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2009年02月27日

[司法精神鑑定(psychiatric evidence)と司法精神医学]

精神鑑定(psychiatric evidence)と司法精神医学

精神鑑定(psychiatric evidence)とは精神科医・心理学者・家裁調査官など精神の問題に関わる専門家が、被疑者(被告人)の心理状態や精神疾患(精神障害)の有無、責任能力(判断能力)のレベルを調査して鑑定書を作成するというものである。広義の司法鑑定の一つとして『精神鑑定』は位置づけられるが、精神鑑定には『司法精神鑑定』『精神衛生鑑定』の二種類がある。司法精神鑑定には、刑法・刑事訴訟法の規定に基づく『刑事精神鑑定』、民法・民事訴訟法の規定に基づく『民事精神鑑定』、少年法の規定に基づく『家事審判上の精神鑑定』がある。

精神鑑定の経緯が世間で注目を集める時には、重大犯罪における『心神喪失(しんしんそうしつ)・心神耗弱(しんしんこうじゃく)の問題』が取り扱われていることが多く、心身喪失で刑事責任能力が無いということになると被告人は無罪となり刑罰を科すことができない。心神喪失による刑の免除と心神耗弱による刑の減刑は『刑法39条』に規定されているが、その条文はシンプルに『1.心神薄弱者の行為はこれを罰せず,2.心神耗弱者の行為はその刑を減軽す』となっている。刑法39条に関係する刑事責任能力の有無や程度を主に鑑定するのが司法精神鑑定である。

『刑法41条』には『14歳に満たない者の行為は、罰しない』という規定があり、14歳未満の触法少年も法的な責任能力がないと見なされて処罰されることはない。非行少年の具体的な法的処遇については、[少年法(juvenile law)と少年審判(juvenile inquiry and determination)][少年鑑別所・少年院(juvenile training school)・少年刑務所(juvenile prison)]の項目を参考にしてください。

心神喪失者・14歳未満の少年は責任能力が無い『責任無能力』と見なされ刑罰が科されることはなく、心神耗弱者は責任能力が著しく減退している『限定責任能力』と見なされて刑罰が軽減されるということであるが、司法精神鑑定では被鑑定人(被告人)の責任能力を『是非・善悪の判断能力』『善悪判断に従う行動の制御能力』という二つの基準によって鑑定することになる。

『心神喪失』とは精神の障害等により事物の理非善悪を弁別(判断)する能力がないか、または、この弁別(判断)に従って行動を制御する能力が無い状態のことであり、『心神耗弱』とは善悪の弁別判断能力と判断に従う行動制御能力が著しく減退している状態のことである。

精神科医・心理学者などの鑑定人が被鑑定人を検査・面接して作成した『精神鑑定書』及び『鑑定人の意見』は、裁判所(裁判官)の判断を拘束するものではないが、その鑑定書の内容を否定すべき特段の理由がない限りは裁判所はその参考意見(鑑定内容)を十分に尊重して判決に活かさなければならないとされる。刑事精神鑑定では、被告人が犯行を実行した時に、責任能力があったのか否か(刑事責任能力の問題)、起訴された被告人が訴訟を続行して裁判を受ける訴訟能力があるか否かが主な鑑定項目となる。

起訴される前の取り調べの段階で、検察官から委託される『起訴前鑑定』というものもあるが、『司法精神鑑定』というのは起訴後に裁判所の命令によって実施されるものである。弁護人・検察官が自分たちの主張・見解を実証的に補強するために、個別的に専門家に対して精神鑑定を依頼するケースもある。起訴前鑑定には、1回だけの面接で結論を出す『簡易検定』と数ヶ月の調査を行ってから結論を出す『本鑑定』とがある。

裁判所の命令によって行われる司法精神鑑定の具体的な内容は公開されないが、一般的に『裁判記録・被鑑定人のプロフィール(成育歴・家庭環境・学校歴・性格傾向・前科)』にしっかりと目を通してから鑑定が行われる。司法精神鑑定は『面接法・観察法・家族面接・心理アセスメント(各種の心理テスト)・医学的検査(血液検査・脳波測定・MRIなど)』によって実施される。

精神鑑定には裁判とは関係がないものもあり、精神保健法の18条・19条・27条などに基づく鑑定を『精神衛生鑑定』という。精神衛生鑑定とは、都道府県知事の命令を受けた精神保健指定医が実施するものであり、『精神障害の診断・入院の必要性・措置入院(強制入院)の判断』などを行うものである。自傷他害の危険が強いために『措置入院』しなければならないと判断する場合には、精神保健指定医2名以上の診断結果が必要である。患者の人権保護と医師の誤診回避のために、1名の精神科医だけの診断・鑑定結果では強制的な措置入院をさせることはできない。

posted by ESDV Words Labo at 06:54 | TrackBack(0) | せ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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