イメージ療法を含めて広義のイメージを用いる心理面接を『イメージ面接(imagery interview)』と呼び、具体的には『イメージ想起・イメージ操作・イメージ解釈(鑑賞)』によって心身のリラクゼーションや抑圧されたトラウマ記憶の想起、精神症状の改善を行う面接技法である。
イメージ面接では、クライエントは目を閉じた閉眼状態で、自由連想やカウンセラー(心理療法家)からの言語暗示によって様々な形態や内容のイメージを想起することになる。意識的に何かのイメージを思い浮かべずに、自然に穏やかなリラックス状態の中でイメージを浮かび上がらせるのが自由連想的なイメージ技法であり、『自由イメージ技法(free associative imagery)』と呼ばれることもある。
反対に、カウンセラーの側からイメージする内容・記憶や形態・色彩を指定する場合のイメージ面接を『指示的イメージ技法・指定イメージ技法』と呼び、指定されたイメージ内容(人物・場面・過去)から物語を展開させていくように鑑賞していくと様々な記憶の想起や情動の洞察が生まれてくる。
クライエントの抱えている心理的問題の原因が明らかである場合や過去にトラウマ的な出来事が起こった時期を特定できる時には、『自由イメージ技法』よりも『指示的イメージ技法』のほうが適している。特定の場面や限定された時期の記憶を特定してイメージを浮かべる指示的イメージ技法によって、イメージ療法の効率性を向上させ問題探索的なイメージの時間を節約することが出来る。
無意識領域を含めた自己理解の促進や環境適応(人間関係の適応)と関係する人格性の成長を目指すイメージ療法としては『自由イメージ技法』が優れているが、特定の時期の心的外傷(トラウマ)の改善や現在の客観的な問題の解決には『指示的イメージ技法』のほうが効果が上がりやすい。
試合の臨むスポーツ選手の精神状態をリラックスさせて、本来持っている潜在能力を開発するメンタル・トレーニングでは、個人の身体能力と精神機能を高いレベルに導くことが課題になる。試合の勝利や能力の向上など客観的な目標が明らかであるメンタル・トレーニングやイメージ・トレーニングには、指示的イメージ技法が用いられることが多い。
イメージ療法は、日常生活の中で抑圧している情動体験を洞察させ、能力開発を阻害している心理体験や精神機能を再統合する効果を持つが、イメージ療法を行う目的に合わせてイメージ内容やイメージ解釈を柔軟に調整していく必要がある。
特定のイメージ内容や形態・色彩を思い浮かべる技法として日本人の心理学者が開発した有名なものには、田嶋誠一の『壺イメージ法』や藤原勝紀の『三角形イメージ法』などがある。
田嶋誠一の壺イメージ法では、自分の心的過程や心理内容が閉じ込められた複数の壺を頭の中にイメージして、その壺の中に自分を潜り込ませ、その心的過程の記憶・感情・思考・感覚をゆっくりと満足がいくまで鑑賞する。十分な時間と密度の鑑賞が終わったら、壺から抜け出てその壺に蓋をして、その壺に閉じ込めた心理内容との距離感を体験するのである。
壺イメージ法によって、過去の心理内容に伴う記憶や情動を整理することが出来るし、壺に蓋をすることで『過去の自分の心理』と『今これからの自分の心理』に明瞭な区別(境界線)をつけることが出来るようになる。