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2009年12月30日

[プリゴジンの“散逸構造・ゆらぎ”と自己組織化理論:2]

プリゴジンの“散逸構造・ゆらぎ”と自己組織化理論:2

[前回の記事]の続きになります。人間をはじめとする動物も時間の経過と共に生命力を低下させ老化して死ぬことになるが、これも生命体におけるエントロピーの増大を意味する。太陽や地球の熱量が減少して、宇宙全体の熱が冷めていくこともエントロピーの増大であり、すべては無秩序や死に向かって変化するというのが宇宙の普遍的原則とされてきた。では、エントロピーが減少することはないのかというと、決してそうではなく、世界の部分的には『エントロピー(不確実性・無秩序性)の減少』は起こっているのである。

エントロピーの増大は必然的で不可逆的なものとされるが、エントロピーを減少させる作為的・本能的な行為として『労働(活動)・生殖』があり、人間生活で言えばモノを製造したり部屋を掃除したりすることによって部分的・局所的にエントロピーは低下することになる。いったん生み出されてしまった動物や植物は、決して若返って赤ちゃん・種子(発芽)に戻ることはできないが、生殖行為によって子孫を作ることによって『新たなゼロからの生命活動』というエントロピー減少の秩序を形成することができるのである。

エントロピー(無秩序性)は『労働・行為・生殖』といった作為によって局所的に減少することはあるが、自然のままの状態ではエントロピーは増大を続けると考えられていた。

この定説を、散逸構造の理論によって反証しようとしたのがイリヤ・プリゴジンなのである。宇宙や自然界ではなぜエントロピーが増大していくのかは、『無数の粒子(分子・原子)のランダムな運動』に原因が求められるが、幾つかの粒子が局所的・偶発的に小さな秩序を作ることがあり、これをプリゴジンは『ゆらぎ』と呼んだ。

プリゴジンは『ゆらぎ』という局所的・偶然的な秩序が、そのゆらぎの周囲にある粒子を巻き込んで、次第に全体に影響を与えるような秩序を形成する可能性があると主張した。ゆらぎによってある程度の大きさの秩序が形成されると、ポジティブ・フィードバックによってその秩序が及ぶ範囲が次第に拡大していく傾向が見られるが、これを作為の影響しない『自己組織化』という。

自然界では『小さな秩序が全体の系に影響を与え、全体の系が小さな秩序を強化するポジティブ・フィードバックを働かせる』というメカニズムで自己組織化による秩序形成が行われるのである。自己組織化理論は、『部分・偶然が全体に影響し、全体が部分の秩序を強化する』という相乗作用のポジティブ・フィードバックを根拠とする理論になっている。自己組織化理論の発見によって、世界は決定論的に規定されるのでもなく自由意志によって自由に変更できるものではないという、両義性(不確定性)を有していることが明らかになった。

posted by ESDV Words Labo at 06:16 | TrackBack(0) | ふ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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