A.A.ラザラスの多次元様式行動療法(multi-modal behavior therapy)
心理療法家のA.A.ラザラス(A.A.Lazarus)が開発した系統的なブリーフ・セラピー(短期療法)が『多次元様式行動療法』であり、クライアントのパーソナリティと認知行動パターンを多面的・総合的に理解しようとする技法である。
多次元様式行動療法の治療目標は『適応的な認知』や『機能的な行動』の獲得であり、現在の認知行動療法の原型となるような心理療法である。クライアントの包括的・総合的なパーソナリティの把握と合わせて、非適応的な認知を変容させて非効果的な行動を改善させていくのだが、効果測定をしながらできるだけ短期に効果を発揮しようとするところに特徴がある。
多次元様式行動療法では、人間のパーソナリティ(特徴的な性格行動パターン)を以下の7つのレベル(次元)で把握するので、それらの頭文字を取って『Basic ID』と呼ばれることもある。
行動(Behavior)
感情(Affect)
感覚(Sensation)
イメージ(Imagery)
認知(Cognition)
対人関係(Interpersonal relationships)
薬物・薬理(Drugs)
ターゲット・ビヘイビア(target behavior)
行動療法や応用行動分析では心理療法(カウンセリング)の目標となる『学習・習得すべき特定の行動』のことを『ターゲット・ビヘイビア』と呼んでいる。ターゲット・ビヘイビアは日本語では『目的行動・標的行動』と訳されるが、目的行動を選択する時には『クライアントの悩み・問題の中核となっている行動』や『客観的・具体的に問題点や改善点を記述できる行動』が選ばれることになる。
『系統的な行動評価』によってターゲット・ビヘイビアは選択されるのだが、その際には『クライアントの困っている行動の段階的な特定・カウンセリング中の行動変容のモニタリング・行動療法による効果測定(問題行動の減少や適応的行動の習得)』などが行われる。一定期間、行動療法的な技法を適用してみて、問題行動の改善や適応的行動の獲得が見られないという場合には『目標行動の分析・修正・再設定』などが行われる。系統的脱感作を実施しても十分な治療効果が得られない時には、非適応的行動を変容させるための『変数(適応的行動の組み合わせ)』をもう一度設定していかなければならない。
現時点のクライアントの問題解決につながる『目標行動(ターゲット・ビヘイビア)』を適切に選択すること、そして、『目標とする適応的行動』を獲得するまでの段階(ステップ)を細かく設定して問題状況に直面することによって、行動療法の効果がより一層発揮しやすくなるのである。ターゲット・ビヘイビアには、通常、一定レベルの不安感や緊張感が伴うものだが、それに直面して少しずつ不安や苦痛に耐えていくことで『エクスポージャー法(暴露療法)』の改善効果を得ることができる。

