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2009年04月13日

[交流分析(TA)の早期決断(early decision)]

交流分析(TA)の早期決断(early decision)

エリック・バーンが創始した交流分析(transactional analysis)には、『自分がどのような性格の人間であり、どういった人生を生きていくのか?』という大まかな人生計画を自己記述する『人生脚本』という概念がある。私たちの人生の大まかな枠組みや展開は『人生脚本の粗筋(あらすじ)』によって支配されている側面があるが、『自分の人生を不幸にするような内容のネガティブな人生脚本』『自分の人生を幸福にするようなポジティブな人生脚本』へと書き換えていくのが交流分析における『脚本分析』の大きな目標となっている。

自分で自分の価値や幸福を破壊してしまうような『ネガティブな人生脚本』の原点はどこにあるのかを考えていく時、エリック・バーンはその原因が『発達早期(幼少期)に親から与えられる禁止令』『禁止令を承諾する早期決断(early decision, childhood decision)』にあるのではないかと考えた。『禁止令(injunctions)』というのはフラストレーション状況にある親が、幼少期の子どもに与えてしまう『〜するな,〜してはいけない』という形を取る不合理(理不尽)な禁止命令のことである。

子どもの心身の発育に悪影響を与える種類の『禁止令』は、『両親の子どもの自我状態(エゴグラムにおける「C」)』から発せられるもので、『子どもの幸福・喜び・自信・安心・愛情を否定する内容の禁止命令』になっている。エリック・バーンは『生存するな・成長するな・楽しむな・所属するな・健康であるな』などの自己破壊的な禁止令を『魔女の呪い』と呼んだが、自己否定的な人生脚本を今までの人生で作り上げてきたクライアントは、この魔女の呪いとしての禁止令を受け容れてきたという過去がある。

幼少期(発達早期)の子どもが親から与えられる『理不尽な禁止令』は、『言語的メッセージ(話し言葉)』よりも『非言語的メッセージ(表情・態度・ジェスチュア)』で伝えられることが多く、子ども本人にも明確な禁止令の内容が把握できないことが多い。

『緊張・不安・悪意・不信』などが渦巻いている機能不全家族では、無力な子どもは家族関係を調停して何とか生き残るために、葛藤しつつも最終的には『禁止令』を受け容れて生活する決断を否応なしに下すことになる。発達早期の親子関係(家庭環境)の中で、『自分の家庭内での役割・自分の人生の大まかな方向性』について決断することを『早期決断(early decision)』というが、早期決断をすることで『人生脚本の前提・基盤』が書かれることになる。

早期決断には『自己肯定的で他人を信頼して将来に希望を持てるポジティブな子どもの決断』もあれば、『自己否定的で他人を信頼できず将来に絶望するネガティブな子どもの決断』もある。極端にネガティブな早期決断に基づいて人生脚本を書き始めると、『アダルト・チルドレンの問題』によって社会生活や対人関係に困難を感じることが多くなってくるし、自分で自分の能力や努力を信じられなくなり、他者との安定した信頼関係を築くことが出来なくなる。

漠然とした生きづらさや心理的な苦痛を感じるアダルト・チルドレンには、『ネガティブな早期決断(禁止令の受容)』が関係していることが少なくないが、子供が子供らしく遊んで楽しむことができる『自由かつ安全な家庭環境』を整備することが大切である。大人に成長したアダルト・チルドレンのケースでは、『将来悲観的・自己否定的な人生脚本』をもっと適応的な内容に修正していく必要があるが、その時には、イメージや物語的な対話を通じて『子ども時代の自分』を思い浮かべ、『自己否定的な早期決断』を明確に拒絶するという方法が有効である。

『子ども時代の自分』のイメージを心の中に想起して、その子ども(過去の自分)の苦しみや傷つき、孤独感などを優しくケアしていき、『今・ここからの自分の人生』に新たな人生脚本の内容を肯定的な文章で書きつけていくのである。こういった子ども時代の『悲観的な早期決断』を改めて書き直すという技法は、ゲシュタルト療法の『再決断療法』の仕組みとも共通したものであり、『子ども時代の負の遺産(子ども時代の感情的・認知的なわだかまり)』を切断して、自律的・安定的な精神構造を再建するという効果がある。

posted by ESDV Words Labo at 20:16 | TrackBack(0) | そ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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