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2009年04月29日

[メラニー・クラインの早期発達論:妄想‐分裂態勢における羨望(envy)と嫉妬(jealousy)]

メラニー・クラインの早期発達論:妄想‐分裂態勢における羨望(envy)と嫉妬(jealousy)

英国・対象関係論の祖でクライン学派を起こした女性分析家のメラニー・クライン(Melanie Clein, 1882-1960)は、幻想的無意識に基づく早期発達論を呈示した。発達早期の乳幼児は『生の本能(エロス)』『死の本能(タナトス)』によって、幻想的な精神内界における対象関係(自己と対象との関係)を作り上げていく。正統な精神分析では、現実の家族関係や生活経験によって段階的に対象関係が形成されると考えるが、M.クラインの対象関係論では『生得的な生と死の本能』の外界への投影によって対象関係が自然に形成されると考えるのである。

乳幼児の内面にある『生得的な幻想世界』は、自分の原始的本能を外部の対象に反映させた『妄想的・分裂的な世界』であり、乳幼児は他者をまとまった一つの人格としての『全体対象』として認識することができない。その為、生後1年くらいまでの乳幼児にとっての母親・他者は、部分的な特徴や機能だけを反映した『部分対象』として認識されることになり、全体対象は『良い部分対象』『悪い部分対象』とに分裂する。

発達早期の乳幼児は現実検討能力が発達していないので、一つのまとまった人格の中に『良い部分(愛情・保護・優しさ)』と『悪い部分(敵意・無関心・不機嫌))』の両方があることを理解できず、全体対象(一人の人間)を『良い部分対象』と『悪い部分対象』というように二分法的に分裂させて認識してしまうのである。生まれたばかりの乳幼児は『分裂(splitting)・取り入れ(introjection)・投影同一化(projective identification)』といった原始的防衛機制を用いて未熟な自我を防衛するが、全体対象(人間・物事)を善悪の二つに綺麗に分けてしまう防衛機制が『分裂(スプリッティング)』である。

メラニー・クラインは発達早期の乳児の発達段階として、『妄想‐分裂ポジション(生後0ヶ月〜3‐4ヶ月)』『抑うつポジション(生後4ヶ月〜1歳頃)』を仮定したが、妄想‐分裂ポジションが抑うつポジションへと移行することによって、“非現実的な部分対象”“現実的な全体対象”へと統合されていく。妄想‐分裂ポジションでは、妄想的な迫害・攻撃に対する不安を強く持っているが、『死の本能(タナトス)』が悪い部分対象に投影されて生まれる負の感情として『羨望(envy)』がある。

死の本能(タナトス)によって生み出されるマイナスの感情体験である『羨望(envy)』に似たものとして『嫉妬(jealousy)』があるが、羨望は“部分対象に対する羨ましさ(うらやましさ)”であり、嫉妬は“全体対象に対する独占欲・ねたみ”のことである。羨望や嫉妬には、タナトスが生成する『破壊衝動・攻撃欲求』などが内在しており、『自分にとって良い対象』を攻撃して傷つけたり貶めたりしようとする傾向が見られる。

メラニー・クラインに関連する記事として、[児童精神医学(child psychiatry)と児童分析(child analysis)][精神分析の心理面接における『解釈(interpretation)』]も参照してみて下さい。

posted by ESDV Words Labo at 15:11 | TrackBack(0) | そ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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