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2009年09月09日

[アドラー心理学の男性的抗議(masculine protest)]

アドラー心理学の男性的抗議(masculine protest)

[エディプス・コンプレックスと男根羨望]の項目で、男性中心主義(男権社会の構造)によって男性ジェンダーの優位性が形成されて、『男根(権力の象徴)』に対する羨望や劣等感が生まれるという男根羨望の説明をした。S.フロイトの性欲理論(リビドー仮説)を批判して、独自の『個人心理学(アドラー心理学)』を創始した精神科医アルフレッド・アドラー(Alfred Adler, 1870-1937)は、人間の精神活動の源泉を『快楽(性的対象)への意志』ではなく『権力への意志』に見出した。

アルフレッド・アドラーは生まれつき“くる病”を煩った虚弱体質であり、自分の健康や身体の強さに対する劣等コンプレックスを持っていたとされるが、アドラーはこういった『器官劣等性(身体的な弱点・短所)』を自分の他の得意分野によって“補償”することで、共同体感覚(他者との連帯)を回復して社会生活に適応できるようになると考えた。S.フロイトやA.アドラーが生きた19世紀のヨーロッパは、男尊女卑の社会風潮が残る男性中心社会だったので、初期のアドラーはこの器官劣等性が『体力・筋力・社会的権威の弱い女性』のほうに強く出やすいと推論していた。

現代の先進国では、職場の待遇や家庭の役割分担などで『男女平等』が進んでいるが、男尊女卑の道徳や厳格な性別役割分担(男は仕事・女は家庭)があった19世紀〜20世紀初頭の男性社会では、『女性』の『男性』に対する劣等コンプレックスの問題が立ち上がってくることがあった。

自分の『女性性』を受容することができず、男性の社会的役割や政治的権力、身体的暴力に対して劣等コンプレックスを抱きやすいという問題は、19〜20世紀のフェミニズム(女性主義・女権拡張運動)が乗り越えるべき大きな課題であったが、A.アドラーはこの問題に対するひとつの対処法として『男性的抗議(masculine protest)』を挙げたのである。

女性が自分の『生物学的な性差(=sex)』『社会的な性差(jender)』と向き合って、性的アイデンティティを確立しようとする時に、女性性のイメージや性別による社会的格差に対する問題が起こってくる。特に、社会的・職業的な公正の要求や男性との競争意識が強い自立的な女性ほど、『自分の女性性』とどう向き合うかで、精神的な葛藤を経験することになりやすい。A.アドラーは女性の女性アイデンティティを巡る葛藤について、以下の3つの対処法を提示している。

1.自分の『女性性』を、社会的なジェンダーや周囲の期待に合わせて自然に受け容れる。

2.自分の『女性性』を人並み以上に強調して、性的魅力や家庭生活への適応をアピールする。

3.自分の『女性性』を否定して『男性性』を獲得するために、男性のように振る舞って男性的抗議(男性的抵抗)を行う。

現在では、男女同権社会や男女共同参画社会(男女の雇用機会の均等化)へ向かう流れが強くなっており、女性の高学歴化や社会進出も進んでいるので、必要以上に『男性的抗議(男性的抵抗)』をする女性は減っており、『自律と尊厳のある女性ジェンダー』『社会的・職業的な男女平等』との両立が各国で模索されている状態である。



posted by ESDV Words Labo at 18:56 | TrackBack(0) | た:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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