ウェブとブログの検索

カスタム検索





2009年07月13日

[近代科学のテクノロジーと人間のテクニック3:科学技術の進歩と労働意欲の低下・エコロジー思想]

近代科学のテクノロジーと人間のテクニック3:科学技術の進歩と労働意欲の低下・エコロジー思想

科学的な法則・理論に基づく『テクノロジー』は、“大量生産・大量消費・大量廃棄・分業体制”の市場経済(資本主義社会)と結びついて『職人や農民の世界・労働の喜び』『伝統的な共同体』を破壊していったとも言える。テクノロジーの進歩がもたらす『イノベーション(技術革新)』によって、先進国で生きる人間の文明的(物理的)な生活水準と日常の利便性は格段に向上したが、その代わりに伝統的な文化・技能や手作業の職人的な労働は断絶しやすくなっている。

農民の労働(農作業)や職人の手作業は古典的な『テクニック(技術)』の代表であるが、『テクニックを用いる労働』『テクノロジーに従う労働』とでは職種や働き方によっても異なってくるが、一般的に『テクニックを用いる労働』のほうが労働の意味や喜びを実感しやすいと思われる。

『テクノロジーに従う労働』は生産性が高くて効率的な作業を可能にするので、大量生産・大量消費の経済サイクルに適した労働なのだが、『極端な分業(仕事の細分化)・労働のマニュアル化・機械中心(コンピューター中心)の仕事環境』によって、仕事そのものに内在する喜びや意味を感じ取ることが難しくなる。

『テクノロジーに従う労働』は極端な分業化によって自分のしている仕事の全体像を見渡しにくく、『仕事のやり方・手順』がマニュアルや装置に依存しているため、自分自身の仕事の意味や遣り甲斐を実感しにくくなるのである。働く人間の労働のプロセスが『仕事の対象物』に全面的に関係しているのは『テクニックを用いる労働』のほうであり、テクニック(技能)の上達・習熟によって更に労働の意味や喜びを実感しやすくなる。

人間の多くは『仕事の結果(生産性・数量性)』よりも『仕事のプロセス(自分が働いていることの内容)』に意味を見出しやすいので、マニュアル化・規格化されたテクノロジーに従う労働では『給料・報酬を貰うための労働』という割り切りがなければ働けないという問題が生じてくる。

現代社会のテクノロジー(科学技術)は、バイオテクノロジー(生命工学)や先端医療技術、IT(情報技術)などの分野で急速に発展しているが、人間の生命や遺伝子を直接的に医療目的で操作しようとするバイオテクノロジーでは、『人間はどこまで生命の仕組みや人間の尊厳に介入して良いのか?』という生命倫理学的な問題が発生してきている。臓器移植医療では『植物状態にある人の脳死を人の死と認めても良いのか?』という倫理的な対立が見られたが、先端医療技術の進歩によって助かる人命が増えた一方で、人間の『死生観・死の基準』に大きな変化が起ころうとしている。

テクノロジーの進歩によって核兵器・化学兵器・生物兵器のような『大量破壊兵器』が多く製造されて、人間が大量に殺傷されるリスクが世界中に拡散されたという政治情勢と絡む技術的な問題もある。原子力発電のテクノロジーは、効率的にCO2を排出しないクリーン・エネルギーを大量に生み出せるが、放射能が流出する『原子力発電所の事故』が一度でも起こってしまえば、取り返しのつかない莫大な被害と環境汚染が起こってしまう。

巨大なエネルギー施設や大規模なテクノロジーが人類にもたらした恩恵と利便性は極めて大きいが、その『危機管理・設備の保守運営・適正な利用』に失敗すれば、途轍もなく大きな被害や危険を生み出す危険がある。

また、20世紀以降のテクノロジーの進歩と結びついた『大量生産・大量消費のムダの多い経済活動』によって、地球温暖化や環境汚染といった地球規模の環境問題も発生しており、今後のテクノロジーの課題は、人類の将来の存続と地球環境の保全を実現する科学技術の開発・応用になってきている。『エコロジー思想(環境保護の技術的実践)』と調和した漸進的な進歩・革新が、21世紀のテクノロジーに求められていると言えるが、『テクノロジー・人間の幸福・環境の保全』のバランスを取ることが重要である。

テクノロジー(科学技術)の進歩と社会構造・テクニックの変化に興味のある方は、[近代科学のテクノロジーと人間のテクニック1:技術論から見る科学と技能][近代科学のテクノロジーと人間のテクニック2:テクノロジーと伝統的な共同体・技能の衰退]も合わせて読んでみて下さい。

posted by ESDV Words Labo at 08:31 | TrackBack(0) | て:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。