『イラショナル・ビリーフ(irrational belief)』の項目で説明したイラショナル・ビリーフ(非合理的な信念)の種類と程度を測定する為のイラショナル・ビリーフ・アセスメントには以下のような種類があり、それぞれ心理検査の信頼性・妥当性が一定水準で検証されている。
統計学的検査による十分な信頼性と妥当性が確保されたアセスメントへと洗練させていくことが期待される。しかし、現在では、論理療法と近接した理論的基盤(認知が情動・行動・気分を決定するモデル)を持つ認知療法が主流となっている為、アーロン・ベックの抑うつ評価尺度(BDI:Beck Depression Inventory)などが診断的面接に頻繁に用いられるようになっている。
Adult Irrational Ideas Inventory(成人用非合理的信念の検査:Foxes & Davies, 1971)
Irrational Beliefs Test(イラショナル・ビリーフ・テスト:Jones, 1969)
Ellis Scale(エリス尺度:MacDonald & Games, 1972)
Common Belief Scale(一般的信念スケール:Maultsby, 1974)
Questions for Rating Reason(心理的理由尺度の質問紙:Argabrite & Nidorf, 1968)
Personal Beliefs Inventory(個人的信念検査:Hartman, 1968)
心理アセスメントの中心的な技法である質問紙法には心理状態や精神機能、生活状況、人間関係などを査定する為の質問紙の種類が無数にある。
極端な抑うつ感によって社会生活や職業活動に大きな障害をもたらすうつ病の増加だけでなく、ひきこもりや不登校、NEETなど社会環境への不適応の問題が深刻化している現在では、特に、イラショナル・ビリーフ・テストなどの心理アセスメントの重要性が高まっている。
認知行動療法の隆盛を背景として『人生や世界に対する価値観・信念体系・認知傾向・人間観や生命観』といった価値判断の特性を測定する心理検査の需要が増えている。そういった心理アセスメントの傾向と合わせて、認知療法などカウンセリングの面接場面でも、客観的な物事や実際的な人間関係をどのように受け止めれば良いのかについて話し合う機会が多くなっている。
『憂鬱感・絶望感・無力感・虚無感』といったマイナスの感情を全く感じないで厳しい人生を生き抜くことは困難だが、『不幸を前提とした極論』に傾かない現実的な認知と論理的な思考を心がけるようにするとうつ病特有の認知傾向を抑止することが出来ることがある。
『自己肯定的で将来を楽しもうとする意欲的な考え方』をすることが大切であり、必要以上な自責感や罪悪感を持たないようにすると良いだろう。過剰な自己嫌悪や悲観的な将来予測に陥らないような信念体系を築き上げていく心理的支援をする過程が認知療法であり論理療法なのである。