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2009年02月05日

[K.レヴィンの生活空間(life space)と行動の基本原理]

K.レヴィンの生活空間(life space)と行動の基本原理

ゲシュタルト心理学の研究者クルト・レヴィン(Kurt Lewin, 1890-1947)は、『葛藤(conflict)』の類型論(3つのパターン)を提唱したことで知られる。レヴィンは、葛藤は『接近−接近(欲しいものと欲しいものでどちらかを選ばなければならない葛藤)』『接近−回避(メリットを得るために必要なデメリットがあるという葛藤)』『回避−回避(嫌なものと嫌なものでどちらかを選ばなければならない葛藤)』の3つのパターンに分類することができると考えた。

K.レヴィンは人間の行動を決定する基本原理として『生活空間(life space)』を考案したが、生活空間とは人間と環境が相互作用することで行動が生起する全体的な空間・事態のことである。レヴィンは人間の行動が動機づけや欲求によって生み出されるという『力動論(力動的心理学)』の前提を採用した。しかし、フロイトの精神分析の力動論とは違って『性(性的欲動としてのリビドー)』『無意識(抑圧された性欲・願望)』を人間の行動の規定要因とは認めなかった。

K.レヴィンは人間の行動の一般法則(普遍的原則)を、トポロジーやベクトルといった数学的概念を応用して解明しようとしたが、レヴィンが精神分析の『性』に代わって重視したのが『生活空間』だったのである。人間の行動(B:Behavior)は、人間(P:Person)と環境(E:Environment)のシンプルな関数として理解できるという確信を持っていたレヴィンは、B=f(P, E)という関数を生活空間として提案した。しかし、人間(P)と環境(B)を構成する具体的な要因・変化を数量化することは基本的に不可能なので、B=f(P, E)という生活空間の関数は飽くまで数理的なモデルの考案というレベルに留まっている。

レヴィンの生活空間のアイデアは『場の理論(トポロジー理論)』とも呼ばれる。『場の理論』の建設的な意義は、人間の行動が『生理的な欲求・本能的な願望』という動機だけで決まるわけではないことを示し、『環境の変化・他者の反応』といった環境要因との相互作用によって人間の行動が規定されることを説明した点にある。レヴィンは生活空間の『安定した均衡』の崩れによって人間の行動が生起しやすくなるとしたが、ここでは人間は安定した均衡を取り戻すことを目的にして行動するというモデルが採用されている。

つまり、喜怒哀楽の感情といった『人間(P)』の要因が変わったり、他者や情況の変化といった『環境(E)』の要因が変わった時に、均衡回復のための新たな『行動(B)』が生起してくるということである。生活空間は『経験・知識』の積み重ねによって体制化が促進され、適応的な認知の分節化(多様化)が進んでいくことになる。この経験的な学習効果は、生活空間が高度に分節化されて認知が柔軟になるほど、『実際的な行動のレパートリー(選択肢)』が増えることを意味している。生活空間は『有用な経験・知識』が増えるほどに豊かさや適応性を増していくことになり、『ステレオタイプな硬直した反応』から『クリエイティブで柔軟な行動』への転換が起こってくるのである。

posted by ESDV Words Labo at 13:56 | TrackBack(0) | せ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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