言い換え技法(paraphrase)とは、カウンセリングの基本的な面接技法の一つで、クライエントがカウンセラーに話した内容を要約して繰り返してあげる技法である。カール・ロジャーズのクライエント中心療法(来談者中心療法)やアレン・アイビィのマイクロカウンセリングでも、カウンセリングの基本的な技法として、この言い換え技法は用いられる。
カウンセリングに訪れるクライエントの全員が、自分の心理的な悩みや困難の内容を綺麗に整理できているわけではなく、自分の人生や人間関係の出来事を論理的に話せるわけではない。カウンセラーは、バラバラとまとまりなく話されるクライエントの話の内容の要点(エッセンス)を記憶して、『私は、あなたのお話をこのように理解していますが、この理解で合っているでしょうか?』という思いを込めて分かりやすく繰り返してあげる。
言い換え技法とは、相手を説得したり納得させる為に用いる技法ではなく、相手との相互的な信頼感や安定感を高めながら、相手の話をどのように理解しているかを相手に簡潔に伝えてあげる技法である。アレン・アイビィが1960年代後半から1980年代にかけて開発したマイクロカウンセリングは、それまで研究されてきたカウンセリング理論と面接技法の長所を統合したもので、現実的問題への応用性に優れたカウンセリング体系である。
マイクロカウンセリングなどで用いられる言い換え技法は、クライエントの『カウンセラーに理解されている』という安心感を高め、『自分の考えをカウンセラーの視点を通して客観的に確認する』という自己理解の深化につながる。
一般的にいう、カウンセリングのアウェアネス(洞察)効果やバディ(仲間のいる安心)効果は、カウンセラーの当意即妙な『言い換え技法』によって高まる。
家意識(Ie-Mindedness)
家意識とは、家族形態・家族関係に対してどのような認識を持ち、どのような価値判断をもっているのかという意識のことである。家意識は、自分が生きている時代の政治経済の状況や自分が帰属する社会環境の標準的家族観に大きく影響される。
また、家意識は、その人がどのような家庭環境に産まれて、どのような親子関係や家族関係の中で成長してきたのかによっても変化してくるものである。
家族形態とは、『家族構成・家族間関係・生活様式』などの要因によって規定されるもので、主な家族形態として、夫婦と子供だけから構成される『核家族(夫婦家族制)』と夫婦・子供・夫婦の両親など複数世代から構成される『大家族(直系家族制)』とがある。
核家族では、親夫婦と子供夫婦は、別の家に生活の拠点を持ち、食事・家計・日常生活も別になっていて、両親から夫婦生活や子供の養育に干渉されたくないと考える傾向の強い現代人は核家族を希望しやすい。核家族では、相手の両親ともあまり頻繁に遭わなくて良いので、気遣いや遠慮によるストレスを感じなくて済むというメリットがある一方で、世代の異なる相手とのコミュニケーション能力の低下や子供の対人関係の貧困によるストレス耐性の低下などのデメリットもある。
かつて、戦後まもなくまでの日本で主流だった家意識は、家父長制に基づく大家族(直系家族制)を平均的な家族形態とするというものであった。祖父母や両親の面倒を子供が見るという儒教的な忠孝の精神が徳目とされ、父親に高い権威を認めて家名や財産、先祖の墓、伝統家風を守り続けていくことが最も大切な事柄だと考えられていた。