ゲシュタルト療法の投影ゲーム(playing the projection)
ゲシュタルト療法には、『思い込み・偏見・誤解』などによるディスコミュニケーションを是正するための技法として『投影ゲーム』というものがある。ゲシュタルト療法はフリッツ・パールズとローラ・パールズの夫妻によって開発された心理療法であるが、ゲシュタルト療法では『外界や他者の知覚』を『自己の内面の投影』と見なす考え方がある。
自分が他者や状況について、良いとか悪いとかある価値判断をする時には、必ずその前段階に『外界・他者の知覚』がある。外界・他者を知覚する時に大切なのは『客観的事実』と『投影による偏見・歪み』の区別を的確につけるということであり、自分の投影による偏りによって間違った判断を下さないようにするということである。
偏見や誤解を含む投影によって作られた知覚のことを『空想的知覚』と呼ぶが、人は空想的知覚によって被害妄想に陥りやすくなったり相手に対する不信感(嫌悪感)を持ってしまったりする。
例えば、『あの人は自分のことを嫌っているに違いない』という知覚がある時にも、相手が本当に自分のことを嫌っているのではなくて、自分の苦手意識や誤解が相手に投影されているだけということがある。『客観的な事実(現実)』と『空想的知覚』を混同してしまうと、本当は親しく付き合えたはずの相手のことを無意味に嫌ってしまったり信用できなくなってしまったりすることがある。
こういった空想的知覚を正しい知覚に修正するためのゲシュタルト療法の技法が『投影ゲーム(playing the projection)』であり、投影ゲームというのは『嫌いな相手・信頼できない相手』の役割演技をするロールプレイングの一種でもある。『私はあなたのことを嫌っている○○です。私はあなたから信用されていない○○です』といった自己宣言からロールプレイを開始して、具体的なコミュニケーションや行動状況の説明をしていくことで、『相手と自分との間にあったすれ違い・誤解偏見』に気づくことができるのである。
投影ゲームの目的は、自分が苦手意識や不信感を持っている相手になりきって演技をしてみることで、『自分の空想的知覚』と『相手の実際の心理状態・自分への評価』との違いを洞察して気づきやすくなるということである。投影ゲームでは客観的な現実認識を獲得することが目的となるが、『今・ここにいる自分』が、これからどのような行動や生き方をしていけば良いのかを考えるきっかけにもなりやすい。

