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2009年12月14日

[S.フロイトの快感原則とタナトス(死の本能)の思想]

S.フロイトの快感原則とタナトス(死の本能)の思想

精神分析の創始者ジークムント・フロイト(S.Freud, 1856-1939)は、人間の二大本能として『エロス』『タナトス』を仮定し、性的精神発達論(リビドー発達説)を前提とする『快感原則』『現実原則』という二つの原則を考えていた。エロスというのは『生の本能』であり、精神分析ではリビドーを発達させて他者(異性)と関係を築いたり、社会的な自立を達成したりする過程でエロスの生きようとする本能が作用するとしている。

タナトスとは『死の本能』であるが、精神分析の学派・学者の多くは『死(消滅)』に向かう本能であるタナトスの存在に否定的だった。そのため、『死の本能』を応用した発達理論を構築したのは、対象関係論のメラニー・クラインなどごく限られた精神分析家だけである。著名な女性分析家として知られるメラニー・クラインは、タナトスを『生得的な破壊衝動・攻撃本能』として解釈し、早期発達理論の『妄想−分裂態勢(paranoid-splitting position)』において、乳児のタナトス(破壊衝動)が思い通りにならない母親の乳房に投影されると考えた。

生まれて間もない乳児の『妄想‐分裂ポジション(生後0ヶ月〜3‐4ヶ月)』では、タナトスが母親の乳房や外界に投影されて“良い乳房”と“悪い乳房”の分裂が起こり、強い破壊衝動によって自分の空腹や愛情飢餓を癒してくれない“悪い乳房”を引き裂いて消滅させようとする。

しかし、それに続く『抑うつポジション(生後4ヶ月〜1歳頃)』では、分裂していた良い乳房と悪い乳房が『一人の母親』へと統合されていくので、自分が母親を憎悪して傷つけようとしたことに対する『償い・罪悪感(後悔の念)』が生まれるのである。

S.フロイトは精神発達が進むことによって、人間の行動原則が自己中心的な『快感原則(pleasure principle)』から環境配慮的(状況判断的)な『現実原則(reality principle)』へ移行すると定義した。この原則の移行は幼児期・児童期を通して行われるが、青年期・成人期以降になっても完全に現実原則に移行しきってしまうわけではなく、年齢に関係なく『相手・状況・目的』によっては、人間は快感原則に従った心理状態になったり行動を取ったりすることがある。

快感原則(pleasure principle)とは、『〜したい・〜が欲しい』という無意識的欲求にそのまま従う行動原則(心理法則)であり、単純に快感を追求して不快を回避するというパターンを示す。乳幼児期にある子どものように周囲が自分の欲求充足を手伝ってくれたり、自分の甘え・要求を受け容れてくれるような状況であれば、快感原則は適応的な行動原則として機能する。しかし、成長するに従って『周囲の他者・環境・ルール=現実』が、自分の欲求充足を妨害することが多くなってくるので、人間は段階的に『〜しなければならない・今は我慢したほうが良い・計画的に目的を達成しよう』という現実原則に従うようになってくるのである。



posted by ESDV Words Labo at 23:35 | TrackBack(0) | た:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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