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2009年06月25日

[ダウン症・ダウン症候群(Down's syndrome)]

ダウン症・ダウン症候群(Down's syndrome)

ダウン症・ダウン症候群(Down syndrome)は、1866年にイギリスの眼科医J.L.H.ダウンによって報告された先天性の症候群で、常染色体の異常によって発症する疾患である。J.L.H.ダウンは当初この症候群のことをつり上がった眼などの顔貌の特徴から『蒙古症(mongolism)』と呼んでいたが、蒙古症という名前はアジア系人種(モンゴル人)に対する人種差別的な意図が込められているとして、現在では『ダウン症候群(ダウン症)』という名称に統一されている。

L.ダウンが発表した論文『白痴の民族学的分類に関する考察』で、蒙古症(モンゴリズム)の身体的特徴として『目尻が上がっていてまぶたの肉が厚い、鼻が低い、頬がまるい、あごが未発達、体は小柄、髪の毛はウェーブではなくて直毛で薄い』などが挙げられている。ダウン症の身体的特徴・顔貌の特徴・各種の症状としては以下のようなものがある。

頭の縦の長さが標準に比べて短い。顔立ちにあまり起伏が見られない。鼻が極端に低い。眼が切れ上がっている。まぶたが深い二重になっている。首周りがふっくらとしている。皮膚がふにゃっとしていて伸展しやすい。耳の上の方が内側に折れ曲がっている。指が短い。親指と人差し指の間が大きく開いている。小指の間接が1つ足りないことがある。掌に猿線があり、指の文様が弓状である。筋肉の緊張が低く、運動機能の発達が悪い。知的障害(精神遅滞)が見られることが多い。免疫力が低く感染症に罹りやすい。心臓奇形や心疾患、消化管の奇形のリスクがある。眼の屈折異常(近視・遠視・乱視)が起こりやすく視力が低下しやすい。浸出性中耳炎に罹りやすい。

ダウン症に関連する倫理学的問題として、心身に問題(奇形・障害)がない健常児だけを選別する優生思想があり、その優生思想に基づいた『ダウン症児(先天性障害児・奇形児)の出生前診断・人工妊娠中絶』の問題がある。しかし、最近ではダウン症候群は特別な『疾患・障害』ではなく『その子どもの遺伝的な個性』であるという解釈が強まっており、ダウン症候群の子どもの個性を適応的・共感的に伸ばしてあげるという早期療育の考えが注目されるようになっている。

ダウン症は最も発症数の多い染色体異常の一つであり、その発生率は0.1%(800人〜1000人に1人)前後と言われていて、高齢出産によってダウン症の発生リスクは高くなるとされている。ダウン症の発生率は国家・人種・民族・文化圏・経済水準・社会階層などの影響を受けることはない。30代後半以上の高齢出産では、卵子形成過程において『染色体の不分離』が起こりやすくなるのでダウン症の発生率が上がると考えられている。ダウン症の生物学的原因は21番染色体が1本過剰になって3本になる『21トリソミー』であり、1959年にフランス人のジェローム・レジューンによってこの染色体異常の21トリソミーが発見された。

ダウン症候群の特徴や長所としては、他人と親しみやすく陽気に感情・愛嬌のあるコミュニケーションができるということであり、『永遠の天使』と呼ばれるほどに無邪気で素直な性格上の特徴が認められることも多い。反対に、気分の変動が激しくて気難しかったり頑固で融通が効かなかったりすることもあるが、『外見上・顔貌上の特徴』から予測されるほど先天的障害の問題は大きくなく、広汎性発達障害(自閉症)や知的障害の重症例と比較すれば社会適応能力・コミュニケーション能力(対人スキル)は一般に高い。

日常会話レベルの言語発達(コミュニケーション能力の発達)は比較的良好なことが多く、他人の言葉を理解して自分の気持ちや考えを言葉で表現することができるので、知的発達・運動能力の発達に合わせた『特殊支援教育』を受けることで、一定レベルの社会適応を果たすことが可能である。ダウン症候群の子どもに対する教育的対応で最も重要なのは、ダウン症の症状・問題・知能指数(知的水準)に合わせた『適切な早期療育・特殊支援教育』を受けることであり、ダウン症の児童の長所・利点であるコミュニケーション力や対人適応能力をできるだけ高く伸ばして上げることである。

posted by ESDV Words Labo at 19:57 | TrackBack(0) | た:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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