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2010年02月14日

[ハイパーリアリズム(hyper-realism)]

ハイパーリアリズム(hyper-realism)

1960年代以降のアメリカ合衆国で、ポップ・アートの流行の後に登場した『リアリズム以上のリアリズム』を追求する写実的・具象的な芸術思潮を『ハイパーリアリズム(hyper-realism)』と呼んでいる。

ハイパーリアリズムは人体の解剖学的構造を精確に描こうとしたフィリップ・パールスタイン『ニューリアリズム』の影響も受けている。リアルの実物・写真に近づけるような『精度の高い現実描写』『主観的なテーマ性(物語性)の否定』にその特徴がある。芸術作品としてカメラ撮影した写真も、フォトアートとしてハイパーリアリズムの一部と解釈される。

物理的現実の事物・情景・現象をそのまま忠実に再現しようとするところに特徴があるが、人体やモノをクローズアップさせてミクロな細密描写(質感・光沢の再現)をした作品や写真をトレースするような機械的複製に近い手法を用いた作品、人体模型を製造した作品などそのバリエーションは様々である。ハイパーリアリズムは単一の流派・集団・思想ではなくその定義も多義的であり、ハイパーリアリズム以外の呼び方としてスーパーリアリズム、フォトリアリズム(フォトアート)、シャープフォーカス・リアリズムなどがある。

ハイパーリアリズムの造形美術は、マスメディア(広告媒体)の発達やコピー文化との連続性を持っており、キュービズムのような抽象画から近代的な複製美術としての具象画・写真への転換を促した。『肉眼で見た現実』『カメラのレンズを通した見た現実』との統合というのが一つの課題になっているが、芸術作品の表現メディアとして“絵画”と“写真・映像”との価値・評価が近づくきっかけともなった。

ハイパーリアリズムに分類される芸術家(画家)には、『特定の主題・事物』を集中的に描いている作家が多いが、チャック・クロースは「人物画」、リチャード・エステスは「都市の風景」、ラルフ・ゴーイングスは「自動車」を選んで、『対象のリアリティ』を精密に再現するような写真的絵画を描いている。彫刻・造型の芸術分野では、実際の人間から型抜きして『原寸大の人物模型』を制作したドゥエイン・ハンソンやジョン・デ・アンドレアが知られているが、こういったファッションも含めた実際の人間を忠実に造型しようとする芸術風潮は、現代美術にも少なからぬ影響を与えている。

ハイパーリアリズムの人気や流行は一過性のものとして短期で終息したが、その原因としては『情念・思想の籠もっていない無機的で静謐な写実性』にあると言われ、客観的・物理的な現実を写真と同じように再現する作品には、人間の心を激しく揺さぶるような力を感じ取ることが難しかったようである。

芸術作品を通して『リアルを超えるリアル』を精密に再現しようとしたハイパーリアリズムは、『人間の主観や情念が関与しないリアリティの無機質な冷たさ・精緻な美しさ』を伝えることになった。現代思想の文脈では、『機械文明・都市社会・知覚主義の無味乾燥さの象徴』としてハイパーリアリズムが言及されることもある。



posted by ESDV Words Labo at 11:39 | TrackBack(0) | は:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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