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2009年10月21日

[家族療法の彫塑技法(ちょうそぎほう)]

家族療法の彫塑技法(ちょうそぎほう)

家族システム論に基づく家族療法は、『家族成員の病因・問題』のみを解決しようとするのではなく、『家族相互のコミュニケーションの作用・歪んだ関係性』を修正することによって家族が抱えている問題を解決しようとする。家族療法は家族の誰かひとりに『問題の原因・精神の病理』を求める要素還元的な心理療法ではなく、家族全体のシステマティックな相互作用を改善しようとするホリスティック(総合的)な心理療法としての特徴を持っている。

円環的因果論を前提とする『家族療法』にはさまざまな技法があるが、非言語的なコミュニケーションを活用した技法として『彫塑技法(sculpture)』というものがある。彫塑技法(スカルプチャー)では、家族の一人が『彫刻家』の役割を引き受けて、『家族関係のダイナミクス+現在の状況』を家族の身体を使って象徴的に再現していくことになる。

家族関係の動態的な現状を、『動作・姿勢・表情・恰好・空間』を用いて部屋の中で象徴的に表現していくのが彫塑技法であり、『家族関係のあり方・各家族成員の役割』などを視覚的・直感的に理解しやすくなる。

彫塑技法には『彫刻家のロールプレイング』としての側面と『作品となる家族のロールプレイング』としての側面があるが、彫刻家の役割を引き受けた家族から見える『家族の実像・役割・コミュニケーション』が象徴的に浮き彫りになってくるのである。

彫刻家は例えば次のような指示を家族に出していくことで『家族のダイナミクスを再現した作品』を作り上げていくことになる。『お父さんは怒った表情で部屋の真ん中に立ち、お母さんは不機嫌な顔をしてお父さんと向き合い、お兄さんは興味なさそうな素振りで部屋の隅っこに行き、妹は悲しく脅えた顔つきで両親を見つめてみて』というような指示の通りに、それぞれの家族が部屋の中でロールプレイをして家族関係を再現する作品を作っていくのである。

家族療法家のP.パップは彫塑技法のことを『コレオグラフィー(振り付け, choreography)』と呼んでいるが、この彫塑技法を実施することで家族それぞれが『現在の家族のあり方・自分と相手との役割関係・コミュニケーションの作用』にはっと気づくことができるようになるのである。非言語的コミュニケーションを活用した彫塑技法(スカルプチャー)や振り付け(コレオグラフィー)には、自分が主観的に認識している家族関係を表現することによるカタルシス効果も期待できるし、家族相互が自分たちの抱えている問題を自己洞察するために役立つことも多い。



posted by ESDV Words Labo at 09:52 | TrackBack(0) | ち:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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