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2009年03月04日

[精神神経症(psychoneurosis)と現実神経症(realistic neurosis)][精神測定(psychometrics)]

精神神経症(psychoneurosis)と現実神経症(realistic neurosis)

精神分析の創始者であるジークムント・フロイトは、神経症(neurosis)を精神神経症と現実神経症に分けて考えた。精神神経症(psychoneurosis)とは『現実的・外部的な原因』が無いのに発症する神経症のタイプであるが、精神神経症の原因は本人も自覚することが困難な『内的・無意識的な葛藤』であると推定されていた。古典的な精神分析療法が主要な分析対象にしていたのが、無意識的願望の道徳的抑圧によって発症するこの精神神経症である。

精神神経症は『自分の性的欲求・情動を伴う願望』を無意識領域に抑圧することによって発症するのだが、抑圧・否認された無意識的欲求(願望)は心身症状へと転換されることになる。自分の自然な情動や願望を『超自我(良心・道徳規範)』の過剰な働きによって抑圧するため、精神神経症の人は強い葛藤・ジレンマを感じることになる。

精神神経症は現代の精神医学の疾病概念に照らし合わせれば、『恐怖性障害・強迫性障害・転換性障害・身体表現性障害・ストレス反応・PTSD(心的外傷後ストレス障害)』などに該当するが、19世紀〜20世紀初頭にはそれらの疾患は神経症の下位分類であるヒステリーとして理解されていた。現実神経症(realistic neurosis)は、外的な原因や現実的なストレス状況が明確な場合に発症する神経症だが、現実神経症は精神神経症よりも内的世界における葛藤が少ないとされる。

しかし、現在の精神医学では『内的原因を重視する精神神経症』と『外的原因を重視する現実神経症』を区別することは無くなっており、現象学的・操作主義的な疾病分類であるアメリカ精神医学会のDSM‐Wなどによる客観的な分類・診断が行われている。DSM‐WやICD‐10などによる精神障害の診断では、複数の精神科医の診断名(診断結果)が一致しやすいという特徴があり、精神病理学の現象学的な共通言語としての機能を果たしている。

精神測定(psychometrics)

精神測定(psychometrics)とは、『人間の心の要素である感覚・知覚・思考・感情・行動・性格』などを客観的かつ数学的に把握して測定することができるという考え方のことであり、精神測定は科学的な要素還元主義に立脚している。精神測定の考え方の源流は、19世紀のE.H.ウェーバーやG.T.フェヒナーの『精神物理学』、アルフレッド・ビネーやテオドール・シモンの『知能テスト』、ウィルヘルム・ヴント(1832-1920)がライプチヒ大学に心理学実験室を開設して(1879年)始めた『実験心理学』などにまで遡ることができる。

精神物理学や実験心理学が研究の対象にしたのは『感覚・知覚』といった測定しやすい単純な精神機能であり、精神遅滞児童(知的障害児)をスクリーニングして適切な療育を受けさせるために開発された『ビネー式知能テスト』で測定できるのも『知能指数(IQ)』という分かりやすい知性(言語・記憶・図形認識・計算)の側面だけである。精神測定は、人間の精神機能を要素に分解して“数値化・数量化”するという特徴があるが、実際に精神機能の強さや能力を数値で測定する場合には環境条件を統制した『実験・観察』を行うことになる。

実証主義的な自然科学(物理学・化学)をモデルにした精神測定学(精神測定)は、研究対象となる精神機能(心の要素)を数量化することによって成り立つが、『数量化できない複雑な精神機能(直接観察できない心の要素)』については測定することができないという欠点を持っている。客観的な観察や実験が可能な『行動』のみを研究対象とする行動主義心理学(行動科学)は精神測定と相性が良いのだが、主観的な感情や思考、表象(イメージ)を研究対象にしている精神分析や内観法の心理学には精神測定をそのまま適用することは難しい。

つまり、客観的に観察することが不可能な『内的要因・思考内容・感情の状態・価値判断・推測や計画』は基本的に精神測定の対象にはならず、精神測定を行うためには実験法・観察法によって条件や基準を設定できるものでなければならない。

posted by ESDV Words Labo at 12:20 | TrackBack(0) | せ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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