カウンセリングのテープ分析・セッションの録音録画によるカウンセリング教育
カウンセリング(心理面接)のセッションのやり取りをテープに録音・録画して、その会話内容や受け答え、返答・指示などの効果について分析することを『テープ分析(tape analysis)』という。カウンセリングの面接過程の逐語的なやり取りを記録して、後でじっくりと一つ一つの言葉の持つ影響や意味を検討し直すことができるので、カウンセリングの学習者にとっては有効な教育法(訓練法)の一つである。『カウンセラーの言葉・対応・感情・見立て』と『クライアントの言葉・反応・感情・予測』の双方が、テープ分析において反省に基づく改善の対象になってくる。
かつては、『クライエント中心療法』を実施するロジェリアン(ロジャーズ派)のカウンセラーが好んでテープ分析を行っていたが、最近では教育機関におけるカウンセリングの学習法・研究法としてテープ分析が採用されることは減っている。
しかし、カウンセラー自身が先輩の熟練者から指導・分析やケースについてのアドバイスを受ける『スーパービジョン』では、スーパーバイジー(クライアント役)となるカウンセラーの面接過程をテープに録音して、スーパーバイザー(カウンセラー役)に検討してもらうこともある。
スーパービジョン(supervision)とは、心理臨床家(カウンセラー・セラピスト)の能力・資質・経験を高めるために実施される実践的な教育訓練方法(研修機会)であり、カウンセラーの能力の水準を維持するために定期的にスーパービジョンのような体験的トレーニングを受けることが推奨されている。
『テープ分析の実施事例』が減少した理由は、テープ分析にカウンセラー教育や技法の改善のメリットがないからではなくて、テープ分析を綿密に実施するには時間的コストと労力がかかるからである。また、カウンセリングのセッション(心理面接)を録音・録画する場合には、事前にクライアントの同意を得るための『インフォームド・コンセント(適切な情報提供に基づく同意)』を行わなければならず、守秘義務や倫理的責任も遵守する必要がある。
テープ分析によるカウンセリング心理学の成果としては、C.R.ロジャーズ(C.R.Rogers)の『過程尺度の作成』、W.U.シュナイダー(W.U.Snyder)の『発言内容の分析』などがあり、カウンセリングの面接過程で展開される具体的な言葉や反応、情緒性、態度の影響を詳しく理解することに大きく貢献している。
自分の声を録音して改めて聞くというのは何となく違和感があって恥ずかしかったりもするが、『自分の言葉や対応によってクライアントの心理・人格がどのように変化しているのか?』を精緻に理解しようと思うのであれば、有効なカウンセリングの研究方法としてテープ分析も取り入れたほうが良い。
近年では、カウンセリングの実践的な学習教材として、各種カウンセリング技法に精通した熟練者が、『自分の心理面接のプロセス』をデジタルビデオで録画することも増えている。インターネットが普及した情報化社会では、Podcastや動画共有サイトなどによって、『録音・録画によるカウンセリング教育(訓練方法)の可能性』が模索されている側面もある。

