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2010年12月01日

[バンク・ミケルセンらのノーマライゼーション(normalization)]

バンク・ミケルセンらのノーマライゼーション(normalization)

1950年代にデンマークの社会運動家バンク・ミケルセンらが参加していた『知的障害者の家族会』の施設改善運動から生まれた福祉理念が、『ノーマライゼーション(normalization)』である。ノーマライゼーションとは、障害者と高齢者、健常者が分け隔てなく同じように社会参加して活動できる基盤を整えていこうとするものであり、老人ホームや障害者施設を市街地から隔離して建設・運営することなどに反対するという『脱施設化』の性格を持っている。

バンク・ミケルセンらは、一般社会から隔離された大規模な知的障害者(精神遅滞者)施設を観察して、隔離施設においては『障害者の人格の尊厳や人権の保護』を十分に行うことが難しいと結論づけ、健常者と障害者(高齢者)が地域社会の中で共に生活する状態こそがノーマル(普通)だとした。ノーマライゼーションの社会福祉理念では、『隔離施設における障害者・高齢者の福祉活動』ではなく『地域社会における健常者・障害者・高齢者の区別がない共生』こそがノーマルであると考え、そういった共生社会の構築に向けた活動を推進している。

バンク・ミケルセンによるノーマライゼーションの定義は、『障害のある人たちに、障害のない人たちと同じ生活条件をつくり出すこと。障害がある人を障害のない人と同じノーマルにすることではなく、人々が普通に生活している条件が障害者に対しノーマルであるようにすること。自分が障害者になったときにして欲しいことをすること』といったものである。これは社会的・福祉的な支援や世話を必要とする『障害者・高齢者』を区別して隔離するのではなくて、健常者と一緒に自然に共生できるような社会基盤を整えていこうとする実践的な福祉思想であり、『隔離施設でのサービスから地域社会での共生へ』が一つの中心理念となっている。

隔離された場所にある療養所・施設への入所を前提とするサービスの問題点は、人間の尊厳・自律性の疎外や一般社会からの隔絶につながりやすいということであり、障害者の差別・排除の構造を再生産するということがあるが、『病気・障害の重篤度』によっては施設でのケア・サービスのほうが望ましいこともある。しかし介護サービスを受けながらの自律的生活が可能であるならば、自宅やグループホームで『今までと同じノーマルに近い地域生活を提供すること』を保障することが本人のQOL(生活の質)の向上にもつながる。

障害者・高齢者が、健常者と共に地域社会や都市空間でノーマルな生活を送るためには、障害があっても移動しやすく負担が少ない『バリアフリー』の空間設計が必要であり、更に障害の有無に関わらずに、誰もが簡単に使いこなせる普遍的なデザイン・構造を考えて実装するという『ユニバーサル・デザイン』の発想も重要性を増している。障害の有無に関係なく、全ての人に平等に人権が保障されること、自己のライフスタイルを主体的に選択できるような社会環境・物理的構造を整えること、効率主義・経済的価値に偏らずに人間の尊厳に配慮した政策を採用することなどが、ノーマライゼーションの具体的な活動になっている。

日本でも、1993年(平成5年)にノーマライゼーションの思想に基づいて『障害者基本法』が制定されており、施設サービスから地域社会での共生への転換が目指されている部分がある。高齢者介護・福祉の分野でも、グループホームの拡充や在宅介護サービスの利用促進などによって、高齢者をできるだけ一般社会から排除せずに共に助け合って生きていけるような福祉制度・介護保険の整備が求められている。だが、寝たきりや重症認知症では地域社会でノーマルな生活を送ることが困難になりやすく、介護老人福祉施設(特養老人ホーム)の供給量の不足などが高齢化社会における深刻な問題となっている。



posted by ESDV Words Labo at 21:47 | TrackBack(0) | の:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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