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2006年05月04日

[アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis)],[ステロイド療法の効果・副作用と根本治療の困難]

アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis)

アトピー性皮膚炎の第一選択薬は、アトピー性皮膚炎の皮膚症状(炎症の範囲・炎症の程度・痒みの強さ・社会的不利益・外観上の病変)の重症度に合わせて選ばれるが、基本的に、ステロイド(副腎皮質ホルモン)外用剤と免疫抑制作用を持つタクロリムス軟膏(商品名:プロトピック)が医学的治療の中心である。免疫反応抑制や炎症と痒みの鎮静といった効果があるステロイドやタクロリムスは有効な外用薬であり、現代医学においてはアトピー性皮膚炎に対してステロイド以上に有効な薬物療法はないというのが現状である。

その一方で、ステロイド外用薬主体のアトピー性皮膚炎治療は、その場凌ぎの対症療法に過ぎず、副作用の悪影響が大きいという批判も根強くある。特に、重症化・慢性化した成人型アトピー性皮膚炎において、ステロイド外用剤の使用が根本治療につながらないというジレンマを現代医学は抱えていて、その弱みを突いた民間療法やニッチ・ビジネス(隙間産業,アトピービジネス)が次々と取り沙汰されている。

個別事例においては、確率論的に、非医学的な民間療法や健康食品、漢方医学、サプリメントが奏効することもあるが、一般的に医学的治療以上の有効性のエビデンスが確認されている民間療法やサプリメントは現段階で存在していないということに注意が必要である。

ステロイド(副腎皮質ホルモン外用剤)プロトピック(タクロリムス軟膏)の長期使用による副作用の問題が指摘されていてステロイド治療を忌避する患者は少なくないが、ある意味でアトピー性皮膚炎の医学的治療は限界に直面している状況である。遠い将来には、遺伝子治療や免疫療法、ブレイクスルーを起こす新薬の開発によってアトピー性皮膚炎の根本治療が可能になるかもしれないが、現段階において、重症度の高い慢性化したアトピー性皮膚炎に対して絶対的な完治を保証する医学的治療はない。

薬物療法だけに依存すると副作用の影響が大きくなるので、皮膚を清潔に保つこまめなスキンケアと脂質・糖分を控える和食中心の食事療法、毎日汗を流し日光を浴びながらの運動療法を心がけるようにすると良い。ハウスダストやダニ・カビなどの悪化因子を綺麗に取り除く部屋の掃除もこまめに行うようにして、出来るだけ生活状況や人間関係の中でストレスを溜め込まない楽観的な認知(考え方)をすることが大切である。

強度の痒み(掻痒感)や不快な苛立ち(情緒不安定)が見られる場合や重症度が高い場合には、抗ヒスタミン薬抗アレルギー薬といった内服薬を用いて痒みを抑え、精神を穏やかにするが、抗ヒスタミンや抗アレルギー薬もステロイド外用薬と同様に、苦痛で不快な症状を一時的に抑えるという対症療法の域を出ないものである。

ステロイドの副作用として見られやすいものに、『血管拡張による発赤(赤み)・皮膚萎縮・皮膚浅薄化(皮膚が薄くなり掻き壊しやすくなる)・多毛(毛が濃くなる)・起炎症性・免疫機能低下によるカポジ水痘様皮膚炎など感染症(細菌・真菌)』がある。

しかし、副作用があるからステロイドは絶対に使わないのが良いわけではなく、炎症や痒みが強ければ使用しないことのデメリット(炎症悪化・苦痛増大・滲出液など)が大きくなる。劇的な症状悪化を無視してステロイドを拒絶し続けることにも、副作用以上のリスクがあるという認識は必要だろう。

一切の副作用のない薬物療法はなく、ステロイド外用剤においても効能のメリットと副作用のデメリットを比較考量して治療方針を決定していくことになる。段階的に使用量を減らすことが理想だが、アトピーの重症例や慢性化した皮膚炎では炎症期間が常態化するため、使用量を減らしたりステロイドの強度を落とすタイミングが難しいのが実際である。また、余りに激しい炎症が慢性化している症例では、実効性のある治療方針をたてたり、ステロイド減薬の計画をたてることが非常に困難になる。

成人期以降の重症アトピー性皮膚炎の理想的な完治例の多くは、心理社会的ストレスと悪化因子(汚染物質・アレルゲン)の少ない生活環境で起こり、生活習慣(睡眠・食事・運動)を規則正しいものへと変えていく中で自然寛解した事例が多いと言われている。心身症としての側面も併せ持つ身体疾患であるアトピー性皮膚炎は重症化・慢性化すると、身体的苦痛も激烈なものがあるが、精神的苦悩や社会的不利益も相当に大きなものになるので、薬物治療だけでなく周囲の心理的支援が欠かせない。

特に、思春期以降の比較的重症なアトピー患者に対しては、恋愛・結婚・性生活の悩みなどに対応する共感的で支持的なカウンセリングを実施する意義が極めて大きい。アトピー性皮膚炎で皮膚が炎症を起こして外観が障害されると、親密な対人関係が築きにくくなりひきこもりがちになりやすい。積極的な社会参加や意欲的な職業活動が出来なくなる患者も少なくないが、その場合には、強引に叱咤激励するのではなく患者の精神的苦境(皮膚異常への羞恥心や劣等感・社会活動に対する自信低下)への十分な配慮が必要となるであろう。

アトピー性皮膚炎患者に対するカウンセリング支援は余り重視されていない傾向があるが、実際には、社会不適応や対人恐怖などの精神的な問題を併発しやすい病気であり、支持的な温かいカウンセリングの有効性と需要は高いのである。

この項目に関連するリンク
[アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis)],[アトピー性皮膚炎の発症・経過・転帰]



posted by ESDV Words Labo at 02:54 | TrackBack(2) | あ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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