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2010年08月22日

[トランスパーソナル心理学(transpersonal psychology)]

トランスパーソナル心理学(transpersonal psychology)

トランスパーソナル心理学(transpersonal psychology)は、ユング心理学や人間性心理学、ニューエイジ思想、仏教の悟りや瞑想などの東洋思想、ドラッグ文化、神秘主義などの影響を受けた新しい心理学で、1960年代頃のアメリカで始まった心理学の潮流である。トランスパーソナル心理学は、精神分析、行動主義心理学(行動科学)、人間性心理学(ヒューマニスティック心理学)に続く『第四の心理学派』とも呼ばれることがあるが、科学的心理学とは異なる主観主義(経験主義)の原理原則に立って『人間の究極的・根源的な存在根拠』を研究している。

トランスパーソナル心理学は、客観的に検証不可能な理論や概念を多く含んでいて神秘的・観念的な傾向も強いので、『科学的心理学の方向性・方法論』とは大きく異なるが、カール・ロジャーズやアブラハム・マズローの人間性心理学を発展させた分野として興味深い内容を持っている。トランスパーソナル心理学の理論的な下敷きとなっているのは、フロイトやユングの『無意識の概念』とA.マズローの『欲求階層説』であるが、特にマズローが人間の最高次の欲求とした『自己実現欲求(超越的な至高体験)』の拡張に注力している。

"trans"には『超える』という意味があり、"personal(個人の人格・意識)"を超えて人間存在の本質的な意味や起源を探求するというのが、トランスパーソナル心理学の目的となっていてその中には神秘的でオカルティックな概念世界の仮定も含まれている。『自己実現の心理学』よりも高次元にあるとされる『自己超越の心理学』であるが、個人(個別の内的世界)を超えた超越的な存在・領域との精神的統合を目指している宗教的・神秘主義的な部分が批判されることもある。

トランスパーソナル心理学は、精神分析・ユング心理学の無意識の概念を拡張して『個人的無意識・前個人的な前世の領域・超個人的な宇宙の領域』という3つの領域を仮定しているが、マクロコスモスと自我の統合を目的としている意味では古代インドのヴェーダや仏教の禅宗の思想とも密接な関係を持っている。個人(自我)の精神世界に閉じこもったり、利己主義によって他者や環境を傷つけたりするのではなく、自我を超越した精神状態への移行によって苦悩や不安、怒り、悲しみのない『自己超越の精神的統合』を達成しようとするのが一つの目的となっている。

個人(自我)を超えた精神状態を実現するための手段として、過去にはLSD(幻覚剤)などの薬物が利用されたこともあったが、現在は健康リスクの知識や法規制が広まったために個人を超越する媒介(ツール)として『瞑想・催眠・イメージ療法』などが用いられることが多い。

トランスパーソナル心理学は、科学的検証ができない理論や再現可能性のない体験に基づいているので、ニューエイジ思想やニューサイエンス(科学と宗教の中間的研究分野)の一つに含められることもある。だが、『人間の意識・欲求・幸福の志向性』を応用して自己超越(絶対的存在との統合)を目指す心理学として、個人の精神安定や目的設定に対する有効性が認められており、非科学的心理学のスピリチュアル(霊的)な可能性を示唆している。

代表的な自己超越の実践者としてはスタニスラフ・グロフ、トランスパーソナル心理学の精緻な合理的理論化を進めている研究者としてはケン・ウィルバーが知られている。日本にトランスパーソナル心理学の体系的な理論や技法をいち早く伝えたのは、音楽家・翻訳家でセラピストもしている吉福伸逸(よしふく・しんいち)であり、その時にはニューエイジ思想の最先端の理論やムーブメントとしてトランスパーソナル心理学が受け取られていた。



posted by ESDV Words Labo at 15:29 | TrackBack(0) | と:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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