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2009年01月31日

[J.クリステヴァの『テクスト論』とF.ソシュールの言語論]

J.クリステヴァの『テクスト論』とF.ソシュールの言語論

構造主義の言語学では、フェルディナンド・ソシュール(Ferdinand de Saussure, 1857-1913)が同時代の言語の構造・規則を研究する『共時的研究』を行った。ソシュールは言語を『ラング(文字言語)』『パロール(音声言語)』に分類して考えたが、哲学的な記号論の対象となるのは文字で書かれたラングである。書かれた文章のことを『エクリチュール』と呼ぶこともあるが、ソシュールは言語体系を『差異の体系』と捉えて、通時的研究に基づく言語のイデア性(本質論)や進歩主義を否定した。

『差異の体系』とはある言語とある言語が異なることによって『言葉の意味』が確定されるという考え方であり、『ある言語(記号)』と『ある対象・意味』との結びつきは社会的な合意によって決まる恣意的なものに過ぎない。『りんごという言葉』と『りんごという対象』の結びつきは必然的・決定的なものではなく、社会的な合意・慣習によって恣意的にそう確定されたに過ぎないという考え方であり、それは言語集団が異なれば“apple”という単語が“りんごという対象”に結びつくことからも明らかであると言える。

フェルディナンド・ソシュールの言語哲学は『言語構造の恣意性』を前提としており、ラング(文字言語)を構成するシーニュ(文字・記号)を『シニフィエ・シニフィアン』の二元論の静的構造の観点から分析したのである。シニフィアン(signifiant)とは『対象を指示するもの・能記』であり文字・記号のことを意味している。シニフィエ(signifie)とは『記号に指示されるもの・所記』であり記号が指示する対象・意味のことを意味している。シニフィアンは『記号表現』でありシニフィエは『意味内容』であるが、ソシュールは言語体系について静的な二元論の構造主義を提起した。

ポスト構造主義を展望したジュリア・クリステヴァ(Julia Kristeva,1941-)は、ソシュールの構造主義の言語哲学に『運動−生成のダイナミズム』として彼女独自のテクスト論(テキスト論)を導入しようとした。J.クリステヴァはブルガリア出身のフランスの文芸評論家・哲学者であるが、『アラン・ソーカル事件(1994-96)』ではアラン・ソーカルから哲学論文に数学・自然科学の用語・概念(数理)を不適切に誤った使い方で流用しているという厳しい批判を受けている。

J.クリステヴァはテクスト(一定のまとまりを持つ文章)を言語(ラング)の秩序を再構築する『超言語的装置』と見なし、シニフィアン(言語記号)のズレから記号の解体と自己増殖を実現できると考えていたが、テクストはこういった『破壊−再構築』を通してある種の生産性を生み出すという。ラング(言語)はシニフィアンのズレやコミュニケーションの意図などによっていったん『解体(破壊)』されるが、テクストの生産性や相互作用(相互置換)によって『再構築』されることになる。

J.クリステヴァはテクストが他のテクストと対話(作用)すること、各種の引用を通して時間軸の異なるテクストが相互置換されながら意味を産出していくことを『間テクスト性(inter-textualitee)』と定義した。『間テクスト性』はJ.クリステヴァの言語哲学で最も重要な概念の一つであるが、簡単に言えばテクスト同士の対話(相互作用)や引用によって生産性が実現するということであり、創作家(文芸家・作家・哲学者)であれば『エクリチュールとしてのテクスト』と『創作家の心理』との間で間テクスト性の相互作用が起こってくるのである。



posted by ESDV Words Labo at 21:43 | TrackBack(0) | て:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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