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2009年07月03日

[テクノクラシーと技術官僚の支配体制]

テクノクラシーと技術官僚の支配体制

官僚は大きく『テクノクラート(技術官僚)』『ビューロクラート(事務官僚)』とに分類されるが、高度な専門知識と政策作成能力を持つ高級技術官僚による支配体制のことをテクノクラシー(technocracy)と呼ぶ。

テクノクラートとは、『国家・地方自治体・国際政治機関』において政治決定に関与できるレベルの発言力・影響力を持つ技術官僚のことであり、20世紀の近代国家の成長と発展に大きな寄与(貢献)をしたとされている。行政機関に所属して政策決定に関与するテクノクラート(高位の技官)には、『医療系の技官・薬学系の技官・軍事(防衛)系の技官・教育学系の技官・法学系の技官・経済学系の技官』などがあり、それぞれの専門分野の知識・技術・経験に精通している。

現代の日本やヨーロッパの先進国では、行政コストの肥大や政策決定の歪み、議会の形骸化といった『官僚政治の弊害』のほうが目立ってきているが、20世紀の近代国家ではテクノクラートが科学技術の進歩と政治的な意志決定をリンクすることで、国力の増大を実現していたと考えられている。第一次・第二次世界大戦における列強の総動員体制、米ソの冷戦構造における軍事力・技術力の増強、米ソの宇宙開発競争などに高級技術官僚によるテクノクラシーは濃い影を落としている。

過去の帝国主義・世界大戦の時代には『軍事・化学・物理学・生物学』などに通暁した専門家・技術者のテクノクラートが、『核兵器・化学兵器・生物兵器の開発促進』を行っていた。人類の歴史の上で作成された『大量破壊兵器』には、全体主義(ファシズム)や独裁政治に後押しされた『テクノクラートの技術力・専門知』が関係していることが多い。21世紀の現代の先進国でも『核政策や軍事技術(偵察衛星)・情報技術(IT)・バイオテクノロジー(生命工学)・先端医療技術(再生医療)・遺伝子工学』などの分野でテクノクラートが果たしている役割は大きい。

科学至上主義の影響を受けた『テクノクラシー』という用語が初めて用いられたのは、ウィリアム・H・スミスが1919年に発表した論文『テクノクラシー‐国家的産業経営‐』であり、20世紀初頭のこの時代には国家主導の経済振興・産業開発が主流であった。テクノクラシーの思想的淵源は、19世紀初頭のフランスの空想的社会主義者サン=シモン(Claude Henri de Rouvroy Saint-Simon, 1760-1825)にまで遡ることができるが、サン=シモンは『専門的知識人によるリーダーシップ・生産能力に応じた合理的な階層制』の政治理念について言及していたという。サン=シモンは、王侯貴族・聖職者階級よりも生産者階級(経済階級)の重要性を説いたので封建制度を破壊する『テクノクラシー・テクノクラートの予言者』と称されている。

サン=シモンは『五十人の物理学者・科学者・技師・勤労者・船主・商人・職工の不慮の死は取り返しがつかないが、五十人の王子・廷臣・大臣・高位の僧侶の空位は容易に満たすことができる』と発言して告訴された経験があり、『富・モノの生産』に関わる被支配者階級(労働者階級)の優位性を早くから説いていた。

テクノクラシーは官僚的な技術者・専門家による支配体制のことであるが、その理論的基盤を提供したのは『有閑階級の理論(1899)』で知られるソースティン・ヴェブレン(Thorstein Veblen,1857-1929)であった。20世紀半ばの科学至上主義的なテクノクラシー運動に、生産者階級・産業活動・専門的技術者の重要性を喧伝するネオ・サン=シモン主義が果たした役割は大きかったと言える。



posted by ESDV Words Labo at 22:02 | TrackBack(0) | て:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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