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2009年11月07日

[カウンセリングの終結(termination)と論理療法の治療的冒険]

カウンセリングの終結(termination)と論理療法の治療的冒険

治療的カウンセリングの基本は共感的な理解と無条件の肯定的受容であり、クライアントの人格や信念を尊重しようとする誠実な態度を保持することで、治療的に有効な『ラポール(相互的な信頼関係・親愛感)』を確立していくのである。カウンセリングの実施に当たっては『カウンセリングの終結(termination)』が問題になることがあるが、カウンセリングの終結は以下のような各種の基準や心理・行動の変化によって判断されることになる。

1.自我の強化や自己肯定感の向上……自分で自分の存在や言動を肯定的に認識できるようになり、『自己評価の高まり』と共に現実的な生活行動が改善されたときにカウンセリングを終わらせる。

2.他者との対人関係やコミュニケーションの改善……他者と安定した人間関係を築くためのコミュニケーションスキルを習得したり、自分の言いたいこと(伝えなければならないこと)を過度に抑圧せずに自己主張できるようになったときにカウンセリングを終わらせる。

3.社会生活・職業活動の適応性の改善……うつ病などの精神症状によって学校・会社に定期的に通うことができないという問題がある場合には、『毎日の通学・通勤』が無理なくできるようになったときにカウンセリングを終わらせる。会社・学校に行けなくなる原因には、うつ病以外にも『いじめ・学業不振・パワーハラスメント・モラルハラスメント・アパシー(意欲減退症候群)・対人恐怖症(社会不安障害)』などがあるので、それぞれの問題状況や精神症状に合わせた治療的カウンセリングを実施していくことになる。

4.ストレス耐性や状況対応力の向上……現実の社会生活や対人関係で経験することになる『精神的ストレス』に耐える能力や肯定的認知を獲得したときにカウンセリングを終わらせる。現実の生活状況やコミュニケーションには『さまざまな状況・予測困難な事態』が存在するので、そういった各種の状況に苦痛や不安を感じずに対応できる能力(=臨機応変な状況対応力)を培うことも、カウンセリングの目標の一つになっている。

原則としては、心理臨床家がカウンセリングの終結を強制するよりも、クライアントの自主性や希望を考慮しながら『クライアントの精神機能や現実適応の回復のレベル』をチェックして終結に持っていくことが望ましいだろう。いったんカウンセリングが終結していても、クライアントがまた相談したくなった時や『社会生活・対人関係への適応』が難しくなった時には、もう一度カウンセリングが受けられるような体制を整えておくことも大切である。

アルバート・エリスが開発した『論理療法(rational therapy)・論理情動行動療法(REBT)』には治療的冒険(risk-taking assignments)と呼ばれる『逆説療法(paradoxical therapy)』が存在する。エリスの論理療法は、自分で自分の気分を落ち込ませたり感情を悪化させたりする『イラショナル・ビリーフ(非合理的な信念)』『ラショナル・ビリーフ(合理的な信念)』へと転換させていく技法であるが、ラショナル・ビリーフの有効性や正しさを確認するための技法が治療的冒険(逆説療法)なのである。

治療的冒険(逆説療法)とは、『自分が最も恐れている状況・対象』に敢えて直面してみる技法である。例えば、『緊張して言い間違いをすることは、他人に馬鹿にされるとても恥ずかしいことである』という非合理的なイラショナル・ビリーフがある時に、『では、実際にガチガチに緊張してみてわざと何回も言い間違いをしてみてください。それで周囲の人が本当にあなたを馬鹿にしたりあなたの価値がないと決め付けるのかどうかしっかり確認してみてください』というような逆説的な課題を提示することになる。

治療的冒険(逆説療法)では、『自分が最も恐れている状況・対象』が本当はそれほど恐ろしくも危険でもないことを経験的に確認するための技法であり、行動療法のエクスポージャー(暴露療法)と同様の治療メカニズムを持っている。実際に体験する前には『とても恥ずかしかったり怖かったりして、自分には耐えられないと思う状況』を、勇気を出して実際にその状況を体験してみることによって『何だ、それほど心配したり不安に思わなくても大丈夫じゃないか』という直接的・感覚的な納得(情緒的実感)を得ることが治療的冒険の目的なのである。



posted by ESDV Words Labo at 16:26 | TrackBack(0) | ち:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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