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2009年01月31日

[J.クリステヴァの『テクスト論』と不完全なテクストが持つ流動的な生産性]

J.クリステヴァの『テクスト論』と不完全なテクストが持つ流動的な生産性

『ジュリア・クリステヴァの項目』の続きになります。J.クリステヴァはS.フロイトやJ.ラカンの精神分析理論に内在する精神構造論の影響を受けているとされるが、それ以外にもソシュールの言語論(パラグラマティスム)や20世紀初頭のロシアの文学批判運動であるロシア・フォルマリズム、ミハイル・バフチンの創作的な対話主義にも感化されたようである。

J.クリステヴァはS.フロイトの潜在夢を分析する『夢分析(夢判断)』やソビエト連邦(ソ連)の言語学者シャウミャン『ジェノタイプ(遺伝子型)・フェノタイプ(表現型)』の遺伝学的二元論に影響を受けて、著書『セメイオチケ』表層テクスト(pheno-texte)深層テクスト(geno-texte)の二元論を展開した。

『表層テクスト(フェノ・テクスト)』とは言語現象として出現する具体的な音声(ことば)や文字のことであり、『深層テクスト(ジェノ・テクスト)』とは表層テクストを生み出すテクストの生成力・根本原理のことを意味している。J.クリステヴァはフロイトの『夢分析』を参考にして、超自我の検閲(抑圧)を受けている『顕在夢』から『潜在夢』の意味・象徴を精神分析で取り出すことができるように、言語学・記号論においても『表層テクスト(フェノ・テクスト)』を分析・解釈することによって『深層テクスト(ジェノ・テクスト)』の内容・生成力を取り出すことができると考えた。

J.クリステヴァが構想した深層テクスト(ジェノ・テクスト)から表層テクスト(フェノ・テクスト)への変換過程を分析・解釈する方法論のことを『記号分析(セマナリーズ)』と呼んでいる。精神分析の『無意識・エス(イド)』に相当する深層テクストとは、コード(記号)の無い差異化・微分化のプロセスを意味しているが、クリステヴァは深層テクストによって人間の生物学的・根本的な『欲動(精神分析の文脈では性的リビドー)』が差異化されていると考えた。人間の生物学的な欲動が最も的確かつ効果的に反映されるのが『詩的言語』であり、クリステヴァは『詩的言語』とは深層テクストが身体的欲動(本能的欲動)を抑圧した結果として生まれる『記号象徴態(ル・サンボリーク)』として理解していた。

J.クリステヴァは、テクストを間テクスト性の相互作用を受ける『生産性の象徴』と解釈したが、哲学者・文芸批評家ロラン・バルト(Roland Barthes,1915-1980)も、『テクスト』は単一の真理や意味の結論を持たない『遊戯的な生産性』を持つものと定義している。

文芸・哲学など『作品(work)』としての完成度を高めることによって言語空間は『閉じてしまう』ことになるが、『テクスト』は一つの作品としての完成度が極めて低く、間テクスト性によって言語空間が『他のテクストに向けて開く』ことになるのである。不完全で流動的な特徴を持つ『テクスト』は、他者のテクストや他の言説のテクストの相互作用を受ける可能性があり、その『流動的な変化発展の可能性』こそが『テクストの生産性』をダイレクトに生み出す要因なのである。



posted by ESDV Words Labo at 22:00 | TrackBack(0) | て:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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