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2010年01月22日

[無意識的欲求とノモス(人為)の制御から見た“カオス‐コスモス”]

無意識的欲求とノモス(人為)の制御から見た“カオス‐コスモス”

この記事は、[前回の項目]の続きになります。古代ギリシア神話では、『カオス(混沌)』という無秩序の塊である空隙(空虚)が、人格神の固有名詞が独立的に形成されることによって、『コスモス(宇宙)』という秩序構造へと変換されていくことになる。

ユダヤ教・キリスト教の『旧約聖書』では、全知全能の神が天地創造の事業を為したとされるが、創世記にある『光あれ』という神の言葉が、世界に最初の秩序(コスモス)をもたらしたというエピソードは象徴的である。『新約聖書』のヨハネ福音書では『はじめに言葉ありき』という記述もあり、『言葉』は混沌とした広大無辺な世界の無秩序に秩序をもたらす機能を持っている。

『言葉(ロゴス)』はカオスという無秩序な広がりに境界線を引き、事物を区別して整理する力を持っている。人間は混沌とした区画のないカオスとしてのピュシス(自然)に対して、言語を初めとする『ノモス(人為)』によって何とか秩序を生み出そうと尽力している。こういった言語(ロゴス)が事物・現象に名前をつけて区別する働きのことを、『言語の分節化の作用』といい、言語哲学・分析哲学や現代思想では、この言語の分節化について詳細に分析している。

“カオス(無秩序・空隙)”“コスモス(秩序・宇宙)”というのは対義語としての位置づけにあるが、カオスがコスモスに先行するという古代ギリシアから近代哲学に至る認識は、現代思想の中で変化を迫られている。現代思想や精神分析的世界観においては、カオスとコスモスは同時発生的で特定の世界構造を形成する要因のように捉えられるようになっている。

カオスは精神分析でいう『無意識・エス(本能的欲求)』にも該当するが、言語による論理的・形式的な分節化を行うことができない領域や心理(欲望)のことをカオスと呼ぶことがある。『暴力と聖なるもの』の著作を書いたルネ・ジラールのように、他者の欲望を欲望することによって同一対象を奪い合う『原始的な暴力性』の起源が、カオスにあるとする解釈もある。

一般的解釈では、人間が予測したり制御したりすることが困難な『カオス』は恐怖・不安の対象となるので、『カオス』は“法律・制度・慣習・技術・文明”といった計画的で人工的な『ノモス(人為)』によって危ういバランスの中でコントロールされることになる。自然世界から隔絶された現代の文明社会では、『科学技術・市場経済・都市建築・社会制度・政治権力・社会福祉』などの入念に計画・設計されたノモス(人為)の集積によって、人間は『自然の危険・脅威』から手厚く守られているのである。



posted by ESDV Words Labo at 22:02 | TrackBack(0) | の:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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