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2010年02月14日

[量的功利主義・質的功利主義・選好功利主義・アニマルライツ(動物の権利)]

量的功利主義・質的功利主義・選好功利主義・アニマルライツ(動物の権利)

J.ベンサムの『量的功利主義』からJ.S.ミルの『質的功利主義』に移行したが、ベンサムは個人にとっての快楽・利益を誰にでも共通する同質的なものと考えていたが、ミルは個人によってどういった刺激や状況を大きな快楽・利益と感じるのかには違いがあるとして質的功利主義を提示した。J.S.ミルは、肉体的快楽よりも精神的快楽のほうが質が高いと仮定して、『満足した豚よりも満足しない人間であるほうがよい』という格言(アフォリズム)を残していたりもする。

しかし、量的功利主義も質的功利主義も社会全体の快楽と苦痛の量は数量的に計算できるという『快楽計算(功利計算)』の前提に立っており、その限界を乗り越える思想としてR.M.ヘアやP.シンガーの『選好功利主義』が考案されている。P.シンガーは自我意識と言語機能を持つ人間だけに『不可侵の人権(権利)』を認めるという『人間原理』に批判的な態度を示している。

P.シンガーは苦痛や恐怖を知覚していると推測される動物にも、人間に近い権利を認めるべきだとする『アニマルライツ(動物の権利)』の思想を提唱しており、このアニマルライツの思想は動物愛護運動やエコロジー運動(自然環境保護)にも応用されている。

アニマルライツの思想が過剰な動物愛護や環境保護と結合すると、『人間の生活・権利よりも動物の権利や自然環境のほうに価値がある』とする権利感覚の転倒が起こることもあり、欧米・オーストラリアの『クジラ・イルカのラディカルな保護運動(アニマルライツの承認)』には宗教的信仰・スピリチュアルな使命感に近い熱意がもたれることも少なくない。

近年では合法的な日本の調査捕鯨を暴力的・強硬的な手段で妨害しようとする自然保護団体シー・シェパードの活動などが問題視されていたりもする。人間の権利と動物の権利、エコロジー思想とのバランスをどのように保っていくのかは、21世紀の人類全体に課せられた重い倫理学的課題でもある。

量的功利主義は『快楽の量』を重視し、質的功利主義は『快楽の質・種類による重みづけ』を重視しているが、選好功利主義では『個人の個別的な好き嫌い』を重視している。選好功利主義における『選好』とは個人ごとの欲求や価値観、ニーズを反映した好き嫌いの判断であり、どちらの選好の快楽のほうが量が大きいというような『数量的比較』をすることが不可能と考えられている。

選好功利主義は、功利主義の思想に『個人主義的な価値観の多様性』を導入したものと解釈することができ、社会全体の『恣意的な快楽計算』などをしても倫理学的判断を下すことはできないことを示唆している。功利主義には個人の行為の結果としての効用(利益)を重視する『行為功利主義』と、社会がその規則に従うことによる効用(利益)を重視する『規則功利主義』との違いもある。

行為功利主義ではケースバイケースで状況判断をしながら臨機応変に『効用の増大』を目指すことになるが、規則功利主義では普遍的な規則(ルール)を定めてそのルールに従うことで『効用の増大』を目指すので、状況適応的な融通が効かないというデメリットが指摘される。



posted by ESDV Words Labo at 14:22 | TrackBack(0) | こ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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