ヒトの性ホルモン(sex hormone)と性徴・生殖・メンタルヘルス
性ホルモン(sex hormone)は『第二次性徴・性的欲求・精神状態・生殖機能』に関係するステロイドホルモンで、生殖能力と性的魅力を持つ『男らしい身体・女性らしい身体』の発育を促進する作用を持つ。男性と女性の生殖腺と生殖器(性器)による生物学的性差を『第一次性徴』というが、10代半ば以降の思春期以降に発生する明確な身体の性差を『第二次性徴』と呼ぶ。
第二次性徴の特徴である『初潮(排卵)・精通(精子生産)・男性の筋肉質(ゴツゴツした身体)・女性の脂肪質(丸みのある身体)・陰毛・腋毛・男性の声変わりやひげ・女性の乳腺発達・性器の成熟(卵巣・子宮・精巣・陰茎の成熟)』は、性腺からの性ホルモンの分泌によって促進される。性ホルモンには、男性ホルモンと女性ホルモンの区別があるが、元々の原材料は化学構造が近似したステロイドホルモンであり、男性ホルモンが化学変化することで女性ホルモンとなる。男性ホルモンは『アンドロゲン(テストステロン)』であり、女性ホルモンには『エストロゲン(卵胞ホルモン)』と『プロゲステロン(黄体ホルモン)』の二種類がある。アンドロゲンが極端に欠乏すると、男性の精子の受精能力が失われることもあるし、エストロゲンが極端に不足すると、生理不順や無月経になって排卵が起こらないこともある。
これらの性ホルモンは性腺に作用することで、精子・卵胞の成熟を促進したり、妊娠の成立・維持を実現したりするが、性ホルモン分泌を調整する中枢は『視床下部(Hypothalamus)』である。視床下部は内分泌器官の脳下垂体(pituitary gland)をコントロールしているが、脳下垂体は腺性下垂体(下垂体腺葉)と神経性下垂体(下垂体神経葉)の構造に分類される。腺性下垂体は更に『前葉』と『中葉』に分けられ、神経性下垂体は『後葉』と呼ばれる。生命維持や生殖に重要な役割を果たしている脳下垂体は、『前葉・中葉・後葉』の3つの部位に分類することができるのである。
視床下部から『性腺刺激ホルモン放出ホルモン (LH-RH)』が分泌されて脳下垂体に送られると、脳下垂体では『性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)』が産生・分泌されることになる。脳下垂体の前葉からは、LH(黄体形成ホルモン,luteinizing hormone)、FSH(卵胞刺激ホルモン,follicle-stimulating hormone)などの性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)が分泌されるが、このゴナドトロピンによって性腺(精巣・卵巣)が刺激される。そして、性腺からアンドロゲン(男性ホルモン)・エストロゲン・プロゲステロン(女性ホルモン)などの性ホルモンが産生・分泌されることになる。
精子や卵胞の発達段階によって性腺が必要とする性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)の量は異なるので、性ホルモンが視床下部にネガティブフィードバックして分泌量が調節されている。生理(月経)を調整する女性ホルモンは、精神状態(気分・感情の変化)とも深い相関関係があり、女性ホルモンが過剰になったり不足したりすると、『PMS(生理前症候群)・PMDD(生理前不快気分障害)』など抑うつ感やイライラ(不機嫌)、不安感、集中力低下、吐き気を伴う精神疾患が発症することがある。女性の閉経前後には、情緒不安定になったり自律神経失調症の症状が出てくる『更年期障害』も発症しやすくなるので注意が必要である。

