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2008年09月30日

[C.G.ユングの集合無意識(collective unconscious)と元型(archetype)]

C.G.ユングの集合無意識(collective unconscious)と元型(archetype)

カール・グスタフ・ユング(Carl Gustav Jung, 1875-1961)は、師であるS.フロイトのリビドーの充足−抑圧を重視した精神分析学から離脱して、独自の思想やアイデアに立脚した分析心理学(analitical psychology)を創始した。精神分析学の精神構造論(三層構造論)では人間の心を『意識・前意識・無意識』という3つの心的空間に分けて考えるが、C.G.ユングは無意識の領域を更に『個人的無意識(personal unconscious)』『集合無意識,普遍的無意識(collective unconscious)』の領域に分類したのである。無意識とは本人が意図的に努力して思い出そうとしても思い出すことができない心的領域であるが、無意識の概念や活用を前提する心理学をまとめて『深層心理学』と呼ぶことがある。

フロイトの精神分析、ユングの分析心理学、アドラーの個人心理学は『深層心理学』の一つとして位置づけられるが、現在では深層心理学は精神分析とほぼ同義の概念として用いられることも多く、無意識の心理学の多くは精神分析の理論や世界観に回収されることになる。S.フロイトの仮定した個人的無意識とC.G.ユングの構想した集合無意識の違いをまとめると以下のようになるが、集合無意識の解説については『ユング心理学のイマーゴと元型』『ユング心理学におけるアニマ・アニムス』の項目も参照してみて欲しい。

個人的無意識……個人の主観的な記憶・感情・経験が抑圧される無意識の領域。過去に経験した本人が思い出したくないような『不快な感情・情動』や受け容れることの出来ない『苦痛な記憶・罪悪感』などが抑圧される。個人の過去の記憶や感情、欲求が抑圧されるだけではなく、無意識領域にはフロイトが“エス(es)”と呼んだ本能的・動物的欲求が潜在している。

集合無意識・普遍的無意識……個人的無意識よりも更に奥深い領域にあり、個人を超えて『自分以外の他者(人類集団)』と共有される広大無辺な無意識領域が集合無意識(普遍的無意識)である。集合無意識は、人類全体・民族全体で共有される普遍性の高い無意識領域であり、『個人的経験・主観的苦悩・抑圧された情動(トラウマ)』とは無関係に個人の内面にさまざまなイメージや感情・感覚を送り込んでくる。人間が基本的に他人と同じように感じて考える『共感能力』を持ち、他人との合意の下に物事を判断することができるのは『集合無意識(普遍的無意識)』があるからだとユングは考えた。

集合無意識(普遍的無意識)は、個人が過去に経験した心理体験(トラウマ)や記憶内容とは無関係なものであり、人類全体に共通する精神機能や感情体験の起源(原因)としての役割を果たしている。集合無意識の内容となっている基本的なイメージ・感覚のパターン(類型)を『元型(アーキタイプ)』と呼ぶが、元型のイメージは『夢・自由連想・想像・白昼夢・精神病理(症状)』などに反映されることになる。元型の自律的・能動的なイメージによって人間の喜怒哀楽の感情体験が生まれ、各種の精神機能(知覚・記憶・思考・情動)が活性化されるのである。

普遍的無意識の内容は、世界各地にある神話・伝承・民話・お伽話・物語などのモチーフや題材となっており、それぞれの神話や物語には文化・民族・歴史の差異と関係しない『物語構造・主題内容の共通性』が見られる。元型については[ユング心理学の元型(archetype):永遠の少年(プエル・エテルヌス, puer eternus)]の記事で説明したが、C.G.ユングが発見した元型には以下のような種類がある。

グレート・マザー(太母)……『包み込むような愛情・保護』と『呑みこむような支配・脅威』の二面性を備えた母性的存在のイメージ。

オールド・ワイズワン(老賢者)……多くの人生経験と知識学習を積み重ねた老賢者のイメージで、『人生を軽やかに生き抜く知恵』と『あらゆる物事に精通した叡智』を象徴している。

シャドウ(影)……自分が受け容れたくないと感じる『自分とは正反対の人生観・価値観・性格傾向』を指し示す影のイメージ。シャドウは『自分が目を逸らしていた価値観・自分が選択しなかった人生の生き方・自分が嫌いだと感じる人間性』を象徴する元型であるが、人間の精神構造には必ずシャドウに対する願望や嫉妬などが生まれるようになっている。自我とシャドウとの統合によって自己実現が促進される。

トリックスター(道化師)……既存の社会的価値観(社会常識)や道徳規範(善悪観)を軽視して秩序をかき乱す痛快なトリックスターの元型。トリックスターは時代の転換期や社会構造の変革期に人々の無意識に登場しやすい元型であり、今まで『正しいとされてきた規範意識』に抵抗して『新たな時代の価値基準』を確立するかのような動きを見せることがある。
トリックスターは、単純な『秩序の破壊者』として出現することもあるが、『新秩序の確立者』として敢えて既存の規則や常識を嘲笑するような挑発的態度を取ることもあり、大衆のトリックスターの元型が特定個人に投影されると英雄的な革命者や個性的な変革者が現実社会で擁立されることになる。

アニマ……男性の中に生起する理想的な女性イメージ。

アニムス……女性の中に生起する理想的な男性イメージ。

セルフ(自己)……『自己実現(個性化の過程)』のプロセスや目標の状態を指し示す元型で、意識領域と無意識領域を含む精神世界全体の中心にあるとされる。セルフとは、本当になりたい自分のイメージであり、自分らしく生きる人生の象徴であり、あらゆるコンプレックスや葛藤から解放された理想の自我アイデンティティの境地を指し示している。

プエル・エテルヌス(永遠の少年)……瑞々しい美しい身体と清浄で穢れのない精神を持っていて、その若々しいエネルギーと形態を永遠に保持しようとする元型。無邪気で天真爛漫な少年のイメージとして現れ、『身体の老化(年齢相応の人間関係・社会活動)』や『精神の成熟(社会の価値観への迎合)』に延々と抵抗していつまでも子どものアイデンティティを持ち続けようとする。



posted by ESDV Words Labo at 22:53 | TrackBack(0) | し:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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