適応行動尺度(adaptive behavior scale)と適応能力
臨床心理学や精神医学における『適応(adjustment)』については過去の記事で説明したが、適応とは活動する環境に対して適切な働きかけや態度を取ることができ、他者(環境)から肯定的な結果・評価を引き出すことができるということである。社会生活においては個人の発達段階・生活年齢に応じて、『幼稚園(保育園)・学校・企業・集団生活・職業活動・恋愛関係・結婚生活・老年期』など様々な環境や状況への適応を迫られることになる。
環境に適応した行動・態度とは『TPOに相応しい効果的(有効)な行動』であり、『周囲の常識や期待に一定水準で応える態度』であるが、自分で働き出す成人になると与えられた環境(人間関係)にそのまま適応する人もいれば、新たな自分が適応しやすい環境(人間関係)を作り上げてしまう人も出てくる。
幼児期から思春期に掛けては『学校環境・集団規範・学習行動への適応』を余儀なくされるので、与えられた環境に適応できない子どもは問題児と見なされたり実際的な不利益が多くなってしまう。
社会的環境に適応している状態では『感情・情緒・意欲』が安定しやすくなり、『自己効力感・有能感』を感じやすくなるが、社会的環境や対人関係に適応できるか否かには様々な要因が関与している。
環境適応の水準に影響を与えるものには、『遺伝要因・気質要因・身体能力・知能指数(IQ)・精神発達段階・社会生活技能・性格の成熟度・コミュニケーション能力』などがある。心理テスト(性格テスト・知能テスト)によっても、被検者の大まかな適応水準を推測することができる。
適応水準を評価する心理測定尺度のことを、一般的に『適応行動尺度(adaptive behavior scale)』というが、幼児から児童(1〜13歳)に施行可能な適応行動尺度としてドール(Doll)が開発した『Vineland Social Maturity Scale』がある。
この適応行動尺度の日本語版として『新版S・M社会生活能力検査』があるが、この心理テストは子ども本人に回答させるものではなく、保護者・教師が子どもの生活状況や人間関係を観察して回答する間接的な質問紙法である。
『新版S・M社会生活能力検査』では子どもの適応能力を『身辺自立・移動能力・作業・集団参加・意志疎通・自己統制』の6領域によって判定することができ、『領域別社会生活年齢・全検査社会生活年齢・社会生活指数』という発達年齢や指数でその結果を確認することができる。

