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2009年06月16日

[ゲシュタルト療法の『対話ゲーム・ホットシート』]

ゲシュタルト療法の『対話ゲーム・ホットシート』

パールズ夫妻が開発したゲシュタルト療法については過去の記事でも解説してきたが、ゲシュタルト療法には役割演技(ロールプレイング)をする『対話ゲーム(games of dialogue)』という技法がある。対話ゲームでは『自分のパーソナリティの両極端な要素』を見つけ出し、その二つの対照的(両極)な要素や特徴の間で対話をさせることになる。ゲシュタルト療法のカウンセラーは、クライアントが自分の人格や内面にある『スプリット(両極端な分裂)』を発見できるように促進していくのだが、スプリットの内容は人間に限定されない。

ゲシュタルト療法では精神分析と同じように『夢の仕事(夢分析)』が行われることもあるが、その時には夢に登場する『動物・風景・事物・機械』など人間ではない対象(象徴)もスプリットの要素になってくる。夢の中で自分に襲い掛かってきた『クマ』と対話してみたり、今にも暗い海底に沈没しそうになっている『船』の立場に立って言葉を喋ってみたりすることで、『自分の内的世界に抑圧されている感情・記憶・欲求』などが次第に明らかになってきて自己の統合性(本来の自分)に気づきやすくなるのである。

スプリット(対照的な両極の分裂)に基づく対話ゲームでは、主要なテーマとして『強い自分対弱い自分』『勇敢な自分対臆病な自分』『社交的な自分対ひきこもりの自分』『優秀で適応的な自分対劣等で非適応的な自分』などの対話の図式(二つの両極端な要素)が浮かび上がってくることがある。もちろん、上記の『夢の仕事』の例に挙げたように、これらの主要テーマでは『人間以外の動物・モノ』との間で自己洞察につながる有意義な対話が行われることも少なくない。

ゲシュタルト療法では、自分の全体性や統合性を取り戻す為の『体験的(身体動作的)な技法』のことを『エクササイズ(exercise)』と言うが、ホットシートを前提にする対話ゲームというのも実践的なエクササイズの一種である。自分が座っている椅子のことを『ホット・シート』と呼び、ホットシートの前に置いてある誰も座っていない椅子のことを『エンプティ・チェア』と呼ぶことがある。この二つの椅子を活用して、『親・教師・上司・仲間』など様々な立場に立って発言(行動)する『役割演技=対話ゲーム』を行っていく。

自分にとって重要な他者や象徴の立場に立ち、リアリティのある感情の籠もった演技をする『対話ゲーム』によって、カタルシス(感情浄化)やアウェアネス(気づき)の効果を得ることができる。優しいお母さんの役になりきって自分に語りかけたり、厳しい上司の立場に立って自分を批判してみたりすることで、『自分と他者の双方の役割・考え』が分かりやすくなり、『今・ここ』における有意義な生きた体験をすることができるのである。ゲシュタルト療法の対話ゲームに近い『トップ・ドッグ,アンダー・ドッグ』の技法を、篠崎忠男は『対立分身対話法』と訳している。

トップ・ドッグ(top dog:勝ち犬)というのは自分の内面における『優秀なパーソナリティ・長所となる要素』のことであり、アンダー・ドッグ(under dog:負け犬)というのは『劣等なパーソナリティ・短所となる要素』のことである。この両者をスプリットして対立分身対話法を適用することで、自分の長所を伸ばして短所を改善するための『有用な気づき・深いレベルの自己洞察』を得ることができ、人格全体の統合性や機能性も高まりやすくなるのである。



posted by ESDV Words Labo at 07:59 | TrackBack(0) | た:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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