Tグループ(training group)と集団精神療法
『Tグループ』というのはトレーニング・グループの略であり、初めは人間関係技術やコミュニケーション・スキルを習得するための訓練をするグループのことを指していた。Tグループの起源はNTL(National Training Laboratory)という研究室にあり、人間関係の生成変化や実践スキルを研究する過程において、ロールプレイ・心理教育を含むグループ・アプローチとしてのTグループが結成されたのである。
Tグループは端的に言えば、集団関係の相互作用を利用したグループ・アプローチであり、人間関係技術やコミュニケーション・スキル、集団のリーダーシップを学習するための教育プログラムとしての側面を持っている。『対人技術・コミュニケーションの教育プログラム』としてTグループを構成する場合には、メンバーを講師役(トレーナー役)と生徒役に分けることが多く、講師役の人はコミュニケーションの方法や対人心理学的な知見についての簡単な授業を行ったりする。
しかし、近年ではTグループは『対人技術の教育訓練プログラムとしての側面』よりも『集団精神療法(グループセラピー)としての側面』が強くなっており、講師役と生徒役を分けずに全員が対等なメンバーとして参加する形式が増えている。集団療法としての『Tグループ』は、お互いの感情をありのままに表現する本音の交流(本物の出会い)である『エンカウンター・グループ』との差異が小さくなっており、メンバーそれぞれが『自分の聞いて欲しい過去・感情・考え』を表現しあう場として機能している。
エンカウンター・グループでは『自分の本音』と『相手の本音』をぶつけ合う中で、お互いの苦悩や感情に共感することで“心理的な改善効果・新たな気づき”が生まれることになるが、Tグループではもう少し心理教育的・トレーニング的な要素が重視されているところに特徴がある。Tグループでは、集団環境における『メンバーの相互作用』を観察してその仕組みを理解しながら、『実際の人間関係』にその相互作用の仕組みを応用していくことが目標となる。
Tグループでは『自分の発言・感情が相手にどのような影響を与えるか?』ということと『相手の発言・感情が自分にどのような変化を起こすか?』ということを分析的・合理的に考えていく時間が大切であり、自分と他者の間に働く相互作用について経験的な理解を深めていくのである。
Tグループの集団で、ロールプレイや対人関係にまつわる話し合いをした後には、それぞれのメンバーが『誰の発言からどんな影響を受けたのか?』ということについてフィードバックを行っていき、より効果的で効率的なコミュニケーションの方法・技術が模索されることになる。

