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2009年02月05日

[W.ライヒの性格分析と性格のよろい(character armor)]

W.ライヒの性格分析と性格のよろい(character armor)

オーストリアの精神分析家ウィルヘルム・ライヒ(Wilhelm Reich, 1897-1957)は、『性の全面的な解放』によってあらゆる精神疾患(神経症・精神病)と社会的問題(犯罪・戦争)が解決できると考えたラディカルな性一元論の唱道者であった。しかし、20世紀前半の性道徳が厳しいヨーロッパやアメリカで、ライヒの『性の解放』によるユートピア理論が受け容れられる余地は無かったし、ライヒの性欲の充足・他者との結合のみを過剰に重視する思想は現代の自由社会でも認めることが難しい。

アメリカに渡った晩年のW.ライヒは精神に変調を来たして、『オーゴン・エネルギー』という神秘的なオルガズムを生み出す宇宙エネルギー(細胞レベルにまで充満する生命エネルギー)の存在を信じるようになり、オーゴン・エネルギーを集めるという擬似科学的なオーゴン・ボックスを販売して薬事法違反で検挙されることになる。その裁判の過程で荒唐無稽な暴言を吐いたライヒは法的侮辱罪に問われ、不遇な最期を獄中で迎えてしまうことになったのだった。ライヒは投獄中にも、『世界で一番自由な学校(フリースクール)』の建設を目指したイギリスの教育者A.S.ニイル(Alexander Sutherland Neill, 1883-1973)に対して教育分析を行っている。A.S.ニイルは生徒に対して授業への参加を強制しないが、自分の行動基準を自律的に確立することを求める『サマーヒル・スクール』という民主的なフリースクールを建設したことで知られている。

W.ライヒの精神分析理論における大きな功績の一つが、自我防衛機制を重視して自我心理学への発展の道筋を作ったことであるが、ライヒは共産主義者であり精神分析とマルクス主義の理論的統合(統合的な実践可能性)を探求していた。人間の性欲を社会的抑圧から解放するための革命運動を起こすべきだという『性革命理論』も、マルクス主義のプロレタリア革命(労働者革命)のメタファーとして生み出されたものである。ライヒが異常なまでに性の欲求・解放の理論化(目的化)にこだわった背景には、幼少期に自分が母親の不倫を父親に密告したことで、両親が自殺する結末を迎えてしまったという苦痛なトラウマ(心的外傷)があると考えられている。

W.ライヒの著書『性格分析(1932)』では、類型論(タイプ論)としての性格分析ではなくて、『振る舞い分析・行動分析(behavior analysis)』による性格の全人的な理解が進められており、ライヒは性格分析の材料として『非言語的メッセージ・非言語的コミュニケーション』を重視したのである。ライヒは、クライエントの日常的な態度・口調・振る舞い(ジェスチュア)を注意深く観察することで『性格抵抗』を発見した。性格抵抗とは、分析家の解釈や忠告に対する性格に由来する抵抗であるが、外界の情況や他者の反応に対する習慣化した性格的な抵抗のことも意味している。

ライヒはクライエントの日常的な態度・口調・振る舞い(ジェスチュア)を観察する精神分析(性格分析)の面接技法において、『クライエントが何(どんな内容)を話したか』ではなく『どのようにそれを話したか』という振る舞いに着目することで無意識的願望を分析したのである。『性格のよろい(character armor)』というのは、性格分析の面接プロセスにおいて浮かび上がってくる自我を苦痛や不安から防衛するための性格特性であり、そういった自我防衛機制のパターンが『自我親和的(違和感のない状態)』として習慣化(常態化)したもののことを指している。

W.ライヒは『性格のよろい』が幼少期の親子関係の中で形成されると仮定したが、その原点は、親から嫌われないように(怒られないように)親の期待に応えられる仮の性格を作り上げようとすることにあり、現在のアダルトチルドレンの成立過程との類似点も見られる。親から十分な愛情や保護を与えられなかったために『子どもらしい子ども時代』を過ごせなった人は、親や他者から傷つけられたり否定されたりしないように優等生的な振る舞いで自我を防衛する『性格のよろい』を何重にもまとってしまうことがある。

『性格のよろい』をまとってしまうと、『本来の自分の性格・考え方』を表現できなくなってしまうため、欲求・感情が過度に抑圧されて精神疾患(神経症)を発症してしまうことがある。精神疾患を発症しないとしても、社会環境(人間関係)に適応しにくい抑うつ的な自信のない心理状態(ストレスを感じやすいパーソナリティ)に陥ってしまうことがあるので、『性格のよろい(習慣化した性格抵抗)』を性格分析で発見して改善していくことが望ましいということになる。



posted by ESDV Words Labo at 13:22 | TrackBack(0) | せ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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