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2009年12月30日

[プリゴジンの“散逸構造・ゆらぎ”とジャック・デリダの現代思想]

プリゴジンの“散逸構造・ゆらぎ”とジャック・デリダの現代思想

[前回の記事]では、イリヤ・プリゴジンの散逸構造論をベースにして自己組織化論(エントロピー増大法則の反駁)を解説したが、ノイズや無秩序から『局所的な秩序』が形成されるという考え方は現代科学(複雑系・システム論)だけではなくて、古代ギリシアのカオス(混沌)の哲学や神話にも見られた。

自生的・自発的な秩序として典型的なものとしては『生命・生殖(生理学的機構)』『制度・慣習(社会学的秩序)』があるが、古代ギリシアでは無秩序や無根拠の原因としてノイズ(莢雑物)が見られる傾向があった。

しかし、『生命・生殖』『制度・慣習』の秩序は、分かりやすい意図や行動(計画)といったシグナルで作られるというよりも、カオティック(混沌的)なノイズからの偶然的・自然的な飛躍によって生まれるというのに近い。プリゴジンの散逸構造の自己組織化論が示唆するのは、決定論的な世界観でもなく自由意志に基づく世界観でもない『不確定性・非決定性・非限定性の世界観』であり、この世界観を数学的に確証したのがハイゼンベルク『不確定性原理』である。

不確定性原理の数学的証明はやや複雑であるが、ハイゼンベルクがモデルとして言及したのは、物質(粒子)の位置と運動量を同時的に確定して測定することは不可能だということである。

ノイズから自発的に秩序(意味)が形成されるという散逸構造やオートポイエーシスのモデル構造は、ジャック・デリダドゥルーズ=ガタリといった現代思想の概念にも影響を与えており、哲学史の文脈では『価値・真理・権力の相対化』というコペルニクス的転換として解釈することが可能である。

ポスト構造主義の哲学者ジャック・デリダ(Jacques Derrida,1930-2004)は、階層的な二項対立図式を内部から解体する『脱構築(deconstruction)』によって、相対主義によるポストモダンの形而上学の可能性を追求した。しかし、デリダの『脱構築』『差延(defference)』といったポストモダンの現代思想で用いられる概念も、情報科学的にはノイズに分類される概念だと考えることができる。

『差延』というのは、主体が自分自身であることを確認するためには、『AはAである』という別の項(他者)を必要とするという違い・ズレのことであり、差延は自分が自分であると言及する自己同一性(同定性)に付きまとう『再帰性』の性格を持っている。

差延も再帰性も『事物の痕跡・根本』に関わっている概念であり、『事物がAである』というときの、事物とAの間にある概念のズレ・差異・逸脱を問題にしているが、功利主義的・実証主義的にはこれらのポストモダンの相対主義の概念はノイズと判定されることになる。差延とは、事物とA(概念)が二重化しており、事物がAによって媒介されることで自己同一性(事物の同定性)が確認されるということでもある。

posted by ESDV Words Labo at 06:19 | TrackBack(0) | ふ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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