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2009年05月25日

[ソーシャル・スキル・トレーニング(social skills training:SST)]

ソーシャル・スキル・トレーニング(social skills training:SST)

カリフォルニア大学ロサンゼルス校の精神科教授であるロバート・リバーマン(Robert Paul Liberman, 1937-)が開発した基本的なコミュニケーションスキルの訓練法が『SST(ソーシャル・スキル・トレーニング)』である。ソーシャル・スキル・トレーニング(social skills training)は『社会生活技能訓練(社会技能訓練)』と訳されるように、人間関係や社会生活に円滑に適応していくための具体的なトレーニングのマニュアルのようなものである。

SSTの主要な対象になるのは『統合失調症・広汎性発達障害(アスペルガー症候群・自閉症)・社会不安障害(対人恐怖症)・学習障害(LD)・注意欠陥多動性障害(ADHD)』などコミュニケーション技術に問題を抱える精神障害・発達障害のある人である。

しかし、健常者であっても『他者との関わり合い・相互的なコミュニケーション・基本的な社会生活』に何らかの困難や苦手意識を持っている場合には、SSTを実践することで問題が解決することがある。一般的な小中学校の学校教育でも、円滑なクラス運営や友人関係の構築、いじめ問題の予防・解決などを目的にしてSSTが実施されることもあるし、対人緊張が強くて上手く会話ができなかったり自己主張や自己開示が苦手で人間関係が上手く作れないという人にも有効である。

SST(ソーシャル・スキル・トレーニング)は、認知行動療法・コーチング・アサーティブトレーニングの技法とも関係を持っており、最近ではスティーブ・ド・シェイザーやインスー・キム・バーグのソリューション・フォーカスト・アプローチ(SFA)にもSSTの実践的な考え方の一部が取り込まれている。

SSTのトレーニング方法には、現在持っている対人スキルを段階的に引き上げていく『ボトムアップ(bottom up)』、コミュニケーション技術が高い指導者の手本を見てそれを真似して学習する『モデリング(modeling)』、実際のコミュニケーション場面を想定して役割演技・模擬練習をやっていく『ロールプレイ(role play)』などがある。

上記のようなSSTでコミュニケーションに関する学習行動をした後には、次のトレーニングまでの練習課題(宿題)である『ホームワーク(homework)』を出したり、トレーニングの内容に対して肯定的な評価や共感的な支持を与える『フィードバック(feedback)』を行う。

『学習すべきコミュニケーションスキル』を効率的・自主的に獲得するためには、SSTのトレーニングを実施した後に、必ずそのトレーニング内容の『よく出来た部分・上達した部分』を話し合い、肯定的な評価をフィードバックすることが大切である。SSTではフィードバックによって訓練を受ける者に『正の強化』を与えることができ、『次回のトレーニングに対する動機づけ』を高めることができる。

更に、この肯定的・支持的なフィードバックには、対人関係が上手くいかずに自信を失っている発達障害者などに『成功体験・承認体験』をしてもらうという意味合いがあり、このSSTの成功体験によって自尊心や自己肯定感を回復することが期待されているのである。一般的なSSTのプログラムでは『学習課題(習得したい対人スキル)の特定→指導者によるモデリング→ロールプレイを使った実践練習→肯定的で前向きなフィードバック→対人スキル上達のための宿題の提示』といった流れでコミュニケーションスキルのトレーニングを進めていく。

SST(ソーシャル・スキル・トレーニング)は対人関係やコミュニケーションに関する技術・やり方を向上させるためのマニュアルとしての側面を持っている。そのため、『あいさつの仕方・話し方・状況や文脈の理解・相手の気持ちの推測・会話の話題の選び方・場面に適した服装と動作・お礼の仕方・相手の話の上手な聴き方・相手の表情や態度からの感情の推測・対人的な問題解決の方法』などSSTの学習課題やテーマ設定には、膨大な数バリエーションを想定することができる。

posted by ESDV Words Labo at 06:26 | TrackBack(0) | そ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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