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2008年11月22日

[ミラノ派の家族療法の循環的質問法]

ミラノ派の家族療法の循環的質問法

家族療法(family therapy)は、家族成員の間のコミュニケーション(言葉・行動・態度)が相互に影響を与え合っているという『家族システム論』の前提に立っている。家族システム論というのは、家族を個人(要素)が集まって相互作用を及ぼしあう『一つのシステム(集合体)』と見なす仮説であり、『システムとしての家族』では『家族のメンバーが一人でいる時』には見られない反応や症状が現れてくることがある。家族療法では家族成員ひとりひとりの精神病理やパーソナリティ(性格特性)よりも、各メンバーが他のメンバーにどのような影響(良い影響・悪い影響)を与えているかが重視される。

フロイトの精神分析では、幼少期のエディプス・コンプレックスへの固着や正常な精神発達を疎外する心的外傷(トラウマ)が『精神症状の原因』と仮定されている。問題状況へのエクスポージャー(曝露)を重視する行動療法でも、『適切な学習機会の欠如・過去の間違った学習(条件づけ)』が『現在の問題・症状の原因』になっていると考える。

精神分析や行動療法の病理学・人間観には、『過去の原因』があって『現在の結果(精神症状・不適応・問題行動)』があるという直線的な因果律が採用されている。しかし、家族療法の特徴の一つは、『特定の家族ひとり』に何らかの原因(性格や考えの偏り・トラウマ・学習の欠如)があって、家庭問題が悪化しているというような『直線的な因果律』でケースを考えないということにある。

家族療法の基本的な理論は、原因と結果の対応を一対一で特定できるとする『直線的な因果律』ではなく、原因と結果が相互にフィードバックして影響し合っているという『循環的な因果律』を前提にしている。つまり、『ある家族メンバーの行動(発言)』は『他の家族メンバーの行動(発言)』の“原因”になっているが、それと同時に『ある家族メンバーの行動』は『他の家族メンバーの行動』によって引き起こされた“結果”でもあるということである。家族メンバーがそれぞれに影響を与えて影響を受けているという『循環的な因果律』に基づくと、家族ひとりの問題や性格を改善したとしても家族全体のシステマティックな問題を解決に導くことはできないという結論になる。

家族療法にはボーエンの学派や戦略学派などさまざまな学派があるが、イタリアのセルヴィニ・パラツォーリが創始した家族療法の学派を『ミラノ派(システミック派)』という。セルヴィニ・パラツォーリのミラノ派では、特に家族システム論の相互作用性が意識されている。家族の中で『問題を持つ特定の人(悪者・病者)』を探すのではなく、家族メンバーがそれぞれ他のメンバーに対してどのような役割を請け負っているか、どんな心理的影響を与えているのかを重視している。

パラツォーリは『循環的質問法』と呼ばれる臨床的な質問法を開発して、家族面接の中で『自分が他の家族にどんな影響を与えているか・いつも家族にどんな言葉をかけてどんな態度をとっているか』を意識化させようとしたが、この循環的質問法によって『家族問題を生み出す相互作用(コミュニケーション)のパターン』が浮かび上がってくるのである。システムとしての家族における問題・症状を解決していくには、家族メンバーそれぞれが『家族における自分の役割』を自覚して、『自分が他の家族に与えている悪影響』を修正していかなければならない。

また、パラツォーリは家族の問題や症状は『家族システムの平衡化・安定化』としての作用を持っていると考え、急激に家族ひとりの問題(症状)だけを解決しようと焦ると家族システムのバランスが崩れて余計に問題が複雑になると述べている。そのため、ミラノ派の家族療法では日常的な家族間のコミュニケーションにまずは『肯定的な意味づけ(positive connotation)』をすることが原則となっており、『急速な変化を避ける現状維持』のような外観をとりながら漸進的に問題状況を解決しようとするのである。



posted by ESDV Words Labo at 01:14 | TrackBack(0) | し:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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