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2010年11月09日

[脳死(brain death)と人間の死・臓器移植:1]

脳死(brain death)と人間の死・臓器移植:1

脳死(brain death)が問題とされる領域は、『人間の死の定義』『臓器移植可能な要件(判定基準)』であり、脳死は心臓死との対比で語られることが多い。人間の死の定義には、心臓(血液循環)が停止する『心臓死』と脳機能が停止する『脳死』があり、伝統的な医学では心臓死のほうが人間の死と考えられていた。正確には、『心臓の停止・自発呼吸の停止・瞳孔散大(対光反射の消失)』の死の三兆候によって人間の死が定義されていた。

心臓死すれば脳に血流が流れなくなりいずれは脳も死ぬが、脳幹部分が脳死すれば血液の循環や呼吸ができなくなって心臓も止まることになる。ただ現代医療では、脳死しても生命維持装置(人工呼吸器・人工心肺)を用いて、人間の身体だけを生かし続けることができるので脳死を巡る状況は複雑である。脳死の判定が重要視されるようになった背景には、心臓死の後では心臓・肺・肝臓などの臓器移植を行うことができないということがある。

つまり、『臓器移植(ドナー確保)』のために脳死の概念・判定が要請されているという側面が強く、脳死の判定は『移植可能な臓器の鮮度』を守るという目的と切り離して考えることが難しい。脳死とは医学的な治療をしても時間が経過しても回復しない『脳の不可逆的な機能喪失』のことであり、脳死には『大脳死・脳幹死・全脳死』の3つの区分がある。

『大脳(大脳皮質・大脳辺縁系)』とは人間らしい自意識や感情、知性(言語)、判断力、意志を司る部分であり、『大脳死』すると自意識が消失して昏睡状態となり意志表示が永続的に不可能となる。

大脳死とは生命維持のための血液循環や呼吸はできるが、自意識や思考、感情、意志が永続的に失われている状態であり、一般に『植物状態(植物人間)』と呼ばれることもある。脳幹の生命維持機能(血液循環・呼吸・血圧調整)が残されている『大脳死(植物状態)』は臓器移植が可能な脳死ではなく、稀に回復する事例もあるため、一般的な『脳死の概念』にも含まれていない。

血液循環や呼吸機能、血圧調整といった生命維持に必須の機能を司る脳幹(中脳+橋+延髄)が停止すれば、人間は生存を維持することが出来ないので、イギリスのように『脳幹死』を脳死と定義している国もある。日本やアメリカでは、大脳(自意識・知能)と脳幹(生命維持機能)の両方が不可逆的に機能を停止した『全能死』を脳死として定義している。



posted by ESDV Words Labo at 21:16 | TrackBack(0) | の:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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