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2009年05月28日

[ソーン・スナイダー論争(Thorne-Snyder controversy)とカウンセリング技法の効果]

ソーン・スナイダー論争(Thorne-Snyder controversy)とカウンセリング技法の効果

ソーン・スナイダー論争(Thorne-Snyder controversy)というのは、『指示的技法のカウンセリング(心理療法)』『非指示的技法+折衷主義のカウンセリング(心理療法)』の有効性と貢献性を巡る論争である。『指示的技法(指示的カウンセリング)』というのは、クライアントの悩みや問題に対して『具体的な指示・提案・アドバイス・論駁』をすることで心理的問題を解決しようとする技法である。積極的な態度で『認知・行動の適応的な変容』を促進する認知療法(認知行動療法)や論理療法が、指示的技法に分類される代表的な心理療法であり、最近の心理療法やカウンセリングでは指示的技法のほうが優勢となっている。

非指示的技法(non-directive method)の代表的な技法は、共感的な理解や無条件の受容(尊重)をベースにしたカール・ロジャーズの『クライエント中心療法』である。カール・ロジャーズやアブラハム・マズローなど心理学の第三勢力と呼ばれた『ヒューマニスティック心理学(人間性心理学)』に関連するカウンセリング技法の多くは、非指示的技法(非指示的カウンセリング)に分類されている。

ソーン・スナイダー論争のきっかけになったのは、1944年にF.C.ソーン(F.C.Thorne)が発表した『非指示的心理療法の批判』という論文であり、この非指示的心理療法の有効性を否定するこの論文の内容に反対したW.U.スナイダー(W.U.Snyder)との間に激しい論争が勃発したのである。この論争は、ロジャーズ流の共感的な非指示的カウンセリングには治療効果がないとする『F.C.ソーンの主張』と、クライアントの主体性や実現傾向を阻害する危険性が強い指示的カウンセリング(折衷主義)には有効性が乏しいとする『W.Uスナイダーの主張』がぶつかり合う論争だったが、どちらの技法がより有効性があるのかの結論は現在に至っても出ていない。

現在の臨床心理学・カウンセリング心理学では、どの流派の理論や技法が最も効果があるのか(どの理論や技法には効果がないのか)という議論は殆ど行われていないものの、統計学的根拠を持つエビデンス・ベースドな構造化された認知行動療法(認知療法)が主流になってきている状況がある。とはいえ、現代のカウンセリングや心理療法の実施に際して、心理臨床家の多くはクライアントのニーズや心理状態(精神症状)、目的意識に合わせて理論や技法を適切に選択していくことが最も効果的であるという『折衷主義のスタンス』を取るようになっている。

指示的技法と非指示的技法のどちらか一方だけに有効性や効果があるわけではなく、クライアントのパーソナリティや精神症状の内容、ニーズ(目的意識)によって、『各クライアントにとって最適な理論・技法』が規定されてくるというのが現段階の心理臨床における正確な理解だろう。クライアントのパーソナリティ(性格構造)や精神症状の内容について的確な知識・情報を得るために『心理アセスメント(心理検査)』が用いられることも多いが、指示的技法と非指示的技法のどちらを採用するにしても『クライアントの利益(健康の回復・希望の強化・生活上の適応・自己実現性)』が最優先されなければならない。



posted by ESDV Words Labo at 08:57 | TrackBack(0) | そ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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