・数理・統計・分析・政治)などによって社会に価値を創出したり社会経済的な活動に貢献したりする。知識人は主に広義の頭脳労働に従事することになったが、知識人が就く実際の職業としては『政治家・経営者・学者(教授)・教師・文学者(作家)・芸術家・記者(ジャーナリスト)・評論家・宗教家・哲学者・クリエイター』など様々なものがあり経済階層としての統一性は見られない。

近代社会を構成する経済階層を『上流階級・中産階級・下層階級』に分けた場合に、知識人階級に属する個人はどの階級にも当てはまることがあるし、下層階級や無産者(無職者)でありながら高度な知識・情報や革新的な思想性(社会の変動要因)を持つ知識人・思想家も歴史上に多く現れた。日本の昭和期における知識人階級は、支配者階級(上流階級)と労働者階級(農民・工場労働者)の中間的な階級に位置づけられており、大企業の高学歴なホワイトカラーを含む広義のインテリゲンチャは中間階級を形成した。

しかし、高等教育を受けて専門的な知識や技術を持っているという点では、上流階級(世襲性の強い政治家・資本家・経営者)と知識人階級とでは重複する部分もあり、反対に、一般労働者の家庭から東大・京大といった最高学府で学問を修める者も多くいることから知識人階級は労働者階級とも大きく交わっている。特に、社会全体の高学歴化と科学技術・情報技術の進歩が続いている現代社会では、一般国民とインテリゲンチャを明確に区別する境界線は極めて曖昧になっており、現在では典型的なインテリゲンチャは専門家・技術者階級として残存するのみとなっている。

西欧の中世史・近代史を振り返ると、王侯貴族・僧侶(聖職者)が形成する“支配階級”、農民・労働者が形成する“労働者階級”があり、近代社会の進展に伴って支配階級と労働者階級の中間に“市民階級(ブルジョワ階級)”が生まれた。17世紀以降、勤勉な市民階級(ブルジョワ階級)が既得権を持つ支配階級を打ち倒す市民革命(清教徒革命・名誉革命・フランス革命)がイギリスとフランスで相次いで起こり、『自由・平等・友愛』をスローガンに掲げた自由民主主義的な近代社会が成立することになる。国王が絶大な権力を握って専制的な政治を行う絶対王政の時代は、経済力と知性、政治的批判力を身に付けた市民階級(ブルジョワ階級)によって打倒されることになり、主権在民・自由主義・基本的人権を前提とする議会制民主主義によって近代国家は運営されることになる。

現代日本では、大学卒業の学士の価値が大幅に下落し、大学生であることと学問の基礎を学ぶことが必ずしも一致しなくなっており、高等教育を受けた大卒者=インテリゲンチャ(知識人階級)という図式は完全に崩れ去っている。しかし、現代日本においても『政治家・官僚・大企業の経営者』の多くが東大法学部(それに準じる偏差値の大学)の卒業者であることから、日本の『政治的・経済的な上流階層』と『最高学府出身のインテリゲンチャ』との相関関係は依然として残っていると言えよう。

しかし、東大・京大・早稲田・慶応といった日本の偏差値の高い大学を卒業しても、その大半は日本社会を主導するエリート(選良的指導者・官僚・大企業の経営者)になることはなく、特定の専門領域を担当する技術者・管理職・医療関係者(医師・薬剤師)としての人生を送ることになる。現代日本でも『政界・財界・官界』には世襲・門閥の影響力が残存しているという指摘も根強くあり、社会階層・職業的地位の再生産性(世襲性)は一定の頻度で見られる。現代では昭和初期にあった特権階級的・社会革命的なインテリゲンチャの共有幻想は崩壊したといえるが、依然として高学歴の知識階層が『知識水準・技術開発・組織管理・政治機構の中枢的役割』を担っている状況は変わっておらず、一定以上の社会的評価を持つ大学機関は『社会・経済の中堅階級』を実質的に再生産している。



posted by ESDV Words Labo at 15:24 | TrackBack(0) | ち:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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