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2010年11月09日

[脳死(brain death)と人間の死・臓器移植:2]

脳死(brain death)と人間の死・臓器移植:2

この記事は、[前回の記事]の続きになります。脳死は『人間の死の定義』と関わる重要な問題であり、諸外国では全脳死が『人間の死』である旨が明確に定義されていることもあるが、日本では本人あるいは家族による意志表示がある臓器提供時に限定して法的脳死の判定を行うだけで、脳死が人間の死であるという定義づけは為されていない。日本の法律では、飽くまで心臓死が人間の死の定義となっており、脳死は臓器移植を前提として行われる法律的な枠組みにおける脳死となる。臨床的に脳死であっても、本人あるいは家族に臓器提供(ドナー)の意志表示がなければ、法律的には脳死とはならない。

脳死を人間の死と定義することや脳死患者から臓器を摘出することに対する反対意見として、『脳死からの回復可能性・回復事例』が上げられることがあるが、全脳死は不可逆的な全脳の機能喪失なので回復可能性は定義上ありえない。自意識や知能・知覚・感情を担当する大脳のみが機能している『大脳死(植物状態)』のケースでは、そこからの回復事例や回復の可能性が確率的にはあるので、植物状態の患者からは臓器を摘出することはできないし生命倫理的に許されない。

また、日本の『臓器移植法(臓器の移植に関する法律)』では、臓器移植を前提としていなければ、臨床的脳死の状態にあっても(法律的に有効な)法的脳死の判定を下すことができないので、脳死判定された患者はすぐに心臓など臓器を摘出されることになり、蘇生する可能性は原理的にゼロとなる。日本の法的脳死の判定は、以下の要件と手順に基づいて実施されることになるが、法的な脳死判定をするためには『本人のドナーカードによる意志表示』か、『脳死後の家族の同意』が必要である。

日本における脳死判定は、移植医療と無関係な専門医(脳神経外科など)2人以上によって行われ、法律で定められた『5項目の判定』を6時間の時間間隔を開けて二回行う。その2回目の脳死判定が終了した時刻が『法的・臨床的脳死による死亡時刻』とされる。

日本では臨床的脳死のみの判断による死亡判定を行うことは許されておらず、臓器移植をする予定の患者に対してしか法的・臨床的脳死の判定を行うことはできない。統計的には、偶発的な事故・脳出血などで脳死になってから死亡する人は、全死亡者の1%未満と言われており、それだけ移植に必要なドナー数は慢性的に不足している状態にある。

■脳死判定基準の5項目

1.深昏睡(JCS300またはGCS3)

2.瞳孔散大と散大の固定

3.脳幹反射(対光反射・角膜反射・毛様体脊髄反射・眼球頭反射・前庭反射・咽頭反射・咳嗽反射)の消失

4.平坦な脳波(刺激を加えても最低の4導出で、30分以上にわたり平坦な脳波を示す)

5.自発呼吸の停止(検査で脳にダメージがあるため、必ず最後に実施する)

1と4の項目は『大脳死』の判定に関わるものであり、2と3と5は『脳幹死』に関わるものである。時間を開けて6時間後にもう一度判定するのは『脳機能の不可逆的な喪失』を確実にチェックするためである。



posted by ESDV Words Labo at 21:19 | TrackBack(0) | の:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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